98分の"エグさ"からラスト1分の"泣き"へ 『ヒメアノ~ル』
- 2017/07/02
- 00:28
どうでもいいことなんですが、長音記号が「~」な、なんとも拍子ぬけるタイトルのこの映画を観た感想は──
「タイトル表記に騙されずに観てください!」
です。
『ヒメアノ~ル』(2016年 脚本・監督:吉田恵輔 出演:森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ 他)


ヒメアノ~ル 豪華版 [Blu-ray][→Amazon]
【あらすじ】──清掃会社でパートタイマーとして働く岡田進(濱田岳)と安藤勇次(ムロツヨシ)は、カフェで働く阿部ユカ(佐津川愛美)がとある男にストーカーされていることを知る。
ストーカーをしているという男は、岡田の高校時代の同級生・森田正一(森田剛)だった。
ユカに惚れている安藤は、岡田と共に彼女の護衛をしつつ、森田に接近して話すように岡田に頼み、更にユカの気持ちまで岡田に聞き出させようとする。
しかし、ユカは実は岡田のほうに恋心を抱いていた。
隠れて付き合うようになった岡田とユカであったが、それを知った森田は岡田を殺そうとする。──
たぶん毎度のごとく原作漫画は知らず、何の前情報なく映画のほうを観た私だけが、このタイトル表記に騙されていたのでしょう。
いや、しかしホント!
長音記号の曲線(よく見るとトカゲ)とは真逆の刺々しく痛々しい描写です。
ジャンルでいうとどんなものなのか、どういう【あらすじ】なのかもよく知らずにただ気になって観たら、こんな狂った殺人犯の話しだったんですね!
人間の心の闇、
そしてエロとバイオレンスとはまさにこういうこと。
カフェの店員を演じる佐津川愛美は、濱田岳とのベッドシーンで迫真のヌードを見せています。
清純な可愛さとは裏腹に、経験人数がそれなりにある女子というありがちな設定の役ですが、それを聞かされる主人公がショックを受けるシーンはやはり生々しいです。
『貞子vs伽椰子』では、どこにでもいる大学生の女の子という役柄だった佐津川愛美。
本作でもそんな雰囲気の役ですが、リアルなベッドシーンのおかげで、より濃い演技に映ります。
そして演技において何よりも見所なのは、殺人犯・森田正一を演じる森田剛。
高校時代に酷いいじめを受けており、卒業後も全うな人生を歩めていないという痛々しい人物を演じています。
テレビで見かけるタレントととしての彼とはかけ離れた凄まじい役柄です。
本人の演技力もあるでしょう。
と同時に、ここまで仕立てあげられる監督の腕でもあるかと思います。
(いずれにしても、どんな役者も映像で見るなら、やはり映画で見てこそ、その人の真の魅力が発揮されるのだと私は考えています。)
──最悪な学生時代、そしてその後も底辺を生きる。
そんな森田に接近する、濱田岳扮する岡田もまた冴えない日々を送る清掃会社のパートタイマーです。
森田とは友達だったにもかかわらず、彼との再会で後ろめたい思い出がよみがえります。
学校でも社会でも、人は保身のためにいかに自分を偽らずにはいられないか。
醜く、それでも観ていて納得してしまう描写です。
そして特別な残虐描写はないのに、恐ろしくなってくる殺しの場面。
そう感じてしまうのは、決してスマートとは言えない、ただただ暴力的な本能を剥き出しにした森田の殺し方によるもの。
周囲への憎しみが姿形となって表れている見事な演出です。
そんな中でも重々しくなりすぎないのは、所々で笑いの要素もちりばめられているからでしょう。
ムロツヨシが演じる安藤は、ひょんなことから岡田と仲良くなりますが、恋愛に不器用な優しい先輩といった感じで和ませてくれます。

更に大竹まことが演じる清掃会社の社長は、殺伐とした若者文化からは距離のある新鮮な味を醸す脇役ということで、映画全体に適度なバランスを図れています。
最近はこれくらいのエグさと軽やかさをあわせ持った邦画はよく見かけますが、この作品で最も心を撃ち抜かれたのは本当に最後のシーン。
それもラスト1分程度のところです。
泣いた…といえばウソですが、そのラストシーン、正直私は気持ちとしては涙を流していました。
男性諸君なら学生時代にさかのぼると誰でも思い起こせるような微笑ましい日々のフラッシュバック。
根っからの悪など、基本的にはいない。
人を悪に変えてしまうのは結局、周囲の悪なのであることを再認識させられます。
美しくも、ああ…なんて悲しい…
佐津川愛美のベッドシーンなどどうでもよくなるような、男の友情が儚くも鮮明に映し出されています。
そんなラストの映像によって奏でられるまさかの泣き落としフレーズのために観ていただきたい99分です。


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「タイトル表記に騙されずに観てください!」
です。
『ヒメアノ~ル』(2016年 脚本・監督:吉田恵輔 出演:森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ 他)

【あらすじ】──清掃会社でパートタイマーとして働く岡田進(濱田岳)と安藤勇次(ムロツヨシ)は、カフェで働く阿部ユカ(佐津川愛美)がとある男にストーカーされていることを知る。
ストーカーをしているという男は、岡田の高校時代の同級生・森田正一(森田剛)だった。
ユカに惚れている安藤は、岡田と共に彼女の護衛をしつつ、森田に接近して話すように岡田に頼み、更にユカの気持ちまで岡田に聞き出させようとする。
しかし、ユカは実は岡田のほうに恋心を抱いていた。
隠れて付き合うようになった岡田とユカであったが、それを知った森田は岡田を殺そうとする。──
たぶん毎度のごとく原作漫画は知らず、何の前情報なく映画のほうを観た私だけが、このタイトル表記に騙されていたのでしょう。
いや、しかしホント!
長音記号の曲線(よく見るとトカゲ)とは真逆の刺々しく痛々しい描写です。
ジャンルでいうとどんなものなのか、どういう【あらすじ】なのかもよく知らずにただ気になって観たら、こんな狂った殺人犯の話しだったんですね!
人間の心の闇、
そしてエロとバイオレンスとはまさにこういうこと。
カフェの店員を演じる佐津川愛美は、濱田岳とのベッドシーンで迫真のヌードを見せています。
清純な可愛さとは裏腹に、経験人数がそれなりにある女子というありがちな設定の役ですが、それを聞かされる主人公がショックを受けるシーンはやはり生々しいです。
『貞子vs伽椰子』では、どこにでもいる大学生の女の子という役柄だった佐津川愛美。
本作でもそんな雰囲気の役ですが、リアルなベッドシーンのおかげで、より濃い演技に映ります。
そして演技において何よりも見所なのは、殺人犯・森田正一を演じる森田剛。
高校時代に酷いいじめを受けており、卒業後も全うな人生を歩めていないという痛々しい人物を演じています。
テレビで見かけるタレントととしての彼とはかけ離れた凄まじい役柄です。
本人の演技力もあるでしょう。
と同時に、ここまで仕立てあげられる監督の腕でもあるかと思います。
(いずれにしても、どんな役者も映像で見るなら、やはり映画で見てこそ、その人の真の魅力が発揮されるのだと私は考えています。)
──最悪な学生時代、そしてその後も底辺を生きる。
そんな森田に接近する、濱田岳扮する岡田もまた冴えない日々を送る清掃会社のパートタイマーです。
森田とは友達だったにもかかわらず、彼との再会で後ろめたい思い出がよみがえります。
学校でも社会でも、人は保身のためにいかに自分を偽らずにはいられないか。
醜く、それでも観ていて納得してしまう描写です。
そして特別な残虐描写はないのに、恐ろしくなってくる殺しの場面。
そう感じてしまうのは、決してスマートとは言えない、ただただ暴力的な本能を剥き出しにした森田の殺し方によるもの。
周囲への憎しみが姿形となって表れている見事な演出です。
そんな中でも重々しくなりすぎないのは、所々で笑いの要素もちりばめられているからでしょう。
ムロツヨシが演じる安藤は、ひょんなことから岡田と仲良くなりますが、恋愛に不器用な優しい先輩といった感じで和ませてくれます。

更に大竹まことが演じる清掃会社の社長は、殺伐とした若者文化からは距離のある新鮮な味を醸す脇役ということで、映画全体に適度なバランスを図れています。
最近はこれくらいのエグさと軽やかさをあわせ持った邦画はよく見かけますが、この作品で最も心を撃ち抜かれたのは本当に最後のシーン。
それもラスト1分程度のところです。
泣いた…といえばウソですが、そのラストシーン、正直私は気持ちとしては涙を流していました。
男性諸君なら学生時代にさかのぼると誰でも思い起こせるような微笑ましい日々のフラッシュバック。
根っからの悪など、基本的にはいない。
人を悪に変えてしまうのは結局、周囲の悪なのであることを再認識させられます。
美しくも、ああ…なんて悲しい…
佐津川愛美のベッドシーンなどどうでもよくなるような、男の友情が儚くも鮮明に映し出されています。
そんなラストの映像によって奏でられるまさかの泣き落としフレーズのために観ていただきたい99分です。

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