この結末!ラスト何分前に予測できる? ルーク・スコットの長編監督デビュー作『モーガン プロトタイプL-9』
- 2017/07/07
- 00:41
ありがちと言えば確かにそう。
そんなラストなだけに、わかる人にはすぐ気づけるだろうこのSF作品の結末──
『モーガン プロトタイプL-9』(2016年 製作:リドリー・スコット、マーク・シェイファー、マーク・ハッファム 監督:ルーク・スコット 出演:アニャ・テイラー=ジョイ、ケイト・マーラ、ボイド・ホルブルック、ミシェル・ヨー、ポール・ジアマッティ 他)


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【あらすじ】──遺伝子操作によって産み出された人工有機人間のプロトタイプ「モーガン」(アニャ・テイラー=ジョイ)がある日、暴走し、研究スタッフに怪我を負わせた。
危機管理コンサルタントのリー・ウェザーズ(ケイト・マーラ)は事件の調査及びモーガンの検査のため、心理学者のアラン・シャピロ博士(ポール・ジアマッティ)とともに派遣される。
シャピロ博士が心理的な尋問を行う途中で、モーガンは博士を殺害。
ウェザーズは「制御が不可能」として彼女を殺そうとするが、反対する研究スタッフたちの妨害に合う。
スタッフたちはモーガンとともに研究施設を脱走しようとするが、モーガンは彼らを殺害。
彼女は成長速度が早く、通常の人間を上回る知能と身体能力を備えていた。──
☆アンドロイドではなく人工的に造られた人間
人造人間=アンドロイドという呼び名はありますが、基本的にあちらは機械の体ですよね。
例えばリドリー・スコット監督『ブレードランナー』に登場するレプリカントもそのような考え方です。
『エイリアン』シリーズのハッシュやビショップも、アンドロイドと言われるまでは人間と見分けがつかない姿ですが、中身は白い液体がつまった、生身の人間とはかけ離れた身体でした(普通にみんなといっしょに食事していますが…)。
その他SF作品によって細かい描かれ方はそれぞれ違いますが、最近よく使われる言葉で「人工知能(A.I.)」という物が搭載されることによって意思を持って行動するところは共通しているのではないでしょうか。
しかし、本作に登場するモーガンはあくまで遺伝子によって産み出され、生身の人間として内臓も外の皮膚も成長していく、正に有機的な人間なのです。

自ら増殖する力を持ち、特定の機能を持つ細胞に分化する幹細胞はかなり前から話題にされています。
これによって臓器を作り出すことができるそうですが、それを1体の人間まるごとでやっているのがこの映画の世界なわけです。
更に遺伝子の操作によって高い知能や身体能力を持たせることもできてしまうとのことですが、実際に現実でも可能になってきているようなことを本作の特典映像でも語られています。
ただ、人工的に人間そのものを造ることを哲学的に良しとするか否かの問題があります。
そんなことが実際に行われるようになったら、すごく画期的な進歩であると同時に、ちょっと恐いですね。
★アニャ・テイラー=ジョイをはじめとした豪華キャストたち
このモーガンという人工有機人間の女の子を演じている彼女。
フードを被っている場面が多くて、はじめは確信できなかったのですが、やはりそうです。
M・ナイト・シャマラン監督『スプリット』で主演だったアニャ・テイラー=ジョイです。
あちらの作品ではどこかミステリアスな魅力を持つ女の子を演じていましたが、本作でも難しい人物像の役でその魅力を発揮しています。
危機管理コンサルタントと名乗りながら、妙に戦闘に長けた強い女性主人公を演じているのがケイト・マーラです。
やや冷徹とさえ思えてくるほど使命感に満ちた女性で、そのイメージをショートカットの髪型でよりいっそう引き立てています。
任務をこなす姿はちょっとターミネーターっぽいですが、私はけっこうタイプです!
ケイト・マーラの過去の出演作品を見ると、『ザ・シューター/極大射程』といったサスペンスアクションのほか、『アイアンマン2』『ファンタスティック・フォー』といったマーベル映画、そして『トランセンデンス』『オデッセイ』といったSFと、アクティブな作品に多く出演しています。

研究に直接携わるスタッフたちと違い、研究施設で料理を作っているという比較的平凡な人物ながら、主人公ウェザーズに献身的に協力するあのハンサムガイはボイド・ホルブルックです。
俳優であり、モデルでもある彼は確かなルックスですね。
最近では『LOGAN/ローガン』に、ウルヴァリンの敵役として出演しています。
そして香港とハリウッドで活躍する女優ミシェル・ヨーが事件の鍵を握る中国系の博士として、ポール・ジアマッティがハラハラするシチュエーションの中で殺されてしまう心理学者として脇を固めています。
☆リドリー・スコットの息子・ルーク・スコットによる長編監督デビュー作品!
この作品でメガホンをとったルーク・スコットは、先ほど名前を上げたリドリー・スコットの息子で、長編としてはこれが初の監督作です。
親が有名映画監督だからどうのこうのというわけではないですが、やはりリドリー・スコットのほうがSFというジャンルにおいて名作を作り出してきた中、息子もデビュー作がSFというのは興味深いものがあります。
流れとしてそうなったのか、あるいは父親の影響でSFが好きなのか。
いずれにしても今後の活躍を期待したいところです。
そして製作はリドリー・スコットとあって、親子で携わった映画となった本作です。
本作の特典映像としてこのルーク・スコットが手掛けた短編映画が収録されていますが、そちらもまた独特な映像世界のSFとなっています。
私はそれを観たとき、始めのシチュエーションからして話しの設定がよくわからなくて、途中までしか観ませんでした(深夜だったことによる睡魔もありました)。
興味のある方はそちらも是非ご覧になってみてください(私もまた機会を見つけて!)。
──さて、これだけ魅力的な俳優たちが起用され、有名映画監督の親子が製作・監督に携わった『モーガン プロトタイプL-9』ですが、残念ながら劇場公開当時の興行成績はおもわしくなかったようです。
批評家の間では賛否両論で、せっかくのすばらしい舞台設定であるのに、その世界観を深く掘り下げずに、アクション重視の作品に落ち着いてしまったところが評価を下げてしまったようです。
なるほど、確かにストーリーはあくまでシンプルで、実際に観た私からしてみても決して深みや厚みを感じさせる作品とはいえません。
遺伝子操作によって人間を造り出すというテーマにおいて、多少難解になってもいいから、もっとそういう技術的な背景に尺をとっても良かったとは思います。
ただ、その辺りは好き嫌い分かれるでしょう。
美しい映像世界で描かれた爽快感あるSFアクションスリラーという意味ではサクッと楽しめる内容ととることもできます。
私もそうですが、端から"大作感"を求めないうえで、そもそもこういう世界観のSF映画が好きな人にとっては結果的に問題なく楽しめるんですね。
とりわけこの人工有機人間のプロトタイプ「L-9」を演じているアニャ・テイラー=ジョイの役づくりや演技が作品の魅力をグッと引き上げるのに一役かっています。
『スプリット』で彼女のファンになったという人にとってもそれだけで観る価値ありです!
いつもフードを被ったボーイッシュな姿が、複雑な人物像やその境遇に重量感を持たせています。
そして最初に述べた結末について──
「あっ、そういうことか!」
となるか、
「ああ、やっぱりな」
となるか。
あなたはどうでしょうか?


モーガン プロトタイプ L-9 (字幕版)[→Prime Video]
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そんなラストなだけに、わかる人にはすぐ気づけるだろうこのSF作品の結末──
『モーガン プロトタイプL-9』(2016年 製作:リドリー・スコット、マーク・シェイファー、マーク・ハッファム 監督:ルーク・スコット 出演:アニャ・テイラー=ジョイ、ケイト・マーラ、ボイド・ホルブルック、ミシェル・ヨー、ポール・ジアマッティ 他)

【あらすじ】──遺伝子操作によって産み出された人工有機人間のプロトタイプ「モーガン」(アニャ・テイラー=ジョイ)がある日、暴走し、研究スタッフに怪我を負わせた。
危機管理コンサルタントのリー・ウェザーズ(ケイト・マーラ)は事件の調査及びモーガンの検査のため、心理学者のアラン・シャピロ博士(ポール・ジアマッティ)とともに派遣される。
シャピロ博士が心理的な尋問を行う途中で、モーガンは博士を殺害。
ウェザーズは「制御が不可能」として彼女を殺そうとするが、反対する研究スタッフたちの妨害に合う。
スタッフたちはモーガンとともに研究施設を脱走しようとするが、モーガンは彼らを殺害。
彼女は成長速度が早く、通常の人間を上回る知能と身体能力を備えていた。──
☆アンドロイドではなく人工的に造られた人間
人造人間=アンドロイドという呼び名はありますが、基本的にあちらは機械の体ですよね。
例えばリドリー・スコット監督『ブレードランナー』に登場するレプリカントもそのような考え方です。
『エイリアン』シリーズのハッシュやビショップも、アンドロイドと言われるまでは人間と見分けがつかない姿ですが、中身は白い液体がつまった、生身の人間とはかけ離れた身体でした(普通にみんなといっしょに食事していますが…)。
その他SF作品によって細かい描かれ方はそれぞれ違いますが、最近よく使われる言葉で「人工知能(A.I.)」という物が搭載されることによって意思を持って行動するところは共通しているのではないでしょうか。
しかし、本作に登場するモーガンはあくまで遺伝子によって産み出され、生身の人間として内臓も外の皮膚も成長していく、正に有機的な人間なのです。

自ら増殖する力を持ち、特定の機能を持つ細胞に分化する幹細胞はかなり前から話題にされています。
これによって臓器を作り出すことができるそうですが、それを1体の人間まるごとでやっているのがこの映画の世界なわけです。
更に遺伝子の操作によって高い知能や身体能力を持たせることもできてしまうとのことですが、実際に現実でも可能になってきているようなことを本作の特典映像でも語られています。
ただ、人工的に人間そのものを造ることを哲学的に良しとするか否かの問題があります。
そんなことが実際に行われるようになったら、すごく画期的な進歩であると同時に、ちょっと恐いですね。
★アニャ・テイラー=ジョイをはじめとした豪華キャストたち
このモーガンという人工有機人間の女の子を演じている彼女。
フードを被っている場面が多くて、はじめは確信できなかったのですが、やはりそうです。
M・ナイト・シャマラン監督『スプリット』で主演だったアニャ・テイラー=ジョイです。
あちらの作品ではどこかミステリアスな魅力を持つ女の子を演じていましたが、本作でも難しい人物像の役でその魅力を発揮しています。
危機管理コンサルタントと名乗りながら、妙に戦闘に長けた強い女性主人公を演じているのがケイト・マーラです。
やや冷徹とさえ思えてくるほど使命感に満ちた女性で、そのイメージをショートカットの髪型でよりいっそう引き立てています。
任務をこなす姿はちょっとターミネーターっぽいですが、私はけっこうタイプです!
ケイト・マーラの過去の出演作品を見ると、『ザ・シューター/極大射程』といったサスペンスアクションのほか、『アイアンマン2』『ファンタスティック・フォー』といったマーベル映画、そして『トランセンデンス』『オデッセイ』といったSFと、アクティブな作品に多く出演しています。

研究に直接携わるスタッフたちと違い、研究施設で料理を作っているという比較的平凡な人物ながら、主人公ウェザーズに献身的に協力するあのハンサムガイはボイド・ホルブルックです。
俳優であり、モデルでもある彼は確かなルックスですね。
最近では『LOGAN/ローガン』に、ウルヴァリンの敵役として出演しています。
そして香港とハリウッドで活躍する女優ミシェル・ヨーが事件の鍵を握る中国系の博士として、ポール・ジアマッティがハラハラするシチュエーションの中で殺されてしまう心理学者として脇を固めています。
☆リドリー・スコットの息子・ルーク・スコットによる長編監督デビュー作品!
この作品でメガホンをとったルーク・スコットは、先ほど名前を上げたリドリー・スコットの息子で、長編としてはこれが初の監督作です。
親が有名映画監督だからどうのこうのというわけではないですが、やはりリドリー・スコットのほうがSFというジャンルにおいて名作を作り出してきた中、息子もデビュー作がSFというのは興味深いものがあります。
流れとしてそうなったのか、あるいは父親の影響でSFが好きなのか。
いずれにしても今後の活躍を期待したいところです。
そして製作はリドリー・スコットとあって、親子で携わった映画となった本作です。
本作の特典映像としてこのルーク・スコットが手掛けた短編映画が収録されていますが、そちらもまた独特な映像世界のSFとなっています。
私はそれを観たとき、始めのシチュエーションからして話しの設定がよくわからなくて、途中までしか観ませんでした(深夜だったことによる睡魔もありました)。
興味のある方はそちらも是非ご覧になってみてください(私もまた機会を見つけて!)。
──さて、これだけ魅力的な俳優たちが起用され、有名映画監督の親子が製作・監督に携わった『モーガン プロトタイプL-9』ですが、残念ながら劇場公開当時の興行成績はおもわしくなかったようです。
批評家の間では賛否両論で、せっかくのすばらしい舞台設定であるのに、その世界観を深く掘り下げずに、アクション重視の作品に落ち着いてしまったところが評価を下げてしまったようです。
なるほど、確かにストーリーはあくまでシンプルで、実際に観た私からしてみても決して深みや厚みを感じさせる作品とはいえません。
遺伝子操作によって人間を造り出すというテーマにおいて、多少難解になってもいいから、もっとそういう技術的な背景に尺をとっても良かったとは思います。
ただ、その辺りは好き嫌い分かれるでしょう。
美しい映像世界で描かれた爽快感あるSFアクションスリラーという意味ではサクッと楽しめる内容ととることもできます。
私もそうですが、端から"大作感"を求めないうえで、そもそもこういう世界観のSF映画が好きな人にとっては結果的に問題なく楽しめるんですね。
とりわけこの人工有機人間のプロトタイプ「L-9」を演じているアニャ・テイラー=ジョイの役づくりや演技が作品の魅力をグッと引き上げるのに一役かっています。
『スプリット』で彼女のファンになったという人にとってもそれだけで観る価値ありです!
いつもフードを被ったボーイッシュな姿が、複雑な人物像やその境遇に重量感を持たせています。
そして最初に述べた結末について──
「あっ、そういうことか!」
となるか、
「ああ、やっぱりな」
となるか。
あなたはどうでしょうか?

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