エイリアン前日譚『プロメテウス』──人類の起源明かされず
- 2017/07/22
- 00:52
──なぜ人類誕生の瞬間は、空白のままなのか。──
このキャッチコピーは確かに興味を惹きつけられます。
しかし、1979年に公開されたリドリー・スコット監督の『エイリアン』の前日譚としては納得いくものの、人類の起源までは明かされぬまま終わるこの作品──
『プロメテウス』(2012年 監督:リドリー・スコット 出演:ノオミ・ラパス、ローガン・マーシャル=グリーン、マイケル・ファスベンダー、シャーリズ・セロン 他)


プロメテウス [Blu-ray][→Amazon]
【あらすじ】──西暦2089年。
考古学者のエリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)とチャーリー・ホロウェイ(ローガン・マーシャル=グリーン)によって発見された古代遺跡の壁画から、人類の起源の鍵を握る未知の惑星の存在が示される。
ショウとホロウェイは、ウェイランド・コーポレーションによって選ばれた科学者チームと共に、宇宙船プロメテウス号に乗り込み、惑星LV-223を目指す。
乗組員たちが冷凍睡眠する間、アンドロイドのデイヴィッド(マイケル・ファスベンダー)が航行するプロメテウス号は2093年12月21日にLV-223の目前にまで近づく。
乗組員たちは冷凍睡眠から目覚め、ピーター・ウェイランド社長(ガイ・ピアース)のホログラム映像によって調査目的の説明を受ける。
そこで、惑星に人類の創造主となるエンジニアが存在する説を語るショウ。
しかし、乗組員たちによって結成された調査隊はその惑星で恐るべき生物と遭遇する。──

☆その星は生物兵器の実験場だった?
この映画、ざっくり言えば人類誕生の起源を探ろうと、その手がかりとなるエンジニアがいそうな未知の惑星に宇宙船プロメテウス号で向かい、たどり着いた惑星には確かにエンジニアとおぼしき者がいたのだけど、どうやらそこがヤバい実験を行う場所だったらしく、人類は立ち入るべきじゃなかった!
という内容になるわけです。
そして先にも述べたように、この作品は結果的に人類誕生の起源そのものにはまだたどり着けずに終わるんですね。
実は私、この『プロメテウス』というタイトルは知っていたのですが、これが『エイリアン』の前日譚の映画だったことは割りと最近まで知りませんでした。
『エイリアン:コヴェナント』の劇場公開のことを知り、このシリーズまたやるんだ!と思いつつ、気になって過去作品を見直していたのですが、そこでたまたま『プロメテウス』のことを知りました。
"エイリアン"の"エ"の字もないタイトル。
しかしあのキャッチコピーを見て、
「おおっ!エイリアンの話しから人類誕生の起源の話し?!」
と、これは深みのある内容だと期待して観ました。
しかし最後まで観ても人類誕生の起源にはたどり着けないまま…
あのエンジニアとやらをなんとしてでも阻止せよと言わんばかりの、まさかの神風アタックな演出に違う意味でテンション上がっちゃいました!
それだけに、ガッカリしたわけではないけど実に続きが気になる終わり方ですね。

★冒頭からの美しい映像世界
やはり、近年の映画だけあって、それはもう『エイリアン』1作目から4作目とは比べ物にならないVFX技術が駆使されていますね。
そして何よりも目を惹くのは冒頭の、人間に似たいわゆる"エンジニア"であろう人物が自らの体内に謎の黒い液体を入れ込むシーン。
あのシチュエーションはアイスランドで撮影されたらしいのですが、神秘さと壮大さを感じさせられます。


プロメテウス(3枚組)[4K ULTRA HD + 3D + Blu-ray][→Amazon]
エンジニアによる怪しげな実験の、始まりと思われるシーンをなんとも美しい描写で表現しています。
ここに人類誕生の秘密が隠されていて、後で明らかになるんだな!
と、この段階では期待してしまいます。
もちろんそこから悪夢へと暗転していくわけです!
この冒頭の美しさと、後のシーンの悪夢という対比が良かったりします。
あとはやはり未来SFという観点で見た場合に、宇宙船の描写が気になるところです。
この辺りはそれこそ当たり前と言えば当たり前で、お決まりの冷凍睡眠装置やホログラム映像の演出によって"未来感"はあります。
2089年かあ…
果たしてこれらの技術が実際にできあがっているのでしょうか。
ホログラムはともかくとして冷凍睡眠!
この技術が開発されたらあなたは使ってみたいですか?
☆おなじみのアンドロイドという存在
さあ、冷凍睡眠装置もさることながら、『エイリアン』シリーズの名物といえばアンドロイドですね。
人と同じように話し、自らの意思で行動するアンドロイドは、他のSFにおいても私を魅了してやみません。
しかし『エイリアン』1作目のハッシュは最低野郎で、リプリーを苦しめていました。
私は2作目(あちらはジェームズ・キャメロン監督ですが)に登場したビショップのストイックなキャラがめちゃ好きです!
エイリアンクイーンに真っ二つにされるシーンを初めて見たときはショッキングでしたが、最後までリプリーと協力する心強さがありました。
さて本作『プロメテウス』では、妖しくも甘いマスクをしたデイヴィッドが登場します。
主人公エリザベス・ショウにとっては最終的には必要な存在になるわけですが、彼女のパートナーであるチャーリー・ホロウェイに残酷なことをやってのけます。
ウェイランドが送り込んだこのアンドロイド、全くもって敵なのか味方なのか?
いや結局はアンドロイドであって、命令に従うのみだと考えれば、必要に応じてどちらにもなれるのでしょう。
いや~でも、ホロウェイに対して行ったあれ。
甘いマスクの笑みで近づいてやるあの様はやっぱり恐い!
それも無邪気な好奇心とでもいわんばかりの衝動でやってるようで、恐い!
そういうのを抜きにすれば、こんなアンドロイドを仲間にしたいですね。
★ちゃんとやってくれてます、ホラー演出!
リドリー・スコットが監督を務めた1作目の『エイリアン』はその後のアクション要素が強い作品とは違い、得体の知れない生物と初めて対面する恐怖感がありました。
なんだこれは?と近づいた卵からフェイスハガーが飛び出してきて、宇宙船乗組員の顔に覆い被さるあのシーンは、この作品を正にSFホラーと呼ぶに相当する演出でした。
本作『プロメテウス』はというと、やはり同じくリドリー・スコットによる作品だからでしょうか。
ちゃんとホラーやってます!
観る前は私、もっと堅苦しい内容を想像していました。
なんせあのキャッチコピーですから。
調査隊の2人が、謎のヘビのような生き物を見つけて近づくシーン。
「いやいやだからダメだって」
からの
「ほら言わんこっちゃない!」
という古風な流れながら、あのシーンは観ているこちらには1作目『エイリアン』からの良い意味での再利用に感じます。
とはいえ、他にホラーな表現があるかといえば、残念ながらないです。
ここはやはりメインとなるテーマが違うからでしょう。
あくまで「人類誕生の起源を見つけ出す鍵となる惑星がわかったが、それは探ってはいけなかった」という話しなわけで、あしからず。
なんやかんやで全体通して、ウェイランドという企業の思惑、そしてあのデイヴィッドというアンドロイド(←やっぱりここ)が恐いです。
──そんなこんなで、ギリシャ神話に登場する、人類を創造したと言われる神「プロメテウス」をタイトルにつけたこの映画。
なるほどなと思わせるタイトルです。
そして、皆さんは「プロメテウスの火」の話をご存知でしょうか。
ゼウスの命令に背き、プロメテウスは人類に火を与えました。
そうして人類は文明や技術を生み出すのですが、愚かな人類はその火で戦争の武器を作り争うようになりました。
『エイリアン』はそもそも、ウェイランドが、地球外生物を兵器として利用しようと企てた話で、この観点で見ても「プロメテウス」というタイトルはぴったしはまっていると言えます。
1つの疑問を残したまま終わってしまうこの作品ですが、その辺りも含めて次に公開される『エイリアン:コヴェナント』に期待したいです。


プロメテウス (字幕版)[→Prime Video]
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このキャッチコピーは確かに興味を惹きつけられます。
しかし、1979年に公開されたリドリー・スコット監督の『エイリアン』の前日譚としては納得いくものの、人類の起源までは明かされぬまま終わるこの作品──
『プロメテウス』(2012年 監督:リドリー・スコット 出演:ノオミ・ラパス、ローガン・マーシャル=グリーン、マイケル・ファスベンダー、シャーリズ・セロン 他)

【あらすじ】──西暦2089年。
考古学者のエリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)とチャーリー・ホロウェイ(ローガン・マーシャル=グリーン)によって発見された古代遺跡の壁画から、人類の起源の鍵を握る未知の惑星の存在が示される。
ショウとホロウェイは、ウェイランド・コーポレーションによって選ばれた科学者チームと共に、宇宙船プロメテウス号に乗り込み、惑星LV-223を目指す。
乗組員たちが冷凍睡眠する間、アンドロイドのデイヴィッド(マイケル・ファスベンダー)が航行するプロメテウス号は2093年12月21日にLV-223の目前にまで近づく。
乗組員たちは冷凍睡眠から目覚め、ピーター・ウェイランド社長(ガイ・ピアース)のホログラム映像によって調査目的の説明を受ける。
そこで、惑星に人類の創造主となるエンジニアが存在する説を語るショウ。
しかし、乗組員たちによって結成された調査隊はその惑星で恐るべき生物と遭遇する。──

☆その星は生物兵器の実験場だった?
この映画、ざっくり言えば人類誕生の起源を探ろうと、その手がかりとなるエンジニアがいそうな未知の惑星に宇宙船プロメテウス号で向かい、たどり着いた惑星には確かにエンジニアとおぼしき者がいたのだけど、どうやらそこがヤバい実験を行う場所だったらしく、人類は立ち入るべきじゃなかった!
という内容になるわけです。
そして先にも述べたように、この作品は結果的に人類誕生の起源そのものにはまだたどり着けずに終わるんですね。
実は私、この『プロメテウス』というタイトルは知っていたのですが、これが『エイリアン』の前日譚の映画だったことは割りと最近まで知りませんでした。
『エイリアン:コヴェナント』の劇場公開のことを知り、このシリーズまたやるんだ!と思いつつ、気になって過去作品を見直していたのですが、そこでたまたま『プロメテウス』のことを知りました。
"エイリアン"の"エ"の字もないタイトル。
しかしあのキャッチコピーを見て、
「おおっ!エイリアンの話しから人類誕生の起源の話し?!」
と、これは深みのある内容だと期待して観ました。
しかし最後まで観ても人類誕生の起源にはたどり着けないまま…
あのエンジニアとやらをなんとしてでも阻止せよと言わんばかりの、まさかの神風アタックな演出に違う意味でテンション上がっちゃいました!
それだけに、ガッカリしたわけではないけど実に続きが気になる終わり方ですね。

★冒頭からの美しい映像世界
やはり、近年の映画だけあって、それはもう『エイリアン』1作目から4作目とは比べ物にならないVFX技術が駆使されていますね。
そして何よりも目を惹くのは冒頭の、人間に似たいわゆる"エンジニア"であろう人物が自らの体内に謎の黒い液体を入れ込むシーン。
あのシチュエーションはアイスランドで撮影されたらしいのですが、神秘さと壮大さを感じさせられます。

エンジニアによる怪しげな実験の、始まりと思われるシーンをなんとも美しい描写で表現しています。
ここに人類誕生の秘密が隠されていて、後で明らかになるんだな!
と、この段階では期待してしまいます。
もちろんそこから悪夢へと暗転していくわけです!
この冒頭の美しさと、後のシーンの悪夢という対比が良かったりします。
あとはやはり未来SFという観点で見た場合に、宇宙船の描写が気になるところです。
この辺りはそれこそ当たり前と言えば当たり前で、お決まりの冷凍睡眠装置やホログラム映像の演出によって"未来感"はあります。
2089年かあ…
果たしてこれらの技術が実際にできあがっているのでしょうか。
ホログラムはともかくとして冷凍睡眠!
この技術が開発されたらあなたは使ってみたいですか?
☆おなじみのアンドロイドという存在
さあ、冷凍睡眠装置もさることながら、『エイリアン』シリーズの名物といえばアンドロイドですね。
人と同じように話し、自らの意思で行動するアンドロイドは、他のSFにおいても私を魅了してやみません。
しかし『エイリアン』1作目のハッシュは最低野郎で、リプリーを苦しめていました。
私は2作目(あちらはジェームズ・キャメロン監督ですが)に登場したビショップのストイックなキャラがめちゃ好きです!
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さて本作『プロメテウス』では、妖しくも甘いマスクをしたデイヴィッドが登場します。
主人公エリザベス・ショウにとっては最終的には必要な存在になるわけですが、彼女のパートナーであるチャーリー・ホロウェイに残酷なことをやってのけます。
ウェイランドが送り込んだこのアンドロイド、全くもって敵なのか味方なのか?
いや結局はアンドロイドであって、命令に従うのみだと考えれば、必要に応じてどちらにもなれるのでしょう。
いや~でも、ホロウェイに対して行ったあれ。
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そういうのを抜きにすれば、こんなアンドロイドを仲間にしたいですね。
★ちゃんとやってくれてます、ホラー演出!
リドリー・スコットが監督を務めた1作目の『エイリアン』はその後のアクション要素が強い作品とは違い、得体の知れない生物と初めて対面する恐怖感がありました。
なんだこれは?と近づいた卵からフェイスハガーが飛び出してきて、宇宙船乗組員の顔に覆い被さるあのシーンは、この作品を正にSFホラーと呼ぶに相当する演出でした。
本作『プロメテウス』はというと、やはり同じくリドリー・スコットによる作品だからでしょうか。
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なんせあのキャッチコピーですから。
調査隊の2人が、謎のヘビのような生き物を見つけて近づくシーン。
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「ほら言わんこっちゃない!」
という古風な流れながら、あのシーンは観ているこちらには1作目『エイリアン』からの良い意味での再利用に感じます。
とはいえ、他にホラーな表現があるかといえば、残念ながらないです。
ここはやはりメインとなるテーマが違うからでしょう。
あくまで「人類誕生の起源を見つけ出す鍵となる惑星がわかったが、それは探ってはいけなかった」という話しなわけで、あしからず。
なんやかんやで全体通して、ウェイランドという企業の思惑、そしてあのデイヴィッドというアンドロイド(←やっぱりここ)が恐いです。
──そんなこんなで、ギリシャ神話に登場する、人類を創造したと言われる神「プロメテウス」をタイトルにつけたこの映画。
なるほどなと思わせるタイトルです。
そして、皆さんは「プロメテウスの火」の話をご存知でしょうか。
ゼウスの命令に背き、プロメテウスは人類に火を与えました。
そうして人類は文明や技術を生み出すのですが、愚かな人類はその火で戦争の武器を作り争うようになりました。
『エイリアン』はそもそも、ウェイランドが、地球外生物を兵器として利用しようと企てた話で、この観点で見ても「プロメテウス」というタイトルはぴったしはまっていると言えます。
1つの疑問を残したまま終わってしまうこの作品ですが、その辺りも含めて次に公開される『エイリアン:コヴェナント』に期待したいです。

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