『リベリオン ─反逆者─』 “マトリックスを越えてる”と思う5つのポイント
- 2017/08/31
- 01:57
低予算でありながら、あるいは低予算であるがゆえの創造性からか、思わぬ人気を博す映画は確かにあります。
本国では「『マトリックス』を越えた!」というキャッチコピーでソフト化されたというこのSFアクション作品。
何を持ってして越えたと言っているのかはわかりません。
少なくとも興行収入ではありません。
『マトリックス』のほうがケタ違いに多いです!
なのにこのキャッチコピーに嫌みを感じないのは、私も含め好きな人は本当に好きと言える舞台設定とストーリーとアクションがあるからでしょう!
『リベリオン ─反逆者─(原題:EQUILIBRIUM)』(2002年 脚本・監督:カート・ウィマー 出演:クリスチャン・ベール、エミリー・ワトソン、テイ・ディグス、アンガス・マクファーデン、ショーン・ビーン、ウィリアム・フィクナー、マシュー・ハーバー 他)

【あらすじ】──第三次世界大戦後に出現した都市国家・リブリアでは感情を持つことを禁じられ、音楽や文学、絵画や映像などの感情的なコンテンツも取り締まられていた。
また「イクイリブリウム」という政府機関によって生産・配給される感情抑制薬の服用が義務づけられていた。
違反者を摘発する特殊捜査官「グラマトン・クラリック」の第一級の実力者であるジョン・プレストン(クリスチャン・ベール)は、妻が違反者として処刑されてから息子と娘とともに3人で暮らしていた。
彼は違反者であった同僚を殺害、そして逮捕された女性・メアリー・オブライエン(エミリー・ワトソン)の尋問を機に心が揺らぎはじめる。
政府への疑問を抱くようになった彼は感情抑制薬の服用を止め、政権を握るテトラグラマトン党の党首・ファーザーに戦いを挑む。──
この作品は劇場公開が2002年(日本では2003年)とあり、3年前に公開された『マトリックス』に続く『マトリックス リローデッド』『マトリックス レボリューションズ』とは公開時期が近いことは確かです。
とはいえ、舞台設定もストーリーもなんら共通点のなさずぎる『マトリックス』を引き合いにして比較するようなキャッチコピーは少し変な気がします。
そして先にも述べたように、興行成績では圧倒的に『マトリックス』のほうが(1作目だけでも)上であり、何を持ってして「越えた」のかは観る人によっての感覚の問題になってくるでしょう。
その感覚的な観点で言えば、私も本作が『マトリックス』を越えていると思っている者の1人です。
そこで少なくとも私が思っている、この『リベリオン ─反逆者─』の「マトリックスより勝っているポイント」をあえて述べてみたいと思います。
☆その1:現実との地続きな世界観
『マトリックス』ではまず、ごく普通に私たちが生きているのと同じような世界から話が始まります。
そしてそれが実は仮想現実だったことを知らされた主人公が目を覚ましたところからが、信じ難いような光景になっています。
コンピュータに支配された世界。
その片隅で身を隠すように生きる人々。
あれだけの世界観を映像で表現するには、それなりに大がかりなセットを組み、VFXにも資金と技術を注いでいることでしょう。
対して『リベリオン─』は主にドイツでロケを行い、ベルリン・オリンピアシュタディオンや工事中の地下鉄の駅など、実在の場所を活用しています。
SFといっても、そこまで大がかりなセットやCGを使った描写ではないんですね。
しかしそこがかえって適度なリアリティを醸しています。
近未来SFということなのですが、あの冒頭からの無機質感漂う雰囲気が、特別な細工がなくともなぜか未来的に見えてしまいます!
そして特に惹きつけられたのは、人物たちが乗っているクルマです。
外装はごく普通の現代的なクルマなんですが、白塗りにされた内装。
まさしく低予算に抑えられている演出だなと思うのですが、これがシンプルにカッコいい!
そう、近未来と言っても実際にはそんな何から何まで未来的になってるわけがないという意味での、これまた適度なリアリティがある中での演出です。
それこそ『マトリックス』に登場するようなあのゴツい乗り物は出てきません!
(マトリックスのような、これら大がかりな演出が悪いというわけではないのですが…)
★その2:これぞ肉体芸術!“ガン=カタ”
用意するのは訓練された役者と拳銃を2丁とちょいマトリックスに似た衣装といったところでしょうか。
ガンアクションと日本武術の「カタ」を組み合わせたアクションは、本作を観た人たちの間では有名ですね。
このアクションシーンにおいてはワイヤーはあまり使っていないそうで、バレットタイムという特殊なカメラや特別なCGを使っているような場面もありません。
これで次々と敵をたおしていく演出は正直ツッコミどころはあります!
自分だけ敵の弾にあたらずに、ここまでウマくいくか!
しかし、そんなツッコミどころにニヤリとさせられながらも、クリスチャン・ベールがやるとカッコいいんですよね!
拳銃という小道具を除けば、あとはワイヤーなどに頼ることなく、地に足がついた状態での肉体のみによる表現!
暗闇、撃ちたおされる敵たち、マガジンの装填、更に敵から奪った銃を撃つ際の動きまで──
もはやステージ上でのダンスを思わせる計算された美しさを感じます。
ツッコミどころと肉体芸術的な美しさがスレスレのところで相まって、本作の代名詞と言えるアクションに昇華されています。
☆その3:爽快なわかりやすいストーリー
『マトリックス』のあの難解なストーリーも確かに魅力なんですが、ついていけないという人も多いかと思います。
私はあの1作目の内容はだいたい理解できていて、割りとハッキリ覚えています(2、3作目はあまり記憶にありません)。
しかしそこまでを理解するための始めの説明のあたりは今になって久しぶりに観ると、正直退屈で寝そうになります。
初めて劇場で観たときは、あまりに斬新なアクションシーンが勝っていたので興奮しっぱなしだったのに、今ではあの冒頭からの世界観を示すシーンでさすがにしつこいと感じてしまいます。
その点『リベリオン─』は単純明快なストーリーと言えます。
舞台設定は第三次世界大戦後という荒廃的な世界ではあります。
そしてその中で二度と戦争を起こさせないために、人々に感情を持たせないよう支配された都市国家──
そこに疑問を抱きはじめた主人公が反逆するというわかりやすい構図──
それらを追って観ていれば、途中で意味がわからなくなるというシチュエーションに出くわすことはないかと思います。
★その4:シリーズ化なし!作風を汚さぬ1作完結
もしこの作品の続編が作られたら私は観てしまうでしょうけど、今のところ作られていません。
そしておそらく作られることはないでしょう。
続編ができるならそれはそれでうれしいし期待してしまいますが、基本的に作る必要のない終わり方です。
『マトリックス』のほうも、1作で終わっていたほうが良かったという人がいましたが、私も同感です。
1作目でスカッとする終わり方だったのに、最終的に3部作になりました。
2作目『─リローデッド』になると、1作目で身につけた能力がすっかりこなれた主人公・ネオが登場し、物語の世界観も観た人たちはわかっています。
となると、初めて1作目を観たときのような新鮮な驚きはないということになります。
もちろんそこから新たな展開が期待できるのですが、やはり1作目で目にした斬新な舞台設定への感動や、わけがわからぬままモーフィアスについていき、成長していく主人公への感情移入が浅くなってしまいます。
これが3作目『レボリューションズ』ともなると、取って付けたようなありがちなSF映画に変貌をとげて完結に向かいます。
その点に関しては『リベリオン─』は、あのガン=カタという芸術的なアクションでひっそりとファンが現れ、1作完結によって彼らの中に良い記憶として残っているでしょう。
☆その5:まとまりのいいラスト
先にも述べたように『マトリックス』のほうは1作で完結していたほうが、終わり方として良かったでしょう。
なんせあの3作目の終わり方は、いまひとつスッキリしません。
正直なところ私は劇場で観て以来、未だに呑み込めないままです。
理解するためにもう一度観る気力も今のところありません(ラストにたどり着くまでの内容からしてもう新鮮味を感じられません)。
さあ、『リベリオン─』のほうはどうでしょう。
それはもう、ホントに納得のいくスカッとしたラストです。
政府による行きすぎた管理体制の下、人々が感情を失った世界とはどんなものかという問題提起があり、そこから解決していくのは、ありきたりと言えばそうなんですが…。
しかし問題はそこではないんです!
真のヒーローはガン=カタを使いこなす主人公以外にもいた!
と、目を覚まさせられる。
むしろ、あの彼こそヒーローだ!と言える、最高に後味のいいラストです。
──はい、自分でもここまで言うか?!というような『マトリックス』に否定的な述べ方をしてしまいましたが、ここはあえて比較してみるというテーマでのことなので、悪しからず…。
そんな比較など無関係に、この『リベリオン ─反逆者─』は、SFアクション映画の隠れた名作と言えます。
ですので、観たことないという方は是非ともチェックしていただきたいです。


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本国では「『マトリックス』を越えた!」というキャッチコピーでソフト化されたというこのSFアクション作品。
何を持ってして越えたと言っているのかはわかりません。
少なくとも興行収入ではありません。
『マトリックス』のほうがケタ違いに多いです!
なのにこのキャッチコピーに嫌みを感じないのは、私も含め好きな人は本当に好きと言える舞台設定とストーリーとアクションがあるからでしょう!
『リベリオン ─反逆者─(原題:EQUILIBRIUM)』(2002年 脚本・監督:カート・ウィマー 出演:クリスチャン・ベール、エミリー・ワトソン、テイ・ディグス、アンガス・マクファーデン、ショーン・ビーン、ウィリアム・フィクナー、マシュー・ハーバー 他)

【あらすじ】──第三次世界大戦後に出現した都市国家・リブリアでは感情を持つことを禁じられ、音楽や文学、絵画や映像などの感情的なコンテンツも取り締まられていた。
また「イクイリブリウム」という政府機関によって生産・配給される感情抑制薬の服用が義務づけられていた。
違反者を摘発する特殊捜査官「グラマトン・クラリック」の第一級の実力者であるジョン・プレストン(クリスチャン・ベール)は、妻が違反者として処刑されてから息子と娘とともに3人で暮らしていた。
彼は違反者であった同僚を殺害、そして逮捕された女性・メアリー・オブライエン(エミリー・ワトソン)の尋問を機に心が揺らぎはじめる。
政府への疑問を抱くようになった彼は感情抑制薬の服用を止め、政権を握るテトラグラマトン党の党首・ファーザーに戦いを挑む。──
この作品は劇場公開が2002年(日本では2003年)とあり、3年前に公開された『マトリックス』に続く『マトリックス リローデッド』『マトリックス レボリューションズ』とは公開時期が近いことは確かです。
とはいえ、舞台設定もストーリーもなんら共通点のなさずぎる『マトリックス』を引き合いにして比較するようなキャッチコピーは少し変な気がします。
そして先にも述べたように、興行成績では圧倒的に『マトリックス』のほうが(1作目だけでも)上であり、何を持ってして「越えた」のかは観る人によっての感覚の問題になってくるでしょう。
その感覚的な観点で言えば、私も本作が『マトリックス』を越えていると思っている者の1人です。
そこで少なくとも私が思っている、この『リベリオン ─反逆者─』の「マトリックスより勝っているポイント」をあえて述べてみたいと思います。
☆その1:現実との地続きな世界観
『マトリックス』ではまず、ごく普通に私たちが生きているのと同じような世界から話が始まります。
そしてそれが実は仮想現実だったことを知らされた主人公が目を覚ましたところからが、信じ難いような光景になっています。
コンピュータに支配された世界。
その片隅で身を隠すように生きる人々。
あれだけの世界観を映像で表現するには、それなりに大がかりなセットを組み、VFXにも資金と技術を注いでいることでしょう。
対して『リベリオン─』は主にドイツでロケを行い、ベルリン・オリンピアシュタディオンや工事中の地下鉄の駅など、実在の場所を活用しています。
SFといっても、そこまで大がかりなセットやCGを使った描写ではないんですね。
しかしそこがかえって適度なリアリティを醸しています。
近未来SFということなのですが、あの冒頭からの無機質感漂う雰囲気が、特別な細工がなくともなぜか未来的に見えてしまいます!
そして特に惹きつけられたのは、人物たちが乗っているクルマです。
外装はごく普通の現代的なクルマなんですが、白塗りにされた内装。
まさしく低予算に抑えられている演出だなと思うのですが、これがシンプルにカッコいい!
そう、近未来と言っても実際にはそんな何から何まで未来的になってるわけがないという意味での、これまた適度なリアリティがある中での演出です。
それこそ『マトリックス』に登場するようなあのゴツい乗り物は出てきません!
(マトリックスのような、これら大がかりな演出が悪いというわけではないのですが…)
★その2:これぞ肉体芸術!“ガン=カタ”
用意するのは訓練された役者と拳銃を2丁とちょいマトリックスに似た衣装といったところでしょうか。
ガンアクションと日本武術の「カタ」を組み合わせたアクションは、本作を観た人たちの間では有名ですね。
このアクションシーンにおいてはワイヤーはあまり使っていないそうで、バレットタイムという特殊なカメラや特別なCGを使っているような場面もありません。
これで次々と敵をたおしていく演出は正直ツッコミどころはあります!
自分だけ敵の弾にあたらずに、ここまでウマくいくか!
しかし、そんなツッコミどころにニヤリとさせられながらも、クリスチャン・ベールがやるとカッコいいんですよね!
拳銃という小道具を除けば、あとはワイヤーなどに頼ることなく、地に足がついた状態での肉体のみによる表現!
暗闇、撃ちたおされる敵たち、マガジンの装填、更に敵から奪った銃を撃つ際の動きまで──
もはやステージ上でのダンスを思わせる計算された美しさを感じます。
ツッコミどころと肉体芸術的な美しさがスレスレのところで相まって、本作の代名詞と言えるアクションに昇華されています。
☆その3:爽快なわかりやすいストーリー
『マトリックス』のあの難解なストーリーも確かに魅力なんですが、ついていけないという人も多いかと思います。
私はあの1作目の内容はだいたい理解できていて、割りとハッキリ覚えています(2、3作目はあまり記憶にありません)。
しかしそこまでを理解するための始めの説明のあたりは今になって久しぶりに観ると、正直退屈で寝そうになります。
初めて劇場で観たときは、あまりに斬新なアクションシーンが勝っていたので興奮しっぱなしだったのに、今ではあの冒頭からの世界観を示すシーンでさすがにしつこいと感じてしまいます。
その点『リベリオン─』は単純明快なストーリーと言えます。
舞台設定は第三次世界大戦後という荒廃的な世界ではあります。
そしてその中で二度と戦争を起こさせないために、人々に感情を持たせないよう支配された都市国家──
そこに疑問を抱きはじめた主人公が反逆するというわかりやすい構図──
それらを追って観ていれば、途中で意味がわからなくなるというシチュエーションに出くわすことはないかと思います。
★その4:シリーズ化なし!作風を汚さぬ1作完結
もしこの作品の続編が作られたら私は観てしまうでしょうけど、今のところ作られていません。
そしておそらく作られることはないでしょう。
続編ができるならそれはそれでうれしいし期待してしまいますが、基本的に作る必要のない終わり方です。
『マトリックス』のほうも、1作で終わっていたほうが良かったという人がいましたが、私も同感です。
1作目でスカッとする終わり方だったのに、最終的に3部作になりました。
2作目『─リローデッド』になると、1作目で身につけた能力がすっかりこなれた主人公・ネオが登場し、物語の世界観も観た人たちはわかっています。
となると、初めて1作目を観たときのような新鮮な驚きはないということになります。
もちろんそこから新たな展開が期待できるのですが、やはり1作目で目にした斬新な舞台設定への感動や、わけがわからぬままモーフィアスについていき、成長していく主人公への感情移入が浅くなってしまいます。
これが3作目『レボリューションズ』ともなると、取って付けたようなありがちなSF映画に変貌をとげて完結に向かいます。
その点に関しては『リベリオン─』は、あのガン=カタという芸術的なアクションでひっそりとファンが現れ、1作完結によって彼らの中に良い記憶として残っているでしょう。
☆その5:まとまりのいいラスト
先にも述べたように『マトリックス』のほうは1作で完結していたほうが、終わり方として良かったでしょう。
なんせあの3作目の終わり方は、いまひとつスッキリしません。
正直なところ私は劇場で観て以来、未だに呑み込めないままです。
理解するためにもう一度観る気力も今のところありません(ラストにたどり着くまでの内容からしてもう新鮮味を感じられません)。
さあ、『リベリオン─』のほうはどうでしょう。
それはもう、ホントに納得のいくスカッとしたラストです。
政府による行きすぎた管理体制の下、人々が感情を失った世界とはどんなものかという問題提起があり、そこから解決していくのは、ありきたりと言えばそうなんですが…。
しかし問題はそこではないんです!
真のヒーローはガン=カタを使いこなす主人公以外にもいた!
と、目を覚まさせられる。
むしろ、あの彼こそヒーローだ!と言える、最高に後味のいいラストです。
──はい、自分でもここまで言うか?!というような『マトリックス』に否定的な述べ方をしてしまいましたが、ここはあえて比較してみるというテーマでのことなので、悪しからず…。
そんな比較など無関係に、この『リベリオン ─反逆者─』は、SFアクション映画の隠れた名作と言えます。
ですので、観たことないという方は是非ともチェックしていただきたいです。



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