久しぶりに中国の武侠映画②──『LOVERS』
- 2018/02/27
- 21:43
前回のブログでは中国の武侠映画の話題として『英雄 ~HERO~』について書きました。
久しぶりに観たこの映画はやはり映像世界が美しく、今観てもそれを実感できるという内容の記事でした。
そちらのブログは、「これをきっかけに『グリーン・デスティニー』や『LOVERS』も改めて観てみようか」という締めかたでした。
そしてあれから早速、『HERO』と同じチャン・イーモウ監督作品『LOVERS』を観ました。
『LOVERS』(2004年 監督:チャン・イーモウ 出演:金城武、アンディ・ラウ、チャン・ツィイー 他)


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【あらすじ】──9世紀中頃、唐王朝時代の中国。
政治の腐敗により、反政府組織が国内の各地に存在していた。
役人のリウ(アンディ・ラウ)は、とある遊郭にある「牡丹坊」の盲目の踊り子・シャオメイ(チャン・ツィイー)が、反政府組織・飛刀門の前頭目の娘であると疑いをかける。
リウは同僚のジン(金城武)に客として牡丹坊に入り、確証を得てシャオメイを捕らえるように命じるが。──
☆再びチャン・イーモウ監督による映像美の武侠映画
前回取りあげた『HERO』の翌年に公開された、同じくチャン・イーモウ監督による中国武侠映画である本作。
ワイヤーアクションや、場面ごとの“色”を駆使した表現は『HERO』ほど前面に出ていません。
しかし、いちいち大袈裟な人物や物体のアップの映し方は変わらずで、アクションシーンの1つひとつに躍動感が与えられています。
そしてこの作品ではとりわけ“飛び道具”の武器の描写に強いこだわりが見受けられます。
同時に放った訳でもない弓矢の矢が、ほぼ同時に複数の相手に刺さったり、──

飛刀という、手裏剣のように飛ばす小型の刀をこれまたいちいちアップで軌道を追っていく画面の演出。
こんな物まで武器に?
と思うのは竹!
まあしかし、あれだけ集中攻撃されたら、ひとたまりもないか…
それに竹というのはやはり、中国らしさがあります。
とにかくこういう飛び道具のありえない演出が、ワイヤーアクションや剣術よりも主軸になっています。
ただの殺傷の道具としてよりもアート重視な演出の小道具と化している武器たちが、観る者を楽しませる要素を作品に与えています。
それらの演出が、野山や竹林の中で繰り広げられる様が、やはり映像美として活きているんですね!
さて、先に“色”の演出は『HERO』ほど前面には出ていないと述べましたが、クライマックスシーンにおいては、ある意味での“色”の演出が利いています。
それは竹林の中での衣装の色もそうなんですが、何よりも私が注目したポイント──
それは血です。
血といっても、スプラッター映画や戦争映画にあるようなエグい見せ方とは違う、どこか綺麗な見せ方なんです。
そもそも中国のこういう時代劇に、ドロドロした流血シーンは似合わないですからね。
で、その血の色がクライマックスでの戦いの舞台となる雪原の白と対比になって際立っているんです!
これがなんとも美しい血の見せ方となって、ある種の色の演出となっています。
更に興味深いのはそのロケ地でのエピソード。
撮影に使われたのはウクライナにある花畑で、本当はその花がたくさん咲いた景色の撮影になる予定だったのです。
ところが花がうまく育たなかったうえに、季節外れの雪が降ってしまい、雪原のシーンとして撮影されることになったとのこと。
しかしこの予期せぬ誤算が、かえってこのクライマックスシーンを美しく彩ってるではありませんか!
制作者側が最初から狙っていたわけではないながら、雪の白と血の赤という思わぬ形での対比の描写が、クライマックスシーンを盛り上げている意味で興味深いエピソードです。
★華麗さを増しているチャン・ツィイー
劇中で、盲目の美しい踊り子として登場するチャン・ツィイー。
前回の『HERO』でも十分に主要な人物を演じていましたが、本作では更に活躍ぶりが発揮され、力強く華麗です。

アンディ・ラウや金城武が演じている役人の前で披露する舞のシーンはもちろん、反乱者として戦う勇ましさもあり、彼女の演技者としての実力が実感できます。
男を惚れさせる美しさや可愛らしさだけではなく、時には恋愛相手である男を守る側に立つその姿こそが真に魅力的です。
盲目という設定で登場する冒頭のシーンから、その目に可愛らしさと力強さがうかがえ、こんな役を演じきる姿に、チャン・ツィイーの顔立ちが活きていると言えます。

この作品、主役は金城武と見て良いんでしょうけど、─そして金城武も好きなんですけど──やはりチャン・ツィイーの存在が愛しいくらいに際立っている映画だと私は思います。


そんでもって、アンディ・ラウが最後には下心をあらわにした男となってしまってます。
こうして本作を観ていると、今度は武侠映画つながりではなく、チャン・ツィイーつながりであれこれ作品を観たくなる、あるいは過去に観た作品を観なおしたくなるところですね。
チャン・ツィイーが出演していた映画…
もちろん、武侠映画つながりも併せれば『グリーン・デスティニー』もそうなんですが、それこそデビュー作までさかのぼるなら『初恋のきた道』はまだ観ていないんですね、わたくし。
しかし『LOVERS』のような華麗さを期待するなら『女帝[エンペラー]』が気になります。
ハリウッドデビュー作品となれば『ラッシュアワー2』で、やたら爆弾で攻撃してくる悪役だった記憶がありますが、あちらは当時、彼女は英語があまり話せなくて苦労したそうです。
中国出身でハリウッドで活躍している人って、日本人とは比べ物にならないくらい英語をスラスラ話してるイメージがあるから、逆にそんな苦労話も知れば、ますます彼女の魅力を感じてしまいますね。
そしてチャン・ツィイーで英語ときたときに、私個人が印象に残っていることといえば──
昔、NHKの『英語でしゃべらナイト』という番組で、確か八嶋智人がチャン・ツィイーに英語でインタビューするという場面がありました。
(何の映画での来日だったかはちょっと覚えていないのですが…)
八嶋智人も番組を通じて英語を勉強してる段階で、まだそんなに話せない状態でのインタビューでした。
そんな彼に対しチャン・ツィイーは、
「あなた勇気があるわね。英語が話せないのに英語でインタビューなんて。私ならやらないわ」
というようなことを言っていました。
彼の勇敢さを心底ほめていたのか?
それとも無謀さに皮肉を言ったのか?
番組を見ていて恐ぇ~ってなりました。
でもそんなチャン・ツィイーも実は英語で苦労した頃があったんだなと感慨深くなります。
おっと!
『LOVERS』の作品の内容より、チャン・ツィイーの話しに脱線してしまいました。
もっと言えば、前回から今回のブログを書いているうちに、今頃になって彼女の魅力にハマりそうになってしまってます。
そんなチャン・ツィイーの華麗な姿が堪能できる作品の1つとして『HERO』に次ぎ、『LOVERS』の方もこうして再認識しました。
──ところで本作の衣装を手掛けたワダ・エミさんは『HERO』でも衣装を手掛けていたのですが、そのときに香港電影金像奨 最優秀衣装デザイン賞というのを受賞されたんですね。
作品を彩るあの衣装の数々を日本のデザイナーが手掛けたというのは本当に名誉なことで尊敬します。


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久しぶりに観たこの映画はやはり映像世界が美しく、今観てもそれを実感できるという内容の記事でした。
そちらのブログは、「これをきっかけに『グリーン・デスティニー』や『LOVERS』も改めて観てみようか」という締めかたでした。
そしてあれから早速、『HERO』と同じチャン・イーモウ監督作品『LOVERS』を観ました。
『LOVERS』(2004年 監督:チャン・イーモウ 出演:金城武、アンディ・ラウ、チャン・ツィイー 他)

【あらすじ】──9世紀中頃、唐王朝時代の中国。
政治の腐敗により、反政府組織が国内の各地に存在していた。
役人のリウ(アンディ・ラウ)は、とある遊郭にある「牡丹坊」の盲目の踊り子・シャオメイ(チャン・ツィイー)が、反政府組織・飛刀門の前頭目の娘であると疑いをかける。
リウは同僚のジン(金城武)に客として牡丹坊に入り、確証を得てシャオメイを捕らえるように命じるが。──
☆再びチャン・イーモウ監督による映像美の武侠映画
前回取りあげた『HERO』の翌年に公開された、同じくチャン・イーモウ監督による中国武侠映画である本作。
ワイヤーアクションや、場面ごとの“色”を駆使した表現は『HERO』ほど前面に出ていません。
しかし、いちいち大袈裟な人物や物体のアップの映し方は変わらずで、アクションシーンの1つひとつに躍動感が与えられています。
そしてこの作品ではとりわけ“飛び道具”の武器の描写に強いこだわりが見受けられます。
同時に放った訳でもない弓矢の矢が、ほぼ同時に複数の相手に刺さったり、──

飛刀という、手裏剣のように飛ばす小型の刀をこれまたいちいちアップで軌道を追っていく画面の演出。
こんな物まで武器に?
と思うのは竹!
まあしかし、あれだけ集中攻撃されたら、ひとたまりもないか…
それに竹というのはやはり、中国らしさがあります。
とにかくこういう飛び道具のありえない演出が、ワイヤーアクションや剣術よりも主軸になっています。
ただの殺傷の道具としてよりもアート重視な演出の小道具と化している武器たちが、観る者を楽しませる要素を作品に与えています。
それらの演出が、野山や竹林の中で繰り広げられる様が、やはり映像美として活きているんですね!
さて、先に“色”の演出は『HERO』ほど前面には出ていないと述べましたが、クライマックスシーンにおいては、ある意味での“色”の演出が利いています。
それは竹林の中での衣装の色もそうなんですが、何よりも私が注目したポイント──
それは血です。
血といっても、スプラッター映画や戦争映画にあるようなエグい見せ方とは違う、どこか綺麗な見せ方なんです。
そもそも中国のこういう時代劇に、ドロドロした流血シーンは似合わないですからね。
で、その血の色がクライマックスでの戦いの舞台となる雪原の白と対比になって際立っているんです!
これがなんとも美しい血の見せ方となって、ある種の色の演出となっています。
更に興味深いのはそのロケ地でのエピソード。
撮影に使われたのはウクライナにある花畑で、本当はその花がたくさん咲いた景色の撮影になる予定だったのです。
ところが花がうまく育たなかったうえに、季節外れの雪が降ってしまい、雪原のシーンとして撮影されることになったとのこと。
しかしこの予期せぬ誤算が、かえってこのクライマックスシーンを美しく彩ってるではありませんか!
制作者側が最初から狙っていたわけではないながら、雪の白と血の赤という思わぬ形での対比の描写が、クライマックスシーンを盛り上げている意味で興味深いエピソードです。
★華麗さを増しているチャン・ツィイー
劇中で、盲目の美しい踊り子として登場するチャン・ツィイー。
前回の『HERO』でも十分に主要な人物を演じていましたが、本作では更に活躍ぶりが発揮され、力強く華麗です。

アンディ・ラウや金城武が演じている役人の前で披露する舞のシーンはもちろん、反乱者として戦う勇ましさもあり、彼女の演技者としての実力が実感できます。
男を惚れさせる美しさや可愛らしさだけではなく、時には恋愛相手である男を守る側に立つその姿こそが真に魅力的です。
盲目という設定で登場する冒頭のシーンから、その目に可愛らしさと力強さがうかがえ、こんな役を演じきる姿に、チャン・ツィイーの顔立ちが活きていると言えます。

この作品、主役は金城武と見て良いんでしょうけど、─そして金城武も好きなんですけど──やはりチャン・ツィイーの存在が愛しいくらいに際立っている映画だと私は思います。


そんでもって、アンディ・ラウが最後には下心をあらわにした男となってしまってます。
こうして本作を観ていると、今度は武侠映画つながりではなく、チャン・ツィイーつながりであれこれ作品を観たくなる、あるいは過去に観た作品を観なおしたくなるところですね。
チャン・ツィイーが出演していた映画…
もちろん、武侠映画つながりも併せれば『グリーン・デスティニー』もそうなんですが、それこそデビュー作までさかのぼるなら『初恋のきた道』はまだ観ていないんですね、わたくし。
しかし『LOVERS』のような華麗さを期待するなら『女帝[エンペラー]』が気になります。
ハリウッドデビュー作品となれば『ラッシュアワー2』で、やたら爆弾で攻撃してくる悪役だった記憶がありますが、あちらは当時、彼女は英語があまり話せなくて苦労したそうです。
中国出身でハリウッドで活躍している人って、日本人とは比べ物にならないくらい英語をスラスラ話してるイメージがあるから、逆にそんな苦労話も知れば、ますます彼女の魅力を感じてしまいますね。
そしてチャン・ツィイーで英語ときたときに、私個人が印象に残っていることといえば──
昔、NHKの『英語でしゃべらナイト』という番組で、確か八嶋智人がチャン・ツィイーに英語でインタビューするという場面がありました。
(何の映画での来日だったかはちょっと覚えていないのですが…)
八嶋智人も番組を通じて英語を勉強してる段階で、まだそんなに話せない状態でのインタビューでした。
そんな彼に対しチャン・ツィイーは、
「あなた勇気があるわね。英語が話せないのに英語でインタビューなんて。私ならやらないわ」
というようなことを言っていました。
彼の勇敢さを心底ほめていたのか?
それとも無謀さに皮肉を言ったのか?
番組を見ていて恐ぇ~ってなりました。
でもそんなチャン・ツィイーも実は英語で苦労した頃があったんだなと感慨深くなります。
おっと!
『LOVERS』の作品の内容より、チャン・ツィイーの話しに脱線してしまいました。
もっと言えば、前回から今回のブログを書いているうちに、今頃になって彼女の魅力にハマりそうになってしまってます。
そんなチャン・ツィイーの華麗な姿が堪能できる作品の1つとして『HERO』に次ぎ、『LOVERS』の方もこうして再認識しました。
──ところで本作の衣装を手掛けたワダ・エミさんは『HERO』でも衣装を手掛けていたのですが、そのときに香港電影金像奨 最優秀衣装デザイン賞というのを受賞されたんですね。
作品を彩るあの衣装の数々を日本のデザイナーが手掛けたというのは本当に名誉なことで尊敬します。

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