チャン・ツィイーが活躍する映画──『SAYURI』
- 2018/03/16
- 23:02
前々回ブログで『HERO』『LOVERS』という武侠映画つながりで作品を取り上げた中で、今度はチャン・ツィイーにすっかり魅了されてしまったということを述べました。
そして、チャン・ツィイーが出演している映画(特にまだ観ていない作品)を観ていこうかと思い立ち、まずはこちらを観ました。
『SAYURI』(2005年 製作:ルーシー・フィッシャー、ダグラス・ウィック、スティーブン・スピルバーグ 監督:ロブ・マーシャル 出演:チャン・ツィイー、コン・リー、ミシェル・ヨー、渡辺謙、桃井かおり、工藤夕貴、役所広司、大後寿々花 他)


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【あらすじ】──第二次世界大戦前の日本。
貧しい漁村の少女・千代(大後寿々花)は、とある花街の置屋に売られる。
「さゆり」の名で芸者へと成長した彼女(チャン・ツィイー)は、一流を目指す修行の日々の中、少女時代にやさしい言葉をかけてくれた「会長さん」と呼ばれる男(渡辺謙)と再会する。
日本が戦時体制へと向かう中、さゆりは「会長さん」への思いが捨てきれずにいた。──
☆違和感はあっても完成度は高い作品!
これはもう外国人の目線で日本を描くと、どうしても付き物なのですが──
本作もハリウッドで制作された、日本を舞台にした作品として所々の不自然さやツッコミどころは否めません。
まず、これを言ってしまってはオシマイといえばオシマイなのですが、日本の、それも芸者の世界を描いた作品で台詞が英語であること。
この点で日本人の私たちは冒頭から違和感を覚えるかと思います。
日本をなんとかインターナショナルな向きで伝えようとした結果として、なおかつそれを映像で伝えようとするその手段として致し方ない部分ではあります。
ただ、私の場合はこの点に関してはしばらく観ているうちに慣れてきてしまいました。
台詞が英語であっても、とにかく俳優たちの演技力に魅了されるばかりで、すっかりその世界に浸かりこんでしまえるだけの力がこの作品にはあると言えます。
神社の鈴を鳴らすところでお寺の鐘の音が鳴る(ほとんどBGMの効果音に近いとも思えますが)という日常レベルでおかしいと思える点などを除けば、英語でもちゃんと日本を描いているなと感じられるんですね!
それこそ芸者の慣わしなどに関しては、私たち日本人ですら知らないこともたくさんありそうで、そこを無視したまま「あれはおかしい、これはおかしい」と言い出すのはかえって恥ずかしいでしょう。
制作者たちが事前に日本を訪れ、芸者というものについてしっかりとリサーチしたうえで可能な限り日本の美を表現しようとした努力は評価に値します。

もしかしたら、芸者の文化・慣わしにおいては、すっかり彼らのほうが私たちより詳しくなってしまっているかもしれません。
作品を観ながら「芸者ってこういう世界なんだ」と、つくづく日本人でありながら知らない日本の文化を再認識させられます(劇中の描写がどこまで正確かはわかりません)。
★キャステングの問題も払拭する俳優たちの演技力
本作はチャン・ツィイーが演じる“さゆり”やコン・リーが演じる初桃といった主要な人物をはじめとして、登場する人物は基本的に皆、日本人という設定です。
しかし、その主要な人物たちに限って起用されてるのは日本人じゃないところに、本国アメリカでも批判があったようです。

確かにいくら西洋人からしてみれば同じ東洋人といっても、日本の芸者を中国人が演じるのは何か違う気がするし、劇場公開当時に予告が流れたときは私も「これはおかしい!」と思っていました。
それと同時に「まあハリウッドが作る映画だし、仕方ない」と思いながら、当時は劇場で観ることなくスルーしていました。
なにやらハリウッド映画界における組合協定とやらでこのようなキャステングになったようです。
しかし、この点に関しても是非とも観てから良し悪しを判断していただきたいところです。
先程もチラと述べましたが、この作品、いろんな不自然な演出やキャステングの問題も払拭させるほどに、俳優たちの演技がとにかくすばらしいです!
私は初めてDVDで観て、そう思いました。
冒頭の少女だった頃の主人公を演じている大後寿々花をはじめとした子役から、周辺の人物を演じているそれぞれの俳優まで、言語の壁を越えて感情移入できる説得力があります。

日本という意識をあえて脇に置いて、西洋人にとってのどこか異国の地を舞台にしたハリウッド映画ととらえれば、実力派の俳優たちを結集させた豪華な芸術映画として観ることができます。
やはり主演のチャン・ツィイーはもちろんのこと、コン・リーやミシェル・ヨーと、アジアの大物女優がそろっているわけですからね。
更にはその主要な人物を演じている役者たちに負けず劣らずの存在感を、日本の俳優たちも存分に発揮している作品でもあります。
渡辺謙、桃井かおり、工藤夕貴、役所広司と、日本人のキャストも申し分なく豪華で、もちろん演技も日本人らしい感情表現で、文句なしです。


何がスゴいって、そらもう台詞が英語なのに、しっかり日本人を見ている感覚があるんです!
ハリウッド映画だからといって決してハリウッド向きの見せ方といったワザとらしさはなく、台詞が英語だからといって日本らしさが損なわれるということもなく、自然にその人物を演じてのける姿に感服です。
それによって、主演のチャン・ツィイーや、その他主要な人物たちに引けを取らない──
むしろ、脇役でもこれくらいやってみせるぞと言わんばかりの余裕すら感じてしまうところに、この人たちは正に日本の誇りだなと改めて実感します。
☆着物で舞っても華麗なるチャン・ツィイー
『HERO』ではワイヤーアクションと剣術を見せ、『LOVERS』では遊郭の踊り子を演じていたチャン・ツィイー。
やはり彼女は武術や舞踏といったアクティブな演技で息を呑む華麗さを発揮する女優ですね。
そして私は特に彼女の横顔がステキだなと思います。

可愛らしさの中に、実はどことなく男性的な力強さも垣間見えると言えばイメージが伝わるでしょうか。
こういった部分は、よくいる日本の女性に対して使う“かわいい”とか“キレイ”とかとは違うのでしょう。
それにもかかわらず、本作で日本の芸者として着物を着ている姿はやはり、他の作品と変わらず、その“華麗さ”があるんですね!

『LOVERS』のときの踊り子の衣装だけでなく、日本の着物を着て踊ってもやはり秀逸な輝きを放っています。
先ほどのキャステングの話しでもふれましたが、日本の芸者を描いた映画としては、特に事情がなければ日本の女優を使っていても不思議ではなかったところでしょう。
もちろん、それならそれで良い作品ができていたと思われます。
しかし、こうして完成した作品を観た後では、もうこの主役はチャン・ツィイーじゃないとできないのではと思えてきます。
本当の意味でのリアルな日本の芸者とは少し違っていても、この作品においては彼女が造り出す芸者の姿ありきと言ってしまっても良いくらいです。
私自身、今になって初めて本作を観ましたが、ここまで納得いくとは思いませんでした。
そんなチャン・ツィイーをはじめとして、アジアの名女優たちを結集し、日本の実力ある俳優たちで脇を固め、日本の芸者という文化をハリウッド流に表現した前衛的な芸術として私たち日本人のほうがお墨を付けても良い映画なのではないでしょうか。


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【関連記事↓】
→久しぶりに中国の武侠映画──『英雄 ~HERO~』
→久しぶりに中国の武侠映画②──『LOVERS』
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そして、チャン・ツィイーが出演している映画(特にまだ観ていない作品)を観ていこうかと思い立ち、まずはこちらを観ました。
『SAYURI』(2005年 製作:ルーシー・フィッシャー、ダグラス・ウィック、スティーブン・スピルバーグ 監督:ロブ・マーシャル 出演:チャン・ツィイー、コン・リー、ミシェル・ヨー、渡辺謙、桃井かおり、工藤夕貴、役所広司、大後寿々花 他)

【あらすじ】──第二次世界大戦前の日本。
貧しい漁村の少女・千代(大後寿々花)は、とある花街の置屋に売られる。
「さゆり」の名で芸者へと成長した彼女(チャン・ツィイー)は、一流を目指す修行の日々の中、少女時代にやさしい言葉をかけてくれた「会長さん」と呼ばれる男(渡辺謙)と再会する。
日本が戦時体制へと向かう中、さゆりは「会長さん」への思いが捨てきれずにいた。──
☆違和感はあっても完成度は高い作品!
これはもう外国人の目線で日本を描くと、どうしても付き物なのですが──
本作もハリウッドで制作された、日本を舞台にした作品として所々の不自然さやツッコミどころは否めません。
まず、これを言ってしまってはオシマイといえばオシマイなのですが、日本の、それも芸者の世界を描いた作品で台詞が英語であること。
この点で日本人の私たちは冒頭から違和感を覚えるかと思います。
日本をなんとかインターナショナルな向きで伝えようとした結果として、なおかつそれを映像で伝えようとするその手段として致し方ない部分ではあります。
ただ、私の場合はこの点に関してはしばらく観ているうちに慣れてきてしまいました。
台詞が英語であっても、とにかく俳優たちの演技力に魅了されるばかりで、すっかりその世界に浸かりこんでしまえるだけの力がこの作品にはあると言えます。
神社の鈴を鳴らすところでお寺の鐘の音が鳴る(ほとんどBGMの効果音に近いとも思えますが)という日常レベルでおかしいと思える点などを除けば、英語でもちゃんと日本を描いているなと感じられるんですね!
それこそ芸者の慣わしなどに関しては、私たち日本人ですら知らないこともたくさんありそうで、そこを無視したまま「あれはおかしい、これはおかしい」と言い出すのはかえって恥ずかしいでしょう。
制作者たちが事前に日本を訪れ、芸者というものについてしっかりとリサーチしたうえで可能な限り日本の美を表現しようとした努力は評価に値します。

もしかしたら、芸者の文化・慣わしにおいては、すっかり彼らのほうが私たちより詳しくなってしまっているかもしれません。
作品を観ながら「芸者ってこういう世界なんだ」と、つくづく日本人でありながら知らない日本の文化を再認識させられます(劇中の描写がどこまで正確かはわかりません)。
★キャステングの問題も払拭する俳優たちの演技力
本作はチャン・ツィイーが演じる“さゆり”やコン・リーが演じる初桃といった主要な人物をはじめとして、登場する人物は基本的に皆、日本人という設定です。
しかし、その主要な人物たちに限って起用されてるのは日本人じゃないところに、本国アメリカでも批判があったようです。

確かにいくら西洋人からしてみれば同じ東洋人といっても、日本の芸者を中国人が演じるのは何か違う気がするし、劇場公開当時に予告が流れたときは私も「これはおかしい!」と思っていました。
それと同時に「まあハリウッドが作る映画だし、仕方ない」と思いながら、当時は劇場で観ることなくスルーしていました。
なにやらハリウッド映画界における組合協定とやらでこのようなキャステングになったようです。
しかし、この点に関しても是非とも観てから良し悪しを判断していただきたいところです。
先程もチラと述べましたが、この作品、いろんな不自然な演出やキャステングの問題も払拭させるほどに、俳優たちの演技がとにかくすばらしいです!
私は初めてDVDで観て、そう思いました。
冒頭の少女だった頃の主人公を演じている大後寿々花をはじめとした子役から、周辺の人物を演じているそれぞれの俳優まで、言語の壁を越えて感情移入できる説得力があります。

日本という意識をあえて脇に置いて、西洋人にとってのどこか異国の地を舞台にしたハリウッド映画ととらえれば、実力派の俳優たちを結集させた豪華な芸術映画として観ることができます。
やはり主演のチャン・ツィイーはもちろんのこと、コン・リーやミシェル・ヨーと、アジアの大物女優がそろっているわけですからね。
更にはその主要な人物を演じている役者たちに負けず劣らずの存在感を、日本の俳優たちも存分に発揮している作品でもあります。
渡辺謙、桃井かおり、工藤夕貴、役所広司と、日本人のキャストも申し分なく豪華で、もちろん演技も日本人らしい感情表現で、文句なしです。


何がスゴいって、そらもう台詞が英語なのに、しっかり日本人を見ている感覚があるんです!
ハリウッド映画だからといって決してハリウッド向きの見せ方といったワザとらしさはなく、台詞が英語だからといって日本らしさが損なわれるということもなく、自然にその人物を演じてのける姿に感服です。
それによって、主演のチャン・ツィイーや、その他主要な人物たちに引けを取らない──
むしろ、脇役でもこれくらいやってみせるぞと言わんばかりの余裕すら感じてしまうところに、この人たちは正に日本の誇りだなと改めて実感します。
☆着物で舞っても華麗なるチャン・ツィイー
『HERO』ではワイヤーアクションと剣術を見せ、『LOVERS』では遊郭の踊り子を演じていたチャン・ツィイー。
やはり彼女は武術や舞踏といったアクティブな演技で息を呑む華麗さを発揮する女優ですね。
そして私は特に彼女の横顔がステキだなと思います。

可愛らしさの中に、実はどことなく男性的な力強さも垣間見えると言えばイメージが伝わるでしょうか。
こういった部分は、よくいる日本の女性に対して使う“かわいい”とか“キレイ”とかとは違うのでしょう。
それにもかかわらず、本作で日本の芸者として着物を着ている姿はやはり、他の作品と変わらず、その“華麗さ”があるんですね!

『LOVERS』のときの踊り子の衣装だけでなく、日本の着物を着て踊ってもやはり秀逸な輝きを放っています。
先ほどのキャステングの話しでもふれましたが、日本の芸者を描いた映画としては、特に事情がなければ日本の女優を使っていても不思議ではなかったところでしょう。
もちろん、それならそれで良い作品ができていたと思われます。
しかし、こうして完成した作品を観た後では、もうこの主役はチャン・ツィイーじゃないとできないのではと思えてきます。
本当の意味でのリアルな日本の芸者とは少し違っていても、この作品においては彼女が造り出す芸者の姿ありきと言ってしまっても良いくらいです。
私自身、今になって初めて本作を観ましたが、ここまで納得いくとは思いませんでした。
そんなチャン・ツィイーをはじめとして、アジアの名女優たちを結集し、日本の実力ある俳優たちで脇を固め、日本の芸者という文化をハリウッド流に表現した前衛的な芸術として私たち日本人のほうがお墨を付けても良い映画なのではないでしょうか。

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