“死の瞬間”ナマで観たいですか? 自殺を生放送する番組を描いた映画『スーサイド・ライブ』
- 2018/03/24
- 22:28
なんか軽薄なサブカル感がするなと思いながら興味本意に飛び付いたこの映画。
そんな先入観に反してシリアスで、けっこう重量感あります!
『スーサイド・ライブ』(2017年 監督:ジャンカルロ・エスポジート 出演:ジョシュ・デュアメル、ジャンカルロ・エスポジート、ファムケ・ヤンセン、サラ・ウェイン・キャリーズ、ジェームズ・フランコ 他)


スーサイド・ライブ [DVD][→Amazon]
【あらすじ】──テレビ番組の生放送中に出演者が自殺する事件が発生。
番組の司会者アダム(ジョシュ・デュアメル)は罪悪感にさいなまれながら、放送局側の皆にも責任があると主張して周囲と対立する。
しかし事件が発生した日の番組が高視聴率を記録したことに味をしめたプロデューサーは、自殺を生放送する番組を企画。
初めは反対していたアダムであったが、自身が番組構成を担当するという条件で承諾する。
放送開始によって賛否が分かれながらも視聴者から好評を得る中、番組の内容は過激化していく。──

☆誰が見たい?!自殺者の断末魔
そもそもテレビ番組の生放送中に出演者が自殺するとなれば、それ自体がトンでもな放送事故ですが、それによって高視聴率を獲得するというのはあり得そうな話です。
しかしそれに味をしめて自殺者を生で映すような番組を作るという狂気。
アメリカだったらあり得るのかもしれません。
生で放送されるのはもちろん、スタジオでも一般人が傍観するんだから、見る側も正直狂ってますね。
番組のオーディションに集まる“自殺志願者”というのは様々な理由でお金が必要な人たちで、観衆の前での自らの死をもって募金を集めるという仕組みです。
それにしても、自殺といってもいろんな死に方がありますが、誰がいったいそんな現場を生で見たいのか?
溺死や感電死、車内でのガス自殺ならまだキレイなほうでしょう。
まさか拳銃で頭をぶち抜いたり、“ハラキリ”する様を見て拍手するんだからコワっ!
そんな法律スレスレの内容を映画にした斬新な作品ではあります。
こんな番組は日本であれば法律的に無理があるでしょうけど、他所の意見でもあったように、こういう映画を日本で作ったらおもしろそうではあります。
自殺をテーマにしているようで、実は一攫千金を狙うわけありな人たちを描いた作品だけに、藤原竜也主演の『カイジ──』のようなクズさ加減が表現できそうです。
★善意ある司会者の変貌ぶり
そんな自殺の現場を好奇の目で見届ける観衆や視聴者たちもそうですが、やはり一番狂ってるのは視聴率稼ぎのためにこんな番組を企画する者たちでしょう。
中でも最終的に壊れ始めるのは、はじめは自殺者を出してしまったことに罪の意識にさいなまれながら、誠意ある態度を見せていた主人公。

ジョシュ・デュアメル扮するテレビ司会者は、番組構成を自分が担当するという条件で企画を受け入れます。
彼なりの考え、主旨が反映された内容で番組はスタート。
しかし軌道に乗りはじめたところから、結局のところ観衆や視聴者を退屈させないように飽きさせないようにと必死になるあまりに、誰も止められない状態に。
そこから思わぬ方向へ向かう展開と結末は、最後まで観る価値ありです。
一躍スターに上りつめた者の転落ぶりは、ある種のオールドスクールなノリで楽しめる要素になっています。
ところで予断ですが、始めの方で主人公に事件当時のことを聞き出すニュースキャスターにも注目です。
好奇の満面な笑みで主人公と話すあの顔。

誰かと思ったらジェームズ・フランコではないですか!
今でも『スパイダーマン』のハリー役が私としては強い印象に残っていますが、彼のあの笑みはこちらではやはり、テレビという業界でどこか汚れてしまった狂人の笑みに映ります。
そう、だからこそなのか。
私たちが普段なにげなく目にしているテレビって、なんかやっぱりコワいなと思いますね。
まさかここまで不道徳な番組はあり得ないにしても、視聴者をあの手この手で振り向かせようとする不純さが見え隠れしていそうな世界です。
☆監督も務めるジャンカルロ・エスポジートの好演
この映画に重量感を持たせることに貢献しているのは、本作の監督も務めたジャンカルロ・エスポジート扮する黒人の清掃員。
家庭を持ちながら金銭的に苦しい状況に陥り、職業でも路頭に迷う男です。
貧しいながら誠実な心を持った彼の目線を通して、アメリカ社会の弱者への残酷さが表現されています。
始めはこの自殺を放送するリアリティ番組を嫌い、司会者に罵る場面がありますが、そんな彼もついに追いつめられ、禁断の手に魔が差します。
この男の役を演じる彼!
そもそも本業は俳優だけに、その演技が主役を凌ぐレベルです。
転落に向かう主人公を尻目にした活躍ぶりが作品を大いに盛り上げています。
監督というポジションに留まらずに、自ら重要な人物を演じてみせることで、作品で伝えたいメッセージをより強く観る者に訴えかけようとする情熱がうかがえます。
──ややもすればB級路線に持ってかれそうなテーマでありながら、実は豪華キャストでストーリーも真面目な本作。
さあ、あなたはこんな映画…いやいや、こんな番組を観たいですか?


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【おすすめ記事↓】
→ドッキリ番組に本物の殺人鬼が現れたら…豪州の変わり種再び! 『スケア・キャンペーン』
→【あなたはどう思う?!】ドイツ国民の本音が見える映画『帰ってきたヒトラー』
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そんな先入観に反してシリアスで、けっこう重量感あります!
『スーサイド・ライブ』(2017年 監督:ジャンカルロ・エスポジート 出演:ジョシュ・デュアメル、ジャンカルロ・エスポジート、ファムケ・ヤンセン、サラ・ウェイン・キャリーズ、ジェームズ・フランコ 他)

【あらすじ】──テレビ番組の生放送中に出演者が自殺する事件が発生。
番組の司会者アダム(ジョシュ・デュアメル)は罪悪感にさいなまれながら、放送局側の皆にも責任があると主張して周囲と対立する。
しかし事件が発生した日の番組が高視聴率を記録したことに味をしめたプロデューサーは、自殺を生放送する番組を企画。
初めは反対していたアダムであったが、自身が番組構成を担当するという条件で承諾する。
放送開始によって賛否が分かれながらも視聴者から好評を得る中、番組の内容は過激化していく。──

☆誰が見たい?!自殺者の断末魔
そもそもテレビ番組の生放送中に出演者が自殺するとなれば、それ自体がトンでもな放送事故ですが、それによって高視聴率を獲得するというのはあり得そうな話です。
しかしそれに味をしめて自殺者を生で映すような番組を作るという狂気。
アメリカだったらあり得るのかもしれません。
生で放送されるのはもちろん、スタジオでも一般人が傍観するんだから、見る側も正直狂ってますね。
番組のオーディションに集まる“自殺志願者”というのは様々な理由でお金が必要な人たちで、観衆の前での自らの死をもって募金を集めるという仕組みです。
それにしても、自殺といってもいろんな死に方がありますが、誰がいったいそんな現場を生で見たいのか?
溺死や感電死、車内でのガス自殺ならまだキレイなほうでしょう。
まさか拳銃で頭をぶち抜いたり、“ハラキリ”する様を見て拍手するんだからコワっ!
そんな法律スレスレの内容を映画にした斬新な作品ではあります。
こんな番組は日本であれば法律的に無理があるでしょうけど、他所の意見でもあったように、こういう映画を日本で作ったらおもしろそうではあります。
自殺をテーマにしているようで、実は一攫千金を狙うわけありな人たちを描いた作品だけに、藤原竜也主演の『カイジ──』のようなクズさ加減が表現できそうです。
★善意ある司会者の変貌ぶり
そんな自殺の現場を好奇の目で見届ける観衆や視聴者たちもそうですが、やはり一番狂ってるのは視聴率稼ぎのためにこんな番組を企画する者たちでしょう。
中でも最終的に壊れ始めるのは、はじめは自殺者を出してしまったことに罪の意識にさいなまれながら、誠意ある態度を見せていた主人公。

ジョシュ・デュアメル扮するテレビ司会者は、番組構成を自分が担当するという条件で企画を受け入れます。
彼なりの考え、主旨が反映された内容で番組はスタート。
しかし軌道に乗りはじめたところから、結局のところ観衆や視聴者を退屈させないように飽きさせないようにと必死になるあまりに、誰も止められない状態に。
そこから思わぬ方向へ向かう展開と結末は、最後まで観る価値ありです。
一躍スターに上りつめた者の転落ぶりは、ある種のオールドスクールなノリで楽しめる要素になっています。
ところで予断ですが、始めの方で主人公に事件当時のことを聞き出すニュースキャスターにも注目です。
好奇の満面な笑みで主人公と話すあの顔。

誰かと思ったらジェームズ・フランコではないですか!
今でも『スパイダーマン』のハリー役が私としては強い印象に残っていますが、彼のあの笑みはこちらではやはり、テレビという業界でどこか汚れてしまった狂人の笑みに映ります。
そう、だからこそなのか。
私たちが普段なにげなく目にしているテレビって、なんかやっぱりコワいなと思いますね。
まさかここまで不道徳な番組はあり得ないにしても、視聴者をあの手この手で振り向かせようとする不純さが見え隠れしていそうな世界です。
☆監督も務めるジャンカルロ・エスポジートの好演
この映画に重量感を持たせることに貢献しているのは、本作の監督も務めたジャンカルロ・エスポジート扮する黒人の清掃員。
家庭を持ちながら金銭的に苦しい状況に陥り、職業でも路頭に迷う男です。
貧しいながら誠実な心を持った彼の目線を通して、アメリカ社会の弱者への残酷さが表現されています。
始めはこの自殺を放送するリアリティ番組を嫌い、司会者に罵る場面がありますが、そんな彼もついに追いつめられ、禁断の手に魔が差します。
この男の役を演じる彼!
そもそも本業は俳優だけに、その演技が主役を凌ぐレベルです。
転落に向かう主人公を尻目にした活躍ぶりが作品を大いに盛り上げています。
監督というポジションに留まらずに、自ら重要な人物を演じてみせることで、作品で伝えたいメッセージをより強く観る者に訴えかけようとする情熱がうかがえます。
──ややもすればB級路線に持ってかれそうなテーマでありながら、実は豪華キャストでストーリーも真面目な本作。
さあ、あなたはこんな映画…いやいや、こんな番組を観たいですか?

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