人形みたいなペ・ドゥナが人間みたいな人形を演じた大人のファンタジー『空気人形』
- 2018/08/05
- 21:58
始まりはまず、韓国映画『トンネル 闇に鎖された男』を観て、ペ・ドゥナに魅せられたこと。
かわいい女優さんだなと思いながら観ていたのですが、その後にこれまたかなり前の韓国映画『グエムル ―漢江の怪物―』を初めて観ていたら、そこにあのペ・ドゥナさんが出ているではありませんか。
そして観ているうちにやっとこさピンときてしまったんですね。
そうだ!『クラウド アトラス』に出演していたあの女優さんだ!
そんなことを以前のブログで述べてから、久しぶりに『クラウド アトラス』を観たわけですが、やはりややこしい内容に未だについていけないですね!
とはいえ、ペ・ドゥナの魅力にはまった私は、彼女が出演しているこちらの日本映画のことを知って観ました。
『空気人形』(2009年 監督:是枝裕和 出演:ペ・ドゥナ、板尾創路、ARATA、岩松了、柄本佑、オダギリジョー 他)


空気人形 [Blu-ray][→Amazon]
【あらすじ】──ラブドールに「のぞみ」と名付けて暮らしている秀雄(板尾創路)。
そのラブドールがある日、心を持つようになり、外を出歩くようになる。
レンタルビデオ店にやって来たラブドール(ペ・ドゥナ)は、店員の純一(ARATA)を好きになり、そこでアルバイトを始める。
彼女は純一との出会いに幸福を感じながらも、自分が性処理の代用品でしかないことに空虚さを感じ始める。──

☆CGかと思うほどに綺麗なペ・ドゥナ
かわいいだけでなく、モデル体型なペ・ドゥナは、全くもってこの人形の役にピッタリです。
もしかしたら本当にCGによる処理があるのかもしれませんが、心を持ったラブドールを演じるペ・ドゥナの大胆な裸体が、なんとも美しすぎます!
その美しさゆえに、エロティシズムの中にもピュアな気持ちにさせられる不思議な感覚があります。
そして、そもそも性処理の道具に過ぎないはずのラブドールが心を持って動き出した途端に、なんでこんなにも澄んだ姿に映るのか。
これはやはり、ペ・ドゥナの演技で見せるあまりに無邪気な表情によるところが大きいでしょう!
そんなラブドールの視点で、板尾創路が演じる人物の下劣さが霞んでくるほどにファンタジックな世界ができあがってしまっています。
本作では人形を演じ、『クラウド アトラス』ではクローン人間を演じていたペ・ドゥナは、たぶんこの勢いでSF映画に登場するアンドロイドを演じても、しっかりハマる女優ですね!
日本映画でもハリウッド映画でもこういう異質な役を演じきるペ・ドゥナにはホント、実力と共に愛しさを感じます。
★正直ヘンタイだけどスゴいぞ、板尾創路の役!
板尾創路が演じている秀雄という男はなんとも見ていて哀れな人物像です。
人形を恋人のように見立て、話しかけたりベッドで性行為の相手にしたり。

普通に考えれば悪趣味なヘンタイなんですが…。
そんな孤独で哀しげな人物像を演技の中で惜しげもなく表現する板尾創路もまた実力派の俳優です。
実際、この秀雄という男の存在を中心に、様々な人たちの空虚な姿を見せることで、心を持った人形が目の当たりにする世界の設定が完成しているんです!


そんな人間模様を見ていると、どこかしら共感が持てたりする部分が私たちにもあるのではないでしょうか。
で、なんかやっぱりこのヘンタイな人物を演じさせたら板尾創路って良い意味ですばらしい存在感を発揮しますね。
内容は観たことないですが、『月光ノ仮面』『板尾創路の脱獄王』と、自ら監督や脚本に携わっている映画作品もあって、もはやお笑い芸人より映画人としてのイメージが強くなってきている気がします。
決してお笑い芸人が単に下劣な役を演じているだけというものではなく、映画における表現者として、ヘンタイな人物も芸術に昇華させて演じている様が、本作『空気人形』で感じられるのもうなずけます。
☆詩的な魅力を帯びるオダギリジョーの登場
人の心の薄汚い部分や虚しさを背景にしつつも、ファンタジックな本作。
物語の中盤で、オダギリジョーが演じる人形師の登場で作品はいよいよ詩的な魅力を帯びてきます。

ラブドールってまさかこんな人が作ってるの!
って、いやいやこれは映画の世界だからできる描写なのでしょう。
現実にラブドールやらその他のジョークグッズやらをマジメに製造している会社ってどんなだろうと、ある意味で興味はありますが…
少なくともここに登場する"人形師"はこれまた卑猥な玩具を作ってるイメージとは程遠いです。
ここは正直、ラブドールをファンタジックに描きすぎです!
まるでジブリの世界ではないか!
オダギリジョーが演じるこの人形師の登場する時間は短いです。
しかし、人形がこうして自分を作ったその職人と出会うシーンの穏やかな雰囲気は、観ているこちらも救われたような気持ちにさせられます。
美しくも切ない、それでいて物語を加速させていく重要なシーンです。
★現実世界をテーマにしたシュールなサブカル感
冒頭から映るなんてことない街の景色。
そんな街を舞台に繰り広げられる、心を持った人形が動き出すという内容にまず、惹きつけられるものがあります。

ただそれだけでなく、その人形というのがラブドールであること、それがメイド服姿であるというところに、良い感じのサブカル感があります。
エンドクレジットの中にはラブドールの提供・協力にオリエント工業の名がありますが、この映画は性処理用器具を使った大人のファンタジーと言ったところでしょうか。

とにかくそんな独創的な発想が、メジャーな作品ではなかなか見られないものですね!
そしてこのサブカル感、やはり漫画が原作なんですね!
私は漫画を読まないので、原作者の業田良家さんのことはよく知りません。
しかし『海街diary』『三度目の殺人』『万引き家族』といった作品を手掛けた是枝裕和監督による本作での映像化は、少なくとも原作漫画を知らない私には見事なアート作品として観ることができます。


空気人形[→Prime Video]
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かわいい女優さんだなと思いながら観ていたのですが、その後にこれまたかなり前の韓国映画『グエムル ―漢江の怪物―』を初めて観ていたら、そこにあのペ・ドゥナさんが出ているではありませんか。
そして観ているうちにやっとこさピンときてしまったんですね。
そうだ!『クラウド アトラス』に出演していたあの女優さんだ!
そんなことを以前のブログで述べてから、久しぶりに『クラウド アトラス』を観たわけですが、やはりややこしい内容に未だについていけないですね!
とはいえ、ペ・ドゥナの魅力にはまった私は、彼女が出演しているこちらの日本映画のことを知って観ました。
『空気人形』(2009年 監督:是枝裕和 出演:ペ・ドゥナ、板尾創路、ARATA、岩松了、柄本佑、オダギリジョー 他)

【あらすじ】──ラブドールに「のぞみ」と名付けて暮らしている秀雄(板尾創路)。
そのラブドールがある日、心を持つようになり、外を出歩くようになる。
レンタルビデオ店にやって来たラブドール(ペ・ドゥナ)は、店員の純一(ARATA)を好きになり、そこでアルバイトを始める。
彼女は純一との出会いに幸福を感じながらも、自分が性処理の代用品でしかないことに空虚さを感じ始める。──

☆CGかと思うほどに綺麗なペ・ドゥナ
かわいいだけでなく、モデル体型なペ・ドゥナは、全くもってこの人形の役にピッタリです。
もしかしたら本当にCGによる処理があるのかもしれませんが、心を持ったラブドールを演じるペ・ドゥナの大胆な裸体が、なんとも美しすぎます!
その美しさゆえに、エロティシズムの中にもピュアな気持ちにさせられる不思議な感覚があります。
そして、そもそも性処理の道具に過ぎないはずのラブドールが心を持って動き出した途端に、なんでこんなにも澄んだ姿に映るのか。
これはやはり、ペ・ドゥナの演技で見せるあまりに無邪気な表情によるところが大きいでしょう!
そんなラブドールの視点で、板尾創路が演じる人物の下劣さが霞んでくるほどにファンタジックな世界ができあがってしまっています。
本作では人形を演じ、『クラウド アトラス』ではクローン人間を演じていたペ・ドゥナは、たぶんこの勢いでSF映画に登場するアンドロイドを演じても、しっかりハマる女優ですね!
日本映画でもハリウッド映画でもこういう異質な役を演じきるペ・ドゥナにはホント、実力と共に愛しさを感じます。
★正直ヘンタイだけどスゴいぞ、板尾創路の役!
板尾創路が演じている秀雄という男はなんとも見ていて哀れな人物像です。
人形を恋人のように見立て、話しかけたりベッドで性行為の相手にしたり。

普通に考えれば悪趣味なヘンタイなんですが…。
そんな孤独で哀しげな人物像を演技の中で惜しげもなく表現する板尾創路もまた実力派の俳優です。
実際、この秀雄という男の存在を中心に、様々な人たちの空虚な姿を見せることで、心を持った人形が目の当たりにする世界の設定が完成しているんです!


そんな人間模様を見ていると、どこかしら共感が持てたりする部分が私たちにもあるのではないでしょうか。
で、なんかやっぱりこのヘンタイな人物を演じさせたら板尾創路って良い意味ですばらしい存在感を発揮しますね。
内容は観たことないですが、『月光ノ仮面』『板尾創路の脱獄王』と、自ら監督や脚本に携わっている映画作品もあって、もはやお笑い芸人より映画人としてのイメージが強くなってきている気がします。
決してお笑い芸人が単に下劣な役を演じているだけというものではなく、映画における表現者として、ヘンタイな人物も芸術に昇華させて演じている様が、本作『空気人形』で感じられるのもうなずけます。
☆詩的な魅力を帯びるオダギリジョーの登場
人の心の薄汚い部分や虚しさを背景にしつつも、ファンタジックな本作。
物語の中盤で、オダギリジョーが演じる人形師の登場で作品はいよいよ詩的な魅力を帯びてきます。

ラブドールってまさかこんな人が作ってるの!
って、いやいやこれは映画の世界だからできる描写なのでしょう。
現実にラブドールやらその他のジョークグッズやらをマジメに製造している会社ってどんなだろうと、ある意味で興味はありますが…
少なくともここに登場する"人形師"はこれまた卑猥な玩具を作ってるイメージとは程遠いです。
ここは正直、ラブドールをファンタジックに描きすぎです!
まるでジブリの世界ではないか!
オダギリジョーが演じるこの人形師の登場する時間は短いです。
しかし、人形がこうして自分を作ったその職人と出会うシーンの穏やかな雰囲気は、観ているこちらも救われたような気持ちにさせられます。
美しくも切ない、それでいて物語を加速させていく重要なシーンです。
★現実世界をテーマにしたシュールなサブカル感
冒頭から映るなんてことない街の景色。
そんな街を舞台に繰り広げられる、心を持った人形が動き出すという内容にまず、惹きつけられるものがあります。

ただそれだけでなく、その人形というのがラブドールであること、それがメイド服姿であるというところに、良い感じのサブカル感があります。
エンドクレジットの中にはラブドールの提供・協力にオリエント工業の名がありますが、この映画は性処理用器具を使った大人のファンタジーと言ったところでしょうか。

とにかくそんな独創的な発想が、メジャーな作品ではなかなか見られないものですね!
そしてこのサブカル感、やはり漫画が原作なんですね!
私は漫画を読まないので、原作者の業田良家さんのことはよく知りません。
しかし『海街diary』『三度目の殺人』『万引き家族』といった作品を手掛けた是枝裕和監督による本作での映像化は、少なくとも原作漫画を知らない私には見事なアート作品として観ることができます。

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