『貞子vs伽椰子』がやっぱりよくできたVSモノだと言いたい!
- 2018/08/28
- 02:29
世界よ…いやその前に日本よ!
これぞニッポンの2大ホラーキャラクターだと今さら言いたい!
わかってますよ!こういう発想自体はネタでしかないことは!
劇場公開前の予告を見た当時は何の悪い冗談だ?と私も思いました。
しかし、いざその完成品を観たときの素直におもしろいという感覚はやはり否定できないんですよね!
『貞子vs伽椰子』(2016年 監督・脚本:白石晃士 世界観監修:鈴木光司 出演:山本美月、佐津川愛美、玉城ティナ、安藤政信、菊地麻衣、甲本雅裕 他)


貞子 vs 伽椰子 プレミアム・エディション [Blu-ray][→Amazon]
【あらすじ】──女子大生の有里(山本美月)は、親友の夏美(佐津川愛美)から両親の結婚式のビデオテープをダビングしてほしいと頼まれる。
リサイクルショップで手に入れたビデオデッキでダビングしようとするが、その中には謎のビデオテープが入っていた。
有里の興味本位でビデオテープを再生させたことによって夏美はその映像を見てしまうが、それは貞子による呪いのビデオであることを二人は知る。
そしてビデオを再生させた自分の責任を感じた有里は夏美からビデオテープを受け取り、自らも映像を見て呪いにかかる。
一方、とある家に引っ越してきた高校生の鈴花(玉城ティナ)は、隣にある不気味な家が気になっていた。
そこはかつて伽椰子という女性が夫による無理心中で死んだことによる怨念で、「入ると必ず死ぬ」と言われる呪いの家だった。
鈴花は呼び寄せられるようにその家に入ってしまう。──


☆思えば感慨深い!日本映画界における2つのホラー代表キャラの存在
これまた今さら思うのですが、こうしてホラー映画の代名詞的キャラを2つも作り上げてきたという意味では日本映画界は偉大です。
まずは貞子さん──
1991年に出版された鈴木光司による小説が始まりで、こうして見るとかなり前ですね!
本作『貞子vs伽椰子』の世界観監修も務めた鈴木光司さんによる小説『リング』では、山村貞子は実は美人で半陰陽という設定です。
映画でも例えば『リング0 バースデイ』では仲間由紀恵が生前の貞子を演じていて、可憐な美少女という描写こそあったものの、小説と比べればかなりバケモノとして描かれています。
(半陰陽という設定も映画では使われていません。)
まあ映画で見る彼女はというといつも顔が髪で隠れているので、はっきりとその顔を見ることはないのですが…
少なくとも私は、貞子さんはきっと美人なんだと信じています。
そんな彼女は、今や怖い女の幽霊のイメージの雛型として、類似なキャラをいろいろなところで目にします。
とはいえ、長くて黒い髪の女性というのは昔から日本人が思い描いてきた"怖い幽霊"のイメージであって、その意味では貞子も昔ながらの幽霊に沿った描写とも言えます。
だからこそ素直に怖いと感じられるんでしょうね!
そこに──小説と映画で多少の違いはありますが──母親が超能力者であったこと、本人が母親以上の強い能力を持っていたこと、そしてその能力ゆえにバケモノとして扱われ殺害されたという悲壮な設定が、より印象深い人物像に仕立てあげています。
殺害されたときに落とされた井戸や、念写で作られた映像のビデオテープというのも併せてできあがったそのイメージは、小説あるいは初めの映画の公開から年月が経過した今も、根強いブランド力を持っています。
貞子より少しばかり後に、貞子と並んで見る者に強いインパクトを与えたのが佐伯さん家の伽椰子さん──
長くて黒い髪の毛は貞子と共通するのですが、こちらは顔がはっきり見える形での毎回の登場です。
そのはっきり覗かせる顔にも、どこか視点の合わない目付き、それでいてこちらの存在に気づいて這って追いかけてくる不気味さが秀逸です。
それに何よりも彼女のキャラのイメージを決定づけているのが、あのア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"という独特の声ですね!
『呪怨』という作品をまずはVシネとして制作した清水崇監督は子どものときに、よくふざけてこの声を出していたそうで(そういえば同じことやってるヤツが身近にいたかも!)、いつかこれを映画で使ってやろうと思っていたそうです。
そんな清水監督の少年のような発想も合わさってできた伽椰子というホラーキャラクターが登場する『呪怨』シリーズも、始めのビデオ作品から劇場版に発展し、『リング』シリーズと同じくハリウッドリメイクまでされた経緯がまさしく栄光の軌跡と言えるでしょう。
──こうしてどちらも黒い長い髪であるという共通点(つまりは日本人が昔から描いてきた怖い幽霊のイメージ)がありながら、怖がらせ方のスタンスが違う2つのキャラクターが、今もこうして映画界で定着している様は、興味深く感慨深いですね!
アメリカのホラー映画の世界にはジェイソンやフレディ、ブギーマンやレザーフェイスといった有名な殺人鬼がいるように、こうして日本のホラー映画界にもその土地柄らしく幽霊という路線で定番キャラクターがいるというのは喜ばしいことです。
★白石晃士監督による独自の設定は正解!
本作で脚本と監督を務めた白石晃士さんは、アメリカのホラー映画が好きで普段はあまり日本のホラーを観ないとのこと。
本作の制作にあたり『リング』シリーズや『呪怨』シリーズを観たそうで、それゆえに本作は"白石晃士さん流"の世界にできあがっているでしょう。
まず、貞子にしても伽椰子にしても、キャラクターの細かい設定や背景を劇中でいちいち語る場面はありません。
基本的には貞子は呪いのビデオを観ることで現れるバケモノ、伽椰子は無理心中で死んだ一家の呪われた家に住むバケモノという、あくまで大雑把な示しがある程度です。
やはりVSモノとして表現するには、これが適しています。
すでに過去作品を知っている人ならともかく、それまで『リング』シリーズや『呪怨』シリーズを観たことない人がいきなり本作を観ると、ちょっと情報不足かもしれません。
しかし、だからといってあまり踏み込んだ情報を入れすぎれば、VSモノとしての爽快感が損なわれていたことでしょう。
とりあえず名の知れた、しかもどんな見た目でどんな振る舞いをするキャラクターであるのかがザックリと知れたキャラクターがぶつかり合うというだけで十分ネタとして成り立つわけなんですね!
貞子や伽椰子についてあまりよく知らない人にも問題なく入り込め、よく知ってる人にも今さら必要ない情報は省いて、むしろ新鮮な目線でこの2つのキャラクターを見られるようにしたことが成功と言えます。
そして呪いのビデオを見てから呪い殺されるまでの期間を7日間ではなく2日間にしたことは本作独自の変更点です。
これもやはり物語のスピード感を損なわない配慮と言えるのではないでしょうか。
劇中、甲本雅裕が演じる大学教授がビデオテープの都市伝説を語る際の、「見た者は2日後に死ぬ」という説明で私は早っ!とつっこみたくなりましたけどね…。
しかしオリジナルにあった7日間という設定は、その作品がミステリーとしての要素もあったからこそ成り立つもので、呪いにかかった主人公たちが助かるために奔走しつつ、貞子という人物の謎が解き明かされる過程が軸となっているからこそ必要な時間です。
白石監督による"2日間"という設定変更は、VSモノとして格好よく見せるための大胆ながら見事なデフォルメとなっています。
☆不自然なく見られる!バケモノどうしの衝突への流れ
そもそも「VS」と題して、あるキャラクターどうしを対決させるという発想自体がネタな感じがします。

ハリウッド映画にはホラー作品やマーヴェルヒーロー、エイリアンとあれこれ見かけますが、なんでしょう…
日本映画ともなれば特に、本来は世界を共有していない作品のキャラクターを対決させるとなると、なおさらネタに感じます。
そして本作もやはりその発想自体はネタなんでしょう。
しかしその中でもよくできてるなと思わせられる要素として、貞子と伽椰子を対決に持っていかせるまでの流れがあります。
わざわざ対決させる理由が成り立っている………いや、それは当たり前です!
本当に何がよくできているかというと──
貞子と伽椰子の登場する比率のバランス!
これが絶妙なんです。
まず、伽椰子には俊雄くんがいましたよね。
本作でも登場するのですが、これでは厳密に言えば1対2になってしまいます。
しかし最初から全体的に貞子の登場シーンを多めに取り、話しの軸を貞子に持っていくことによって、しっかり筋道の通ったストーリーになっています。


だからといって伽椰子が完全に脇役になっているわけではなく、むしろ遅れての登場が観ているこちらをワクワクさせてくれます。

主軸となっている貞子と、後のお楽しみなポジションの伽椰子。
それぞれ違うスタンスでスターとして扱われているところが演出としてウマいです!
ちなみにこれによって、伽椰子の登場が比較的後半になってからで、俊雄くんの方が早くから登場するわけなんですが──
結果としてこの流れに関しては過去の『呪怨』シリーズのパターンになっていて、なんとも違和感なく観てしまうのもおもしろいところです!
白石監督の中では、まさかこれも計算の内だったのか?
『リング』シリーズと『呪怨』シリーズに始めから詳しくなかったにしては、やってくれるな!──なんて私一人でほくそ笑んでしまってます。
それはさておき、ちゃんと"意味ある対決をさせる作品"としてネタの領域に留まらないクオリティになっているので、多少のツッコミどころがあったとしても許せてしまいます。
もうこれは単純に脚本からして完成度が高いということですよね。
しかもこれがエイプリルフールのジョークから始まった企画だったとは!
──さて、この『貞子vs伽椰子』がVSモノのネタ映画としてはスゴくよくできているということを語りましたが、本作は出演俳優も私は好きです。
お姉さんっぽい美人の山本美月、透き通るような美少女の玉城ティナがそれぞれホラー映画というジャンルの中で冴え渡っています。


佐津川愛美もかわいいのですが、彼女はそれに加えてやや汚れ役でもあります。
呪われて白目を向ける演技は、山本美月や玉城ティナではダメだったのか?
という疑問はありますが、佐津川愛美の他の作品をあげてみても、『ヒメアノ~ル』や『ユリゴコロ』と、彼女はへヴィな難役を演じきる女優だけに本作でもその実力が発揮されています。
この作品をこうして改めて観ておっ!となったのは、霊能者・常盤経蔵を演じている安藤政信ですね!

ちょうど前回ブログで取りあげた『ギミー・ヘブン』を観て、いい俳優さんだなと思っていました。
本作の、ハンバーガー食べながら荒っぽい登場をする霊能者の彼も見ていて楽しいです!
そんな『貞子vs伽椰子』は、『リング』シリーズや『呪怨』シリーズの映像ソフトを持っている人ならコレクションに加える価値が十分にある作品なのではないでしょうか。
それぞれのオリジナルにあったシリアス路線とはかけ離れますが、"ネタ"としてコレクションに加えておくのはアリかもしれません。


貞子vs伽椰子[→Prime Video]


映画「貞子vs伽椰子」特別映像[→Prime Video]
【こちらの記事もどうぞ↓】
→ホラー映画でもナニかとやっちゃうVSモノ! 『口裂け女vsカシマさん』
→ホラー映画でマタもややっちゃうVSモノ! 『口裂け女vsメリーさん』
→『ザ・リング/リバース』──新しさはないが…
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これぞニッポンの2大ホラーキャラクターだと今さら言いたい!
わかってますよ!こういう発想自体はネタでしかないことは!
劇場公開前の予告を見た当時は何の悪い冗談だ?と私も思いました。
しかし、いざその完成品を観たときの素直におもしろいという感覚はやはり否定できないんですよね!
『貞子vs伽椰子』(2016年 監督・脚本:白石晃士 世界観監修:鈴木光司 出演:山本美月、佐津川愛美、玉城ティナ、安藤政信、菊地麻衣、甲本雅裕 他)

【あらすじ】──女子大生の有里(山本美月)は、親友の夏美(佐津川愛美)から両親の結婚式のビデオテープをダビングしてほしいと頼まれる。
リサイクルショップで手に入れたビデオデッキでダビングしようとするが、その中には謎のビデオテープが入っていた。
有里の興味本位でビデオテープを再生させたことによって夏美はその映像を見てしまうが、それは貞子による呪いのビデオであることを二人は知る。
そしてビデオを再生させた自分の責任を感じた有里は夏美からビデオテープを受け取り、自らも映像を見て呪いにかかる。
一方、とある家に引っ越してきた高校生の鈴花(玉城ティナ)は、隣にある不気味な家が気になっていた。
そこはかつて伽椰子という女性が夫による無理心中で死んだことによる怨念で、「入ると必ず死ぬ」と言われる呪いの家だった。
鈴花は呼び寄せられるようにその家に入ってしまう。──


☆思えば感慨深い!日本映画界における2つのホラー代表キャラの存在
これまた今さら思うのですが、こうしてホラー映画の代名詞的キャラを2つも作り上げてきたという意味では日本映画界は偉大です。
まずは貞子さん──
1991年に出版された鈴木光司による小説が始まりで、こうして見るとかなり前ですね!
本作『貞子vs伽椰子』の世界観監修も務めた鈴木光司さんによる小説『リング』では、山村貞子は実は美人で半陰陽という設定です。
映画でも例えば『リング0 バースデイ』では仲間由紀恵が生前の貞子を演じていて、可憐な美少女という描写こそあったものの、小説と比べればかなりバケモノとして描かれています。
(半陰陽という設定も映画では使われていません。)
まあ映画で見る彼女はというといつも顔が髪で隠れているので、はっきりとその顔を見ることはないのですが…
少なくとも私は、貞子さんはきっと美人なんだと信じています。
そんな彼女は、今や怖い女の幽霊のイメージの雛型として、類似なキャラをいろいろなところで目にします。
とはいえ、長くて黒い髪の女性というのは昔から日本人が思い描いてきた"怖い幽霊"のイメージであって、その意味では貞子も昔ながらの幽霊に沿った描写とも言えます。
だからこそ素直に怖いと感じられるんでしょうね!
そこに──小説と映画で多少の違いはありますが──母親が超能力者であったこと、本人が母親以上の強い能力を持っていたこと、そしてその能力ゆえにバケモノとして扱われ殺害されたという悲壮な設定が、より印象深い人物像に仕立てあげています。
殺害されたときに落とされた井戸や、念写で作られた映像のビデオテープというのも併せてできあがったそのイメージは、小説あるいは初めの映画の公開から年月が経過した今も、根強いブランド力を持っています。
貞子より少しばかり後に、貞子と並んで見る者に強いインパクトを与えたのが佐伯さん家の伽椰子さん──
長くて黒い髪の毛は貞子と共通するのですが、こちらは顔がはっきり見える形での毎回の登場です。
そのはっきり覗かせる顔にも、どこか視点の合わない目付き、それでいてこちらの存在に気づいて這って追いかけてくる不気味さが秀逸です。
それに何よりも彼女のキャラのイメージを決定づけているのが、あのア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"という独特の声ですね!
『呪怨』という作品をまずはVシネとして制作した清水崇監督は子どものときに、よくふざけてこの声を出していたそうで(そういえば同じことやってるヤツが身近にいたかも!)、いつかこれを映画で使ってやろうと思っていたそうです。
そんな清水監督の少年のような発想も合わさってできた伽椰子というホラーキャラクターが登場する『呪怨』シリーズも、始めのビデオ作品から劇場版に発展し、『リング』シリーズと同じくハリウッドリメイクまでされた経緯がまさしく栄光の軌跡と言えるでしょう。
──こうしてどちらも黒い長い髪であるという共通点(つまりは日本人が昔から描いてきた怖い幽霊のイメージ)がありながら、怖がらせ方のスタンスが違う2つのキャラクターが、今もこうして映画界で定着している様は、興味深く感慨深いですね!
アメリカのホラー映画の世界にはジェイソンやフレディ、ブギーマンやレザーフェイスといった有名な殺人鬼がいるように、こうして日本のホラー映画界にもその土地柄らしく幽霊という路線で定番キャラクターがいるというのは喜ばしいことです。
★白石晃士監督による独自の設定は正解!
本作で脚本と監督を務めた白石晃士さんは、アメリカのホラー映画が好きで普段はあまり日本のホラーを観ないとのこと。
本作の制作にあたり『リング』シリーズや『呪怨』シリーズを観たそうで、それゆえに本作は"白石晃士さん流"の世界にできあがっているでしょう。
まず、貞子にしても伽椰子にしても、キャラクターの細かい設定や背景を劇中でいちいち語る場面はありません。
基本的には貞子は呪いのビデオを観ることで現れるバケモノ、伽椰子は無理心中で死んだ一家の呪われた家に住むバケモノという、あくまで大雑把な示しがある程度です。
やはりVSモノとして表現するには、これが適しています。
すでに過去作品を知っている人ならともかく、それまで『リング』シリーズや『呪怨』シリーズを観たことない人がいきなり本作を観ると、ちょっと情報不足かもしれません。
しかし、だからといってあまり踏み込んだ情報を入れすぎれば、VSモノとしての爽快感が損なわれていたことでしょう。
とりあえず名の知れた、しかもどんな見た目でどんな振る舞いをするキャラクターであるのかがザックリと知れたキャラクターがぶつかり合うというだけで十分ネタとして成り立つわけなんですね!
貞子や伽椰子についてあまりよく知らない人にも問題なく入り込め、よく知ってる人にも今さら必要ない情報は省いて、むしろ新鮮な目線でこの2つのキャラクターを見られるようにしたことが成功と言えます。
そして呪いのビデオを見てから呪い殺されるまでの期間を7日間ではなく2日間にしたことは本作独自の変更点です。
これもやはり物語のスピード感を損なわない配慮と言えるのではないでしょうか。
劇中、甲本雅裕が演じる大学教授がビデオテープの都市伝説を語る際の、「見た者は2日後に死ぬ」という説明で私は早っ!とつっこみたくなりましたけどね…。
しかしオリジナルにあった7日間という設定は、その作品がミステリーとしての要素もあったからこそ成り立つもので、呪いにかかった主人公たちが助かるために奔走しつつ、貞子という人物の謎が解き明かされる過程が軸となっているからこそ必要な時間です。
白石監督による"2日間"という設定変更は、VSモノとして格好よく見せるための大胆ながら見事なデフォルメとなっています。
☆不自然なく見られる!バケモノどうしの衝突への流れ
そもそも「VS」と題して、あるキャラクターどうしを対決させるという発想自体がネタな感じがします。

ハリウッド映画にはホラー作品やマーヴェルヒーロー、エイリアンとあれこれ見かけますが、なんでしょう…
日本映画ともなれば特に、本来は世界を共有していない作品のキャラクターを対決させるとなると、なおさらネタに感じます。
そして本作もやはりその発想自体はネタなんでしょう。
しかしその中でもよくできてるなと思わせられる要素として、貞子と伽椰子を対決に持っていかせるまでの流れがあります。
わざわざ対決させる理由が成り立っている………いや、それは当たり前です!
本当に何がよくできているかというと──
貞子と伽椰子の登場する比率のバランス!
これが絶妙なんです。
まず、伽椰子には俊雄くんがいましたよね。
本作でも登場するのですが、これでは厳密に言えば1対2になってしまいます。
しかし最初から全体的に貞子の登場シーンを多めに取り、話しの軸を貞子に持っていくことによって、しっかり筋道の通ったストーリーになっています。


だからといって伽椰子が完全に脇役になっているわけではなく、むしろ遅れての登場が観ているこちらをワクワクさせてくれます。

主軸となっている貞子と、後のお楽しみなポジションの伽椰子。
それぞれ違うスタンスでスターとして扱われているところが演出としてウマいです!
ちなみにこれによって、伽椰子の登場が比較的後半になってからで、俊雄くんの方が早くから登場するわけなんですが──
結果としてこの流れに関しては過去の『呪怨』シリーズのパターンになっていて、なんとも違和感なく観てしまうのもおもしろいところです!
白石監督の中では、まさかこれも計算の内だったのか?
『リング』シリーズと『呪怨』シリーズに始めから詳しくなかったにしては、やってくれるな!──なんて私一人でほくそ笑んでしまってます。
それはさておき、ちゃんと"意味ある対決をさせる作品"としてネタの領域に留まらないクオリティになっているので、多少のツッコミどころがあったとしても許せてしまいます。
もうこれは単純に脚本からして完成度が高いということですよね。
しかもこれがエイプリルフールのジョークから始まった企画だったとは!
──さて、この『貞子vs伽椰子』がVSモノのネタ映画としてはスゴくよくできているということを語りましたが、本作は出演俳優も私は好きです。
お姉さんっぽい美人の山本美月、透き通るような美少女の玉城ティナがそれぞれホラー映画というジャンルの中で冴え渡っています。


佐津川愛美もかわいいのですが、彼女はそれに加えてやや汚れ役でもあります。
呪われて白目を向ける演技は、山本美月や玉城ティナではダメだったのか?
という疑問はありますが、佐津川愛美の他の作品をあげてみても、『ヒメアノ~ル』や『ユリゴコロ』と、彼女はへヴィな難役を演じきる女優だけに本作でもその実力が発揮されています。
この作品をこうして改めて観ておっ!となったのは、霊能者・常盤経蔵を演じている安藤政信ですね!

ちょうど前回ブログで取りあげた『ギミー・ヘブン』を観て、いい俳優さんだなと思っていました。
本作の、ハンバーガー食べながら荒っぽい登場をする霊能者の彼も見ていて楽しいです!
そんな『貞子vs伽椰子』は、『リング』シリーズや『呪怨』シリーズの映像ソフトを持っている人ならコレクションに加える価値が十分にある作品なのではないでしょうか。
それぞれのオリジナルにあったシリアス路線とはかけ離れますが、"ネタ"としてコレクションに加えておくのはアリかもしれません。


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