エイリアンSFの隠れた名作『スカイライン ─征服─』&『スカイライン ─奪還─』
とあるメジャーなSF映画が話題になった後に、ひっそりとB級な同ジャンルの作品がチラホラ目にすることはよくあります。
特にエイリアンSFは、そういうB級映画でよく目にするジャンルです。
そして今回のブログであげる作品はというと、そらローランド・エメリッヒ監督の『インデペンデンス・デイ』やスティーブン・スピルバーグ監督の『宇宙戦争』みたいな大作ではありませんが、その中でもかなりクオリティの高い作品です。
『スカイライン ─征服─』(2010年 監督:グレッグ・ストラウス、コリン・ストラウス 出演:エリック・バルフォー、スコッティ・トンプソン、ドナルド・フェイソン、デイヴィッド・ザヤス、ニール・ホプキンス 他)


スカイラインー征服ー Blu-ray[→Amazon]
【あらすじ】──ジャロッド(エリック・バルフォー)と彼の恋人エレイン(スコッティ・トンプソン)は、親友のテリー(ドナルド・フェイソン)の誕生日パーティーのためにロサンゼルスに来ていた。
仲間たちはテリーの高級マンションで一夜を過ごしていたが、外から謎の青白い光が差し込まれ、仲間の一人レイ(ニール・ホプキンス)が吸い込まれる。
ジャロッドも危うくその光に吸い込まれかけるが、エレインに助けられる。
街は大量の未確認飛行物体が飛来し、人々が次々と吸い上げられる。
ジャロッドらは管理人のオリヴァー(デイヴィッド・ザヤス)と共にマンションの中に身を隠していたが、外の様子をうかがいながら脱出を試みる。──


☆ちょっと変わってる!脳を奪って体はエイリアンが用意
なんか意味わからない小見出しになってしまったかもしれません。
未知の生命体が人間の体を乗っ取るという映画はよくありますよね。
しかし本作で興味深いのは、エイリアンが地球人の頭をガッチリつかんで頭蓋から脳を取り出して吸い込むシーンがあります。
そしてその脳はエイリアンの宇宙船らしき巨大な飛行物体に集められ、向こうが持っている、地球人よりひとまわり大きな体の頭部に入れられます。
そうして地球人から奪った脳が、エイリアンの用意した体を操作する"意思"となるんです。
それがホント、変わった発想です。
これはつまり脳を奪われた人間はそこで殺されたわけではなく、エイリアンの体をもらって生きているということになります。
しかも、少なくともジャロッドの場合は人間だったときの意思をそのまま持つのでオイ!これって地球人を征服していることになっているのか?
と、疑問に思います。
エイリアンたちが自分たちの体を操作するための動力源のような物を必要としているのはわかりますが…
そういう疑問もさることながら、乱暴に頭をつかんで頭蓋を引き裂いているのに、脳だけは傷つけずにキレイにとるんだなあ、と感心させられます。
見事に脊髄ごと引っこ抜いてくれます。
おかげであまり残虐に見えないんですよ!
傷ひとつつけないと言っても、もちろん数分も酸素が行き渡らなければ脳は死にますから、吸い込んだその先で酸素を供給する器官が備わっているのかと想像してしまいます(そこまでは描写されていませんが…)。
さあ、あなたは自分自身の脳はそのままに、体はエイリアンになってみたいでしょうか?
★爽快な音楽とストラウス兄弟によるスタイリッシュな映像
本作は低予算ながら、まず冒頭からの街の映像美と、所々使われている音楽が良いです。
ロサンゼルスの街並みを見下ろすシーンに、爽やかなロックミュージックという組み合わせ。

少しばかり80年代の映画を思わせますね!
だからといって古臭いわけではなく、エイリアンや飛行物体の1つひとつがこれまた斬新で美しさを感じる造形です。
それらを大作SFになんら引けを取らないクオリティのVFXで描いているところに感心させられます。
映像美が映像美がと、もはや今のハリウッドSF映画としてはありきたりな評価ポイントではありますが、やはり観る前の決してメジャーじゃない低予算映画という先入観からのこのクオリティは、そうお目にかかれないでしょう。

ハイドラックスというVFX制作会社が自ら本作を製作したとのことですが、その制作会社の設立者は本作の監督を務めたストラウス兄弟なんですね。
VFXはもちろんのこと、作品そのものを自分たちの設立した会社で製作し、監督もやるというすばらしきDIY!
もちろん他に大物のスタッフも携わっていますし、ハイドラックス自体はその他有名な大作映画のVFXを数多く手掛けていますが(『アバター』『アベンジャーズ』『X-MEN』シリーズなど)、
──兄弟の好きな世界をこうして自ら映像化するところに夢があります。
『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟(じゃなくて今は姉妹)を彷彿とさせる話です。
そんな兄弟による製作・監督の、SFが好きな人なら目を輝かせて観てしまうこの作品は本国アメリカでは大ヒットしたのですが、日本でももっとこんな映画が盛り上がればいいのになと思います。
☆アクション要素を増した続編『──奪還』
この『スカイライン ─征服─』より7年の時を経て公開された『スカイライン ─奪還─』は、前作よりアクション要素や個性豊かなエイリアンたちの描写に力が入った、これまた良質な続編になっています。
『スカイライン ─奪還─』(2017年 監督:リアム・オドネル 出演:フランク・グリロ、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ、イコ・ウワイス、ジョニー・ウェストン、ヤヤン・ルヒアン 他)


スカイライン-奪還- [Blu-ray][→Amazon]
【あらすじ】──突如現れた謎の生命体により、3日間で征服された地球。
ロサンゼルス市警のマーク(フランク・グリロ)は息子のトレント(ジョニー・ウェストン)と共に宇宙船に吸い込まれる。
マークはそこで、エイリアンの体になったジャロッドと出逢い、ジャロッドの娘を守る約束で彼の協力を得る。
破壊した宇宙船はラオスに墜落し、脱出先でマークはスア(イコ・ウワイス)が率いる反政府組織と手を組む。
地球奪還のために彼らはエイリアンに立ち向かう。──


もう今さら言うまでもなく、何かと映画の続編というのはかなりの確率で前作よりつまらないことが多いですよね。
SF映画の有名どころで、1作目より2作目のほうが良いとキッパリ言われるのが『ターミネーター』シリーズや『エイリアン』シリーズです。
そんな中でこの、少なくとも日本では決してメジャーにはなりきれていない『スカイライン──』は、まさしく2作目でキッパリおもしろいと実感させてくれる作品に入るかと思います。
だいたい2作目が1作目よりつまらなくなる原因であげられるのは、1作目にあった作品の世界観やさまざまな設定、初めて目にする物語の"謎を絡めた始まり"という新鮮さが損なわれることでしょう。
初めて観たときに登場人物を好きになれたり、初めを観ているからこその知識があることによって、それらが続編の楽しみに活かせることもあるでしょうけど、やはり初見の新鮮さにはかなわなかったりするものです。
しかしこれが例えば1作目が多くの、あるいは大きな疑問を残したまま終わるなんてことがあればどうだろうか。
いや、疑問点というよりは、とにかくその世界観や設定の「すぐには呑み込みきれない意味不明さ」と言ったほうが良いでしょう。
興味は惹きつけられるものの、なんじゃこりゃ!と言わんばかりに度肝を抜かされたままにされる、良い意味でのもどかしさで1作目のラストを締めくくられたら…
そらもう続編を見せられたときの救われた感は格別です。

本作の1作目と2作目の関係は、そこをうまくついていると言えます。
1作目では舞台のほとんどがマンションの中で、地球人が宇宙船に吸い込まれるという謎の現象に始まり、未確認生物の実態もよくわからないままの脱出を描いています。
対する2作目は街でエイリアンから逃げ、さらには宇宙船の内部や異国の地で出逢った者たちが共闘し、地球を奪還するストーリーへと発展しています。

これは実際に観ていただければわかるかと思いますが、その1作目から2作目へのストーリーの発展の差が他の多くの作品より大きいです。
急に豪華な演出を盛り込んでくれています。
1作目が謎めいた始まりと、室内を舞台にした斬新さで来るなら、2作目はエイリアンやメカニックも含めた直球のSFアクションエンターテイメントになっています。
★フィギュア化してほしいくらいカッコいいエイリアンたちの造形
1作目からの謎めいたエイリアンの生態に関しては2作目でも多くは語られず、謎が残ります。
とはいえ先ほど述べた直球のSFアクションエンターテイメントということで、エイリアンとの戦いのシーンがふんだんに描かれ、その分さまざまな種類のユニークなエイリアンの姿が見事に白日の下にさらされる心地良さがあります。
とにかくこのエイリアンたちの造形がカッコいいものだから、フィギュアにして発売してもいいんじゃないかとさえ思えます。
1作目から一際目を引くのは、タンカーという大きな体のエイリアン…かと思えば実は中にパイロットがいて、操縦されているんですね!

それでいて完全にロボットという感じがしなくて、生物感があり、その大きな体で暴れてくれる様はまるで怪獣です。
全くもって見ていてワクワクさせられます。
そしてこれまた1作目から登場する宇宙船らしき物も実はエイリアンらしく、内部では地球人が捕らえられ、その中には脳を奪われて兵隊のように操られているシーンも見受けられます。
私が一番惹き付けられるのは街中でタコのような触手で地球人の脳を奪う、たぶんこれがドローンと呼ばれるエイリアンでしょうか。

見た目もやることもグロいです!
そうやって奪った脳を取り込み、兵隊として操られているのがシェパードと呼ばれるエイリアンのようですが、なぜか前作のジャロッドは、エイリアンの体になった後も地球人の味方のようです。
そんな個性的なエイリアンの描写は、本当に芸術的な美しさがあります。
なので、映画のキャラクターのフィギュアが好きな人なら気に入りそうなエイリアンの造形なんです!
☆やっぱり残る謎!まだ続きがあってもいいのでは?
さすがに3作目を制作すると蛇足感が現れ始めるかもしれませんが、やはり2作目の段階でも謎が残る作品です。
始めの方から述べてる、エイリアンのユニークな生態──奪い取った脳で体を操作するという点──は特に気になるところです。
ネタバレ防止のためにあまり多くは述べたくありませんが、観た人ならやはり私と同じ疑問を抱くでしょうか。
他にも細かく見ていけば、なんで?ってなる箇所はいくつかあります。
そして、あのラストはまだ続きがあってもいいのではないかと思わせられます。
いや、もしかしたら実際に製作者サイドは3作目を視野に入れているのか?
そもそも1作目の公開から2作目の公開までにかなり間があいている意味では、じっくり時間をかけての3部構成もありえるかもしれません。
確かに映画には多かれ少なかれ全てを語る必要がない部分や、観る者の想像に任せる要素があるものです。
しかし本作に至ってはその所々の疑問点の残し方が、SF大好きオタクが限られた予算の中で自分たちの表現したいことを出しきった結果、いくらかの不完全さは目をつぶる必要もあったという感じがします。
VFXも申し分なくすばらしいし、アクションで腕が立つ俳優たちの演技もアツいです!
とりわけ軍用兵器や銃だけでなく、エイリアン相手に白兵戦の演出にも力を入れているところや、人型のエイリアンがCGではない(予算の関係か?)ところに、まるで特撮ヒーローのアクションに似た興奮があります。
そんな、ハリウッドの技術を投じつつ、最近のハリウッドでは珍しい描き方も含めて、製作者たちにエールを送りたくなる作品──
──だからこそ、謎な部分が気になってしまう(私の理解力のせいかもしれませんが)作品です。

(だって2017年の『パワーレンジャー』だって変身後の姿はCGだったし、これが今のハリウッドのスタンダードですから!)


スカイライン-征服- (字幕版)[→Prime Video]
[→吹き替え版]


スカイライン-奪還-(字幕版)[→Prime Video]
[→吹き替え版]
【おすすめ記事↓】
→エイリアン前日譚『プロメテウス』──人類の起源明かされず
→地球人よ、もっと賢くなれ! ロシアのSF映画『アトラクション 制圧』
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特にエイリアンSFは、そういうB級映画でよく目にするジャンルです。
そして今回のブログであげる作品はというと、そらローランド・エメリッヒ監督の『インデペンデンス・デイ』やスティーブン・スピルバーグ監督の『宇宙戦争』みたいな大作ではありませんが、その中でもかなりクオリティの高い作品です。
『スカイライン ─征服─』(2010年 監督:グレッグ・ストラウス、コリン・ストラウス 出演:エリック・バルフォー、スコッティ・トンプソン、ドナルド・フェイソン、デイヴィッド・ザヤス、ニール・ホプキンス 他)

【あらすじ】──ジャロッド(エリック・バルフォー)と彼の恋人エレイン(スコッティ・トンプソン)は、親友のテリー(ドナルド・フェイソン)の誕生日パーティーのためにロサンゼルスに来ていた。
仲間たちはテリーの高級マンションで一夜を過ごしていたが、外から謎の青白い光が差し込まれ、仲間の一人レイ(ニール・ホプキンス)が吸い込まれる。
ジャロッドも危うくその光に吸い込まれかけるが、エレインに助けられる。
街は大量の未確認飛行物体が飛来し、人々が次々と吸い上げられる。
ジャロッドらは管理人のオリヴァー(デイヴィッド・ザヤス)と共にマンションの中に身を隠していたが、外の様子をうかがいながら脱出を試みる。──


☆ちょっと変わってる!脳を奪って体はエイリアンが用意
なんか意味わからない小見出しになってしまったかもしれません。
未知の生命体が人間の体を乗っ取るという映画はよくありますよね。
しかし本作で興味深いのは、エイリアンが地球人の頭をガッチリつかんで頭蓋から脳を取り出して吸い込むシーンがあります。
そしてその脳はエイリアンの宇宙船らしき巨大な飛行物体に集められ、向こうが持っている、地球人よりひとまわり大きな体の頭部に入れられます。
そうして地球人から奪った脳が、エイリアンの用意した体を操作する"意思"となるんです。
それがホント、変わった発想です。
これはつまり脳を奪われた人間はそこで殺されたわけではなく、エイリアンの体をもらって生きているということになります。
しかも、少なくともジャロッドの場合は人間だったときの意思をそのまま持つのでオイ!これって地球人を征服していることになっているのか?
と、疑問に思います。
エイリアンたちが自分たちの体を操作するための動力源のような物を必要としているのはわかりますが…
そういう疑問もさることながら、乱暴に頭をつかんで頭蓋を引き裂いているのに、脳だけは傷つけずにキレイにとるんだなあ、と感心させられます。
見事に脊髄ごと引っこ抜いてくれます。
おかげであまり残虐に見えないんですよ!
傷ひとつつけないと言っても、もちろん数分も酸素が行き渡らなければ脳は死にますから、吸い込んだその先で酸素を供給する器官が備わっているのかと想像してしまいます(そこまでは描写されていませんが…)。
さあ、あなたは自分自身の脳はそのままに、体はエイリアンになってみたいでしょうか?
★爽快な音楽とストラウス兄弟によるスタイリッシュな映像
本作は低予算ながら、まず冒頭からの街の映像美と、所々使われている音楽が良いです。
ロサンゼルスの街並みを見下ろすシーンに、爽やかなロックミュージックという組み合わせ。

少しばかり80年代の映画を思わせますね!
だからといって古臭いわけではなく、エイリアンや飛行物体の1つひとつがこれまた斬新で美しさを感じる造形です。
それらを大作SFになんら引けを取らないクオリティのVFXで描いているところに感心させられます。
映像美が映像美がと、もはや今のハリウッドSF映画としてはありきたりな評価ポイントではありますが、やはり観る前の決してメジャーじゃない低予算映画という先入観からのこのクオリティは、そうお目にかかれないでしょう。

ハイドラックスというVFX制作会社が自ら本作を製作したとのことですが、その制作会社の設立者は本作の監督を務めたストラウス兄弟なんですね。
VFXはもちろんのこと、作品そのものを自分たちの設立した会社で製作し、監督もやるというすばらしきDIY!
もちろん他に大物のスタッフも携わっていますし、ハイドラックス自体はその他有名な大作映画のVFXを数多く手掛けていますが(『アバター』『アベンジャーズ』『X-MEN』シリーズなど)、
──兄弟の好きな世界をこうして自ら映像化するところに夢があります。
『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟(じゃなくて今は姉妹)を彷彿とさせる話です。
そんな兄弟による製作・監督の、SFが好きな人なら目を輝かせて観てしまうこの作品は本国アメリカでは大ヒットしたのですが、日本でももっとこんな映画が盛り上がればいいのになと思います。
☆アクション要素を増した続編『──奪還』
この『スカイライン ─征服─』より7年の時を経て公開された『スカイライン ─奪還─』は、前作よりアクション要素や個性豊かなエイリアンたちの描写に力が入った、これまた良質な続編になっています。
『スカイライン ─奪還─』(2017年 監督:リアム・オドネル 出演:フランク・グリロ、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ、イコ・ウワイス、ジョニー・ウェストン、ヤヤン・ルヒアン 他)

【あらすじ】──突如現れた謎の生命体により、3日間で征服された地球。
ロサンゼルス市警のマーク(フランク・グリロ)は息子のトレント(ジョニー・ウェストン)と共に宇宙船に吸い込まれる。
マークはそこで、エイリアンの体になったジャロッドと出逢い、ジャロッドの娘を守る約束で彼の協力を得る。
破壊した宇宙船はラオスに墜落し、脱出先でマークはスア(イコ・ウワイス)が率いる反政府組織と手を組む。
地球奪還のために彼らはエイリアンに立ち向かう。──


もう今さら言うまでもなく、何かと映画の続編というのはかなりの確率で前作よりつまらないことが多いですよね。
SF映画の有名どころで、1作目より2作目のほうが良いとキッパリ言われるのが『ターミネーター』シリーズや『エイリアン』シリーズです。
そんな中でこの、少なくとも日本では決してメジャーにはなりきれていない『スカイライン──』は、まさしく2作目でキッパリおもしろいと実感させてくれる作品に入るかと思います。
だいたい2作目が1作目よりつまらなくなる原因であげられるのは、1作目にあった作品の世界観やさまざまな設定、初めて目にする物語の"謎を絡めた始まり"という新鮮さが損なわれることでしょう。
初めて観たときに登場人物を好きになれたり、初めを観ているからこその知識があることによって、それらが続編の楽しみに活かせることもあるでしょうけど、やはり初見の新鮮さにはかなわなかったりするものです。
しかしこれが例えば1作目が多くの、あるいは大きな疑問を残したまま終わるなんてことがあればどうだろうか。
いや、疑問点というよりは、とにかくその世界観や設定の「すぐには呑み込みきれない意味不明さ」と言ったほうが良いでしょう。
興味は惹きつけられるものの、なんじゃこりゃ!と言わんばかりに度肝を抜かされたままにされる、良い意味でのもどかしさで1作目のラストを締めくくられたら…
そらもう続編を見せられたときの救われた感は格別です。

本作の1作目と2作目の関係は、そこをうまくついていると言えます。
1作目では舞台のほとんどがマンションの中で、地球人が宇宙船に吸い込まれるという謎の現象に始まり、未確認生物の実態もよくわからないままの脱出を描いています。
対する2作目は街でエイリアンから逃げ、さらには宇宙船の内部や異国の地で出逢った者たちが共闘し、地球を奪還するストーリーへと発展しています。

これは実際に観ていただければわかるかと思いますが、その1作目から2作目へのストーリーの発展の差が他の多くの作品より大きいです。
急に豪華な演出を盛り込んでくれています。
1作目が謎めいた始まりと、室内を舞台にした斬新さで来るなら、2作目はエイリアンやメカニックも含めた直球のSFアクションエンターテイメントになっています。
★フィギュア化してほしいくらいカッコいいエイリアンたちの造形
1作目からの謎めいたエイリアンの生態に関しては2作目でも多くは語られず、謎が残ります。
とはいえ先ほど述べた直球のSFアクションエンターテイメントということで、エイリアンとの戦いのシーンがふんだんに描かれ、その分さまざまな種類のユニークなエイリアンの姿が見事に白日の下にさらされる心地良さがあります。
とにかくこのエイリアンたちの造形がカッコいいものだから、フィギュアにして発売してもいいんじゃないかとさえ思えます。
1作目から一際目を引くのは、タンカーという大きな体のエイリアン…かと思えば実は中にパイロットがいて、操縦されているんですね!

それでいて完全にロボットという感じがしなくて、生物感があり、その大きな体で暴れてくれる様はまるで怪獣です。
全くもって見ていてワクワクさせられます。
そしてこれまた1作目から登場する宇宙船らしき物も実はエイリアンらしく、内部では地球人が捕らえられ、その中には脳を奪われて兵隊のように操られているシーンも見受けられます。
私が一番惹き付けられるのは街中でタコのような触手で地球人の脳を奪う、たぶんこれがドローンと呼ばれるエイリアンでしょうか。

見た目もやることもグロいです!
そうやって奪った脳を取り込み、兵隊として操られているのがシェパードと呼ばれるエイリアンのようですが、なぜか前作のジャロッドは、エイリアンの体になった後も地球人の味方のようです。
そんな個性的なエイリアンの描写は、本当に芸術的な美しさがあります。
なので、映画のキャラクターのフィギュアが好きな人なら気に入りそうなエイリアンの造形なんです!
☆やっぱり残る謎!まだ続きがあってもいいのでは?
さすがに3作目を制作すると蛇足感が現れ始めるかもしれませんが、やはり2作目の段階でも謎が残る作品です。
始めの方から述べてる、エイリアンのユニークな生態──奪い取った脳で体を操作するという点──は特に気になるところです。
ネタバレ防止のためにあまり多くは述べたくありませんが、観た人ならやはり私と同じ疑問を抱くでしょうか。
他にも細かく見ていけば、なんで?ってなる箇所はいくつかあります。
そして、あのラストはまだ続きがあってもいいのではないかと思わせられます。
いや、もしかしたら実際に製作者サイドは3作目を視野に入れているのか?
そもそも1作目の公開から2作目の公開までにかなり間があいている意味では、じっくり時間をかけての3部構成もありえるかもしれません。
確かに映画には多かれ少なかれ全てを語る必要がない部分や、観る者の想像に任せる要素があるものです。
しかし本作に至ってはその所々の疑問点の残し方が、SF大好きオタクが限られた予算の中で自分たちの表現したいことを出しきった結果、いくらかの不完全さは目をつぶる必要もあったという感じがします。
VFXも申し分なくすばらしいし、アクションで腕が立つ俳優たちの演技もアツいです!
とりわけ軍用兵器や銃だけでなく、エイリアン相手に白兵戦の演出にも力を入れているところや、人型のエイリアンがCGではない(予算の関係か?)ところに、まるで特撮ヒーローのアクションに似た興奮があります。
そんな、ハリウッドの技術を投じつつ、最近のハリウッドでは珍しい描き方も含めて、製作者たちにエールを送りたくなる作品──
──だからこそ、謎な部分が気になってしまう(私の理解力のせいかもしれませんが)作品です。

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