私がゴジラ以上に好きな怪獣
- 2020/01/07
- 22:16
ゴジラ生誕65周年で沸いた2019年ですが、マイケル・ドハティ監督による『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が公開された年でもあり、日本で生まれた怪獣映画の金字塔に熱い視線が注がれていますね!
全くもって怪獣王の名にふさわしいポジションに君臨するゴジラですが、私がそのゴジラと同じくらいか、それ以上に好きな怪獣──
それがモスラです!
まず、モスラの魅力はやっぱり羽を羽ばたかせるときの華麗な姿にありますね!
見るからに繊細な姿をしているのに実はめちゃ強い!
そういうのも含めて登場から戦う姿まで華麗なんです。
そして日本で描かれてきたモスラと言えば小美人という存在があります。
人間的な視点を持ったキャラクターと意思が通じあい、行動を共にする怪獣というのは他にも描かれていないわけではないですが、モスラほどそれがはっきりと描かれた怪獣は他にいないでしょう。
小美人の登場というのはあまりに現実離れした演出で、多くの怪獣映画にあるSFらしさを通り越した演出ではあります。
しかしそれこそがモスラという怪獣が、ゴジラとは違った意味での孤高の存在感を醸す要因と言えます。
今回はそんなモスラについて語りたいと思います。
☆モスラの魅力満載の作品たち
まず、怪獣の中でモスラを主役に置いた最初の作品は1961年の『モスラ』です。
こちらは人間の善悪は理解しておらず、捕らわれた小美人を助けるために、善人までもを巻き込んで日本の都市を破壊する怪獣としてモスラが描かれています。
そういうモスラもリアリティがあるし、本多猪四郎監督が描く人間ドラマも含めて作品としてすばらしいものです。
また、時にゴジラに対抗する怪獣として、時にゴジラと共闘する怪獣として、数多くのゴジラ映画でもモスラはキングギドラと並ぶ花形な存在感を持つ怪獣ですね。
しかしここで私が取りあげたい、モスラの魅力が鮮やかに表れた作品──
それはやっぱり、平成モスラ3部作です。


モスラ3部作 Blu-ray(3枚組)[→Amazon]
この3作品について、1作目から語っていきます。
『モスラ』(1996年 監督:米田興弘 特技監督:川北紘一 出演:小林恵、山口紗弥加、羽野晶紀、二見一樹、藤沢麻弥、梨本謙次郎、高橋ひとみ 他)


モスラ[→Prime Video]
【あらすじ】──北海道の紋別では豊国商事による森林伐採が行われていた。
現場監督の後藤裕一は現場で発見された古代遺跡から謎のメダルを手にする。
そのメダルは妖精のエリアス族が、6500万年前に地球上の植物を滅ぼし、恐竜を絶滅させた宇宙怪獣デスギドラを封印するための「エリアスの盾」だった。
エリアス族で人間を憎むベルベラはその盾を狙い、都内にある裕一の自宅を襲撃する。
後藤一家の真紀子、大樹、若葉は、ベルベラと同じエリアス族の姉妹であるモルとロラに助けられ、彼女らと共に裕一のいる紋別の伐採現場に向かうが、ついにデスギドラが目覚める。
モルとロラはデスギドラと戦うため、苦渋の決断で残りの寿命が長くないモスラを召喚する。──

★ただの怪獣ではない"モスラならでは"が凝縮された世界
まずオープニングのモスラが座る古代遺跡のような風景は、それまでのモスラ登場作品にもお馴染みですね。

本作にはインファント島の原住民は登場しませんが、やはり怪獣というよりは守り神というモスラのイメージが象徴された絵となっています。
この映像を見たときの、これから物語が始まるというワクワク感がたまりませんね!
当時の特撮技術と現代のCG技術という違いはありますが、こういう壮大に描かれた空想世界は実のところ東宝特撮の伝統とも言えます。
60年代からすでにこんな創造性が発揮されていて、それが90年代にも受け継がれていたと思うと、本当に日本の映画が輝かしかった時代です。
(今の邦画全てが悪いわけではないですが…)
そんな往年のモスラ登場作品の世界観を全面に表しつつ、それまでにはない新しい要素で更にモスラならではの魅力を増幅させているのが周辺の人物たちの描写です。
その1つが小美人の描かれ方です。
あまり起伏に富んだ表情や感情は見せないザ・ピーナッツや『ゴジラvsモスラ』のコスモスとは違う、より人間味のある姉妹が本作には登場します。
衣装は華やかで、正に人間界のような発展した文明の中で生きてきた様子が鮮やかに映し出されています。
そんな妖精の姉妹・エリアスが人間に近い目線で会話をしている様は、それまで描かれた小美人よりもはるかに人間界に溶け込んでいるように見えます。

一方で同じエリアス族で、モルとロラの姉であるベルベラは人間を憎み、同種族で同じ姉妹でも対立しているという設定がさらにキャラクターとしての彩りを豊かにしています。
人間を敵視してデスギドラを家来にしようとするベルベラ。
そこに人間の味方として戦うモルとロラによって召喚される守護神モスラが登場する構図は、あまりにわかりやすいけど、「こんなモスラが見たい」という期待どおりの描写でもあります。
また人間描写としておもしろいのは、それまで悪徳に描かれていた建設企業が、ここでは善人として描かれ、逆に自然破壊をエゴイスティックな批判で報道するレポーターが登場するところです。
この部分は正に1961年の作品とは真逆で、それがまたモスラという存在を違った形で麗しく描写している要素となっています。
過ちも冒す人間たちを信じてくれるモスラ──
なんていい怪獣なんだ!
巨大でカラフルな蛾の姿をしたウルトラマンと言うべきか?
……ちょっと例えがおかしいですか?
それでは2作目に入ります!
『モスラ2 海底の大決戦』(1997年 監督:三好邦夫 特技監督:川北紘一 出演:小林恵、山口紗弥加、羽野晶紀、満島ひかり、島田正直、大竹雅樹、奥野敦士、おかやまはじめ 他)


モスラ2 海底の大決戦[→Prime Video]
【あらすじ】──沖縄の海にオニヒトデに似た奇怪な生物が現れる。
それは伝説の国「ニライカナイ」の古代文明で、環境汚染の浄化のために生み出された怪獣ダガーラの体内から発生した生物であった。
ダガーラの復活を察知したモルとロラが石垣島へ飛ぶと、そこにはニライカナイの水の精ゴーゴを保護した地元の子どもたちがいた。
モルとロラは彼らと共に、ダガーラを倒す秘宝があるとされるニライカナイの遺跡を目指して海に出る。
海にはニライカナイの遺跡のピラミッドが出現し、子どもたちは秘宝を探し出そうとするが、ついにダガーラが現れ、石垣島に上陸する。
モルとロラはダガーラと戦うためにモスラを召喚するが、ダガーラの体内から放たれたベーレムによってモスラは戦闘不能になる。──
☆子どもたちの純真さがより強く描かれた冒険ファンタジー
北海道が舞台の1作目から打って変わって2作目のこちらは沖縄が舞台です。
前作は緑の森の中で環境問題に触れたテーマがありましたが、こちらは青い海の中でやはり環境問題に触れたテーマとなっています。
しかしストーリーの軸は、エリアスに協力する3人の子どもたちの冒険です。

沖縄の伝説「ニライカナイ」をベースに遺跡を登場させる神秘性と、大人たちに行く手を阻まれながら目的を果たそうとする子どもたちの純真さが前面に出ています。
1作目と後述する3作目ともにギドラ族の怪獣が敵として登場する本シリーズですが、この2作目だけはダガーラという変わり種の怪獣が登場するのも見所です。
ベーレムというヒトデのような生物を体内から発するダガーラは、武骨な姿ながら水中に潜ることも飛ぶこともできる強者で、モスラを苦しめます。

古代人が作り出した生物というわけで、ニライカナイの伝説をかなり盛った設定ですが、モスラの神秘性にその土地の神秘性が組み合わさり、ますますファンタジー寄りの作品です。
そしてこれまたニライカナイで生み出された、ゴーゴという生き物の力でモスラを変身させる展開もあり、モスラを主役にした作品ならではの造形で楽しませてくれます。
しかも──本シリーズの3作全てにあてはまりますが──それまでの怪獣映画には付き物の自衛隊が全く登場しません。
メカニカルな超兵器も演出になく、ごく普通の子どもの活躍に視点が置かれています。
こうして見ると、やはりそれまでのモスラ登場作品で培われた神秘的なイメージを抽出させているなと感じます。

守り神としてのモスラ、伝説をモチーフにした遺跡、少年少女の活躍と、シリーズの中でも一際ファンタジックなのが『モスラ2 海底の大決戦』なのです。

(満島ひかりさんの子役時代。彼女の初の映画出演でもありました!)
私自身はSFが好きなので、メーサー戦車やスーパーXのような超兵器も好きだし、自衛隊が登場する怪獣映画が好きですが、モスラの場合はそういうのを登場させない路線でも全くもって文句なしです。
そこにエリアスのような妖精がいて、彼女たちがここでもやはりお馴染みの歌でモスラを召喚するのだから完璧です。
(沖縄が舞台で怪獣を歌で召喚するなら、この勢いでキングシーサーが登場してもよかったかな…。)
ホント余談ですがエリアスの長女ベルベラは、『ゴジラ対メカゴジラ』でキングシーサーを呼び覚ます「ミヤラビの祈り」を歌っていたベルベラ・リーンさんから名前を取ったのでしょうか?
そんな疑問はさておき、3作目に入ります!
『モスラ3 キングギドラ来襲』(1998年 監督:米田興弘 特技監督:鈴木健二 出演:小林恵、建みさと、羽野晶紀、吉澤拓真、大仁田厚、松田美由紀 他)


モスラ3 キングギドラ来襲[→Prime Video]
【あらすじ】──1億3千万年前に恐竜を滅ぼした宇宙怪獣キングギドラが現代の地球に飛来し、子どもたちが謎のドームの中に捕らえられる。
モルとロラはモスラを召喚するが、キングギドラの圧倒的な力に敗北する。
さらにロラがキングギドラに操られてモルを襲い、ドームの中に落ちる。
そんな中、キングギドラのドームがある青木ケ原樹海に入り込んだ不登校の少年・園田翔太はモルと出逢い、ドームに捕らわれた子どもたちの救出とキングギドラとの戦いで協力することになる。──

★強敵キングギドラと対決する3作目
それまではゴジラの宿敵としてのイメージが強かったキングギドラ。
そんなキングギドラとモスラによる直接対決が実現したところがまず見所です!
ただ、1作目ですでにギドラ族の敵怪獣を登場させているのだから、もっと違う怪獣を出しても良かった気はします。
いやいや、まあでもここは天下のキングギドラ様ですから!
やっぱり皆さん、キングギドラは大好きですよね!

しかも本作のキングギドラはそれまでとは違った描写があります。
自らが餌食とする対象(本作では子どもたち)を吸収する巨大なドームを発生させる能力。
さらにはロラの心を奪ってしまいました。
やはりこの『モスラ』シリーズのテイストに合わせてなのでしょう。
本作のキングギドラは決して科学的な描写ではありません。
それでいて、それまでのどのキングギドラよりも邪悪な怪獣として描かれています。
かつて地球にいた恐竜を食いつくし滅ぼした宇宙怪獣──
よく宇宙人や未来人に操られているキングギドラは過去の作品に登場してきましたが、本作のキングギドラは自らの意思で残忍な悪事をやってのけているのです。
その点では『ゴジラvsキングギドラ』に登場するマッシブなキングギドラよりも悪そうな奴です。
モスラとの対決が実現したと言っても、これは強すぎます!

(ゴジラとラドンがいっしょに協力してくれれば……ってそれはいつかの別の作品だろ!)

(ゴロザウルスやアンギラスやその他いろいろな怪獣が総動員で共闘してくれれば……って違うから!)
そう、相手は強敵だけど、そこに成虫のモスラが一対一で戦うことに意味があるんですよね!


昆虫を甘く見ると痛い目にあうぞということを見せつけてやるのだ、モスラ!
…と、キングギドラという悪魔的な強さを誇る敵怪獣が相手だからこそ、モスラの真の強さを見せることができるのです。
☆少年と手を組んだモルの大活躍
シリーズ3作目を締めくくるにふさわしく物語が感動的な本作。
何が感動的かというとモルの活躍なんですね!
モスラとキングギドラが一対一と言っても、モスラは小美人の存在と共にあります。
前2作でモルはロラと2人で力を発揮していましたが、ロラがキングギドラに操られたためにモル1人になります。
それゆえこの3作目はモル、そして樹海で出逢った少年・翔太の活躍に焦点が置かれています。
「一番上のお姉さん(ベルベラ)は協力してくれないの?」と聞いても何も答えないモルを見てすぐに察する少年。
「ああ、そうか。ひねくれているんだね。長男とか長女って一番最初に波をかぶるから辛いんだよね」
自分も長男で不登校になっているがゆえの少年の洞察力。
その少年を前に弱気な表情を見せるモル。
それでも少年の力を借りながら戦うモルの姿に胸が熱くなります。


モスラと共に最後の手段を取るまでのエリアス語で話す小林恵さんの演技が光ります。
劇中歌「ハオラ・モスラ」を歌う彼女の場面がまた物語に重厚さを帯びさせていますね。
★変身して強くなるモスラ!やっぱり最強の守り神!
2作目でレインボーモスラ、アクアモスラへと変身したモスラが、この3作目では鎧モスラという圧倒的な強さを誇る姿に変身を遂げます。

繊細な姿をした蛾が、巨大な3つ首の龍を圧倒します。
正に昆虫を甘く見ると痛い目にあうぞと言わんばかりの構図です。

守るために戦う!
そんなモスラだからこその無敵さを体現したクライマックスです。
う~む!
やっぱりそれでこそモスラなのだ!
思えば1964年の『モスラ対ゴジラ』と1992年の『ゴジラvsモスラ』ではゴジラがモスラに勝てなかったぐらいです。
前者は双子の幼虫の力だし、後者はバトラの協力があったからこそではありますが…。
本作では鎧に覆われた姿になることで、羽をボロボロにしながら戦う蛾の域を超え、ついに単体でキングギドラを凌駕してしまう守護神と化しています。
これでもかと言わんばかりに進化する蛾の怪獣の華麗なる演出です。
これだけ強く変身していくのも、やはり地球を守るためであるところが観る者に共感を与えてくれますね。
──3部作についてざっと語りましたが、本シリーズの1作目が公開される前年まで製作されていたVSゴジラシリーズと比べても内容は低年齢向けになるでしょう。
ましてや同年代に公開されていた平成ガメラ3部作のマッシブな世界観に見慣れてしまうと、『モスラ』シリーズが子どもっぽく感じられてしまいます。
しかし大人になってから思う、こういったファンタジー映画やジュブナイル映画の良さってありますね。

モスラに関しては『ゴジラvsビオランテ』を無理に真似ることなく描くからこそモスラなのかもしれません。
もちろん先ほども述べた通り、本多猪四郎監督による大人の人間ドラマで描いた1961年の『モスラ』もすばらしいです。
また『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』で機龍と共闘したモスラもカッコいいんですよね!
『ゴジラ FINAL WARS』では、ゴジラ以外の怪獣でX星人に操られることなく戦ったのはそう!ミニラ!
あ~いやいや!
確かにそれもそうかもしれませんが、やっぱりモスラ!
モスラなんです!
もういろんな意味でカッコよくて美しくて強い怪獣。
だから私がゴジラと同じか、それ以上に好きな怪獣がモスラなんです。
【おすすめ記事↓】
→☆それでも平成ゴジラVSシリーズが好き!⑤──『ゴジラvsモスラ』★
→☆モスラ3部作トリロジーボックスBlu-ray購入!★
ツイッターもよろしく!↓
https://twitter.com/ongaku_eiga
全くもって怪獣王の名にふさわしいポジションに君臨するゴジラですが、私がそのゴジラと同じくらいか、それ以上に好きな怪獣──
それがモスラです!
まず、モスラの魅力はやっぱり羽を羽ばたかせるときの華麗な姿にありますね!
見るからに繊細な姿をしているのに実はめちゃ強い!
そういうのも含めて登場から戦う姿まで華麗なんです。
そして日本で描かれてきたモスラと言えば小美人という存在があります。
人間的な視点を持ったキャラクターと意思が通じあい、行動を共にする怪獣というのは他にも描かれていないわけではないですが、モスラほどそれがはっきりと描かれた怪獣は他にいないでしょう。
小美人の登場というのはあまりに現実離れした演出で、多くの怪獣映画にあるSFらしさを通り越した演出ではあります。
しかしそれこそがモスラという怪獣が、ゴジラとは違った意味での孤高の存在感を醸す要因と言えます。
今回はそんなモスラについて語りたいと思います。
☆モスラの魅力満載の作品たち
まず、怪獣の中でモスラを主役に置いた最初の作品は1961年の『モスラ』です。
こちらは人間の善悪は理解しておらず、捕らわれた小美人を助けるために、善人までもを巻き込んで日本の都市を破壊する怪獣としてモスラが描かれています。
そういうモスラもリアリティがあるし、本多猪四郎監督が描く人間ドラマも含めて作品としてすばらしいものです。
また、時にゴジラに対抗する怪獣として、時にゴジラと共闘する怪獣として、数多くのゴジラ映画でもモスラはキングギドラと並ぶ花形な存在感を持つ怪獣ですね。
しかしここで私が取りあげたい、モスラの魅力が鮮やかに表れた作品──
それはやっぱり、平成モスラ3部作です。

この3作品について、1作目から語っていきます。
『モスラ』(1996年 監督:米田興弘 特技監督:川北紘一 出演:小林恵、山口紗弥加、羽野晶紀、二見一樹、藤沢麻弥、梨本謙次郎、高橋ひとみ 他)

【あらすじ】──北海道の紋別では豊国商事による森林伐採が行われていた。
現場監督の後藤裕一は現場で発見された古代遺跡から謎のメダルを手にする。
そのメダルは妖精のエリアス族が、6500万年前に地球上の植物を滅ぼし、恐竜を絶滅させた宇宙怪獣デスギドラを封印するための「エリアスの盾」だった。
エリアス族で人間を憎むベルベラはその盾を狙い、都内にある裕一の自宅を襲撃する。
後藤一家の真紀子、大樹、若葉は、ベルベラと同じエリアス族の姉妹であるモルとロラに助けられ、彼女らと共に裕一のいる紋別の伐採現場に向かうが、ついにデスギドラが目覚める。
モルとロラはデスギドラと戦うため、苦渋の決断で残りの寿命が長くないモスラを召喚する。──

★ただの怪獣ではない"モスラならでは"が凝縮された世界
まずオープニングのモスラが座る古代遺跡のような風景は、それまでのモスラ登場作品にもお馴染みですね。

本作にはインファント島の原住民は登場しませんが、やはり怪獣というよりは守り神というモスラのイメージが象徴された絵となっています。
この映像を見たときの、これから物語が始まるというワクワク感がたまりませんね!
当時の特撮技術と現代のCG技術という違いはありますが、こういう壮大に描かれた空想世界は実のところ東宝特撮の伝統とも言えます。
60年代からすでにこんな創造性が発揮されていて、それが90年代にも受け継がれていたと思うと、本当に日本の映画が輝かしかった時代です。
(今の邦画全てが悪いわけではないですが…)
そんな往年のモスラ登場作品の世界観を全面に表しつつ、それまでにはない新しい要素で更にモスラならではの魅力を増幅させているのが周辺の人物たちの描写です。
その1つが小美人の描かれ方です。
あまり起伏に富んだ表情や感情は見せないザ・ピーナッツや『ゴジラvsモスラ』のコスモスとは違う、より人間味のある姉妹が本作には登場します。
衣装は華やかで、正に人間界のような発展した文明の中で生きてきた様子が鮮やかに映し出されています。
そんな妖精の姉妹・エリアスが人間に近い目線で会話をしている様は、それまで描かれた小美人よりもはるかに人間界に溶け込んでいるように見えます。

一方で同じエリアス族で、モルとロラの姉であるベルベラは人間を憎み、同種族で同じ姉妹でも対立しているという設定がさらにキャラクターとしての彩りを豊かにしています。
人間を敵視してデスギドラを家来にしようとするベルベラ。
そこに人間の味方として戦うモルとロラによって召喚される守護神モスラが登場する構図は、あまりにわかりやすいけど、「こんなモスラが見たい」という期待どおりの描写でもあります。
また人間描写としておもしろいのは、それまで悪徳に描かれていた建設企業が、ここでは善人として描かれ、逆に自然破壊をエゴイスティックな批判で報道するレポーターが登場するところです。
この部分は正に1961年の作品とは真逆で、それがまたモスラという存在を違った形で麗しく描写している要素となっています。
過ちも冒す人間たちを信じてくれるモスラ──
なんていい怪獣なんだ!
巨大でカラフルな蛾の姿をしたウルトラマンと言うべきか?
……ちょっと例えがおかしいですか?
それでは2作目に入ります!
『モスラ2 海底の大決戦』(1997年 監督:三好邦夫 特技監督:川北紘一 出演:小林恵、山口紗弥加、羽野晶紀、満島ひかり、島田正直、大竹雅樹、奥野敦士、おかやまはじめ 他)

【あらすじ】──沖縄の海にオニヒトデに似た奇怪な生物が現れる。
それは伝説の国「ニライカナイ」の古代文明で、環境汚染の浄化のために生み出された怪獣ダガーラの体内から発生した生物であった。
ダガーラの復活を察知したモルとロラが石垣島へ飛ぶと、そこにはニライカナイの水の精ゴーゴを保護した地元の子どもたちがいた。
モルとロラは彼らと共に、ダガーラを倒す秘宝があるとされるニライカナイの遺跡を目指して海に出る。
海にはニライカナイの遺跡のピラミッドが出現し、子どもたちは秘宝を探し出そうとするが、ついにダガーラが現れ、石垣島に上陸する。
モルとロラはダガーラと戦うためにモスラを召喚するが、ダガーラの体内から放たれたベーレムによってモスラは戦闘不能になる。──
☆子どもたちの純真さがより強く描かれた冒険ファンタジー
北海道が舞台の1作目から打って変わって2作目のこちらは沖縄が舞台です。
前作は緑の森の中で環境問題に触れたテーマがありましたが、こちらは青い海の中でやはり環境問題に触れたテーマとなっています。
しかしストーリーの軸は、エリアスに協力する3人の子どもたちの冒険です。

沖縄の伝説「ニライカナイ」をベースに遺跡を登場させる神秘性と、大人たちに行く手を阻まれながら目的を果たそうとする子どもたちの純真さが前面に出ています。
1作目と後述する3作目ともにギドラ族の怪獣が敵として登場する本シリーズですが、この2作目だけはダガーラという変わり種の怪獣が登場するのも見所です。
ベーレムというヒトデのような生物を体内から発するダガーラは、武骨な姿ながら水中に潜ることも飛ぶこともできる強者で、モスラを苦しめます。

古代人が作り出した生物というわけで、ニライカナイの伝説をかなり盛った設定ですが、モスラの神秘性にその土地の神秘性が組み合わさり、ますますファンタジー寄りの作品です。
そしてこれまたニライカナイで生み出された、ゴーゴという生き物の力でモスラを変身させる展開もあり、モスラを主役にした作品ならではの造形で楽しませてくれます。
しかも──本シリーズの3作全てにあてはまりますが──それまでの怪獣映画には付き物の自衛隊が全く登場しません。
メカニカルな超兵器も演出になく、ごく普通の子どもの活躍に視点が置かれています。
こうして見ると、やはりそれまでのモスラ登場作品で培われた神秘的なイメージを抽出させているなと感じます。

守り神としてのモスラ、伝説をモチーフにした遺跡、少年少女の活躍と、シリーズの中でも一際ファンタジックなのが『モスラ2 海底の大決戦』なのです。

(満島ひかりさんの子役時代。彼女の初の映画出演でもありました!)
私自身はSFが好きなので、メーサー戦車やスーパーXのような超兵器も好きだし、自衛隊が登場する怪獣映画が好きですが、モスラの場合はそういうのを登場させない路線でも全くもって文句なしです。
そこにエリアスのような妖精がいて、彼女たちがここでもやはりお馴染みの歌でモスラを召喚するのだから完璧です。
(沖縄が舞台で怪獣を歌で召喚するなら、この勢いでキングシーサーが登場してもよかったかな…。)
ホント余談ですがエリアスの長女ベルベラは、『ゴジラ対メカゴジラ』でキングシーサーを呼び覚ます「ミヤラビの祈り」を歌っていたベルベラ・リーンさんから名前を取ったのでしょうか?
そんな疑問はさておき、3作目に入ります!
『モスラ3 キングギドラ来襲』(1998年 監督:米田興弘 特技監督:鈴木健二 出演:小林恵、建みさと、羽野晶紀、吉澤拓真、大仁田厚、松田美由紀 他)

【あらすじ】──1億3千万年前に恐竜を滅ぼした宇宙怪獣キングギドラが現代の地球に飛来し、子どもたちが謎のドームの中に捕らえられる。
モルとロラはモスラを召喚するが、キングギドラの圧倒的な力に敗北する。
さらにロラがキングギドラに操られてモルを襲い、ドームの中に落ちる。
そんな中、キングギドラのドームがある青木ケ原樹海に入り込んだ不登校の少年・園田翔太はモルと出逢い、ドームに捕らわれた子どもたちの救出とキングギドラとの戦いで協力することになる。──

★強敵キングギドラと対決する3作目
それまではゴジラの宿敵としてのイメージが強かったキングギドラ。
そんなキングギドラとモスラによる直接対決が実現したところがまず見所です!
ただ、1作目ですでにギドラ族の敵怪獣を登場させているのだから、もっと違う怪獣を出しても良かった気はします。
いやいや、まあでもここは天下のキングギドラ様ですから!
やっぱり皆さん、キングギドラは大好きですよね!

しかも本作のキングギドラはそれまでとは違った描写があります。
自らが餌食とする対象(本作では子どもたち)を吸収する巨大なドームを発生させる能力。
さらにはロラの心を奪ってしまいました。
やはりこの『モスラ』シリーズのテイストに合わせてなのでしょう。
本作のキングギドラは決して科学的な描写ではありません。
それでいて、それまでのどのキングギドラよりも邪悪な怪獣として描かれています。
かつて地球にいた恐竜を食いつくし滅ぼした宇宙怪獣──
よく宇宙人や未来人に操られているキングギドラは過去の作品に登場してきましたが、本作のキングギドラは自らの意思で残忍な悪事をやってのけているのです。
その点では『ゴジラvsキングギドラ』に登場するマッシブなキングギドラよりも悪そうな奴です。
モスラとの対決が実現したと言っても、これは強すぎます!

(ゴジラとラドンがいっしょに協力してくれれば……ってそれはいつかの別の作品だろ!)

(ゴロザウルスやアンギラスやその他いろいろな怪獣が総動員で共闘してくれれば……って違うから!)
そう、相手は強敵だけど、そこに成虫のモスラが一対一で戦うことに意味があるんですよね!


昆虫を甘く見ると痛い目にあうぞということを見せつけてやるのだ、モスラ!
…と、キングギドラという悪魔的な強さを誇る敵怪獣が相手だからこそ、モスラの真の強さを見せることができるのです。
☆少年と手を組んだモルの大活躍
シリーズ3作目を締めくくるにふさわしく物語が感動的な本作。
何が感動的かというとモルの活躍なんですね!
モスラとキングギドラが一対一と言っても、モスラは小美人の存在と共にあります。
前2作でモルはロラと2人で力を発揮していましたが、ロラがキングギドラに操られたためにモル1人になります。
それゆえこの3作目はモル、そして樹海で出逢った少年・翔太の活躍に焦点が置かれています。
「一番上のお姉さん(ベルベラ)は協力してくれないの?」と聞いても何も答えないモルを見てすぐに察する少年。
「ああ、そうか。ひねくれているんだね。長男とか長女って一番最初に波をかぶるから辛いんだよね」
自分も長男で不登校になっているがゆえの少年の洞察力。
その少年を前に弱気な表情を見せるモル。
それでも少年の力を借りながら戦うモルの姿に胸が熱くなります。


モスラと共に最後の手段を取るまでのエリアス語で話す小林恵さんの演技が光ります。
劇中歌「ハオラ・モスラ」を歌う彼女の場面がまた物語に重厚さを帯びさせていますね。
★変身して強くなるモスラ!やっぱり最強の守り神!
2作目でレインボーモスラ、アクアモスラへと変身したモスラが、この3作目では鎧モスラという圧倒的な強さを誇る姿に変身を遂げます。

繊細な姿をした蛾が、巨大な3つ首の龍を圧倒します。
正に昆虫を甘く見ると痛い目にあうぞと言わんばかりの構図です。

守るために戦う!
そんなモスラだからこその無敵さを体現したクライマックスです。
う~む!
やっぱりそれでこそモスラなのだ!
思えば1964年の『モスラ対ゴジラ』と1992年の『ゴジラvsモスラ』ではゴジラがモスラに勝てなかったぐらいです。
前者は双子の幼虫の力だし、後者はバトラの協力があったからこそではありますが…。
本作では鎧に覆われた姿になることで、羽をボロボロにしながら戦う蛾の域を超え、ついに単体でキングギドラを凌駕してしまう守護神と化しています。
これでもかと言わんばかりに進化する蛾の怪獣の華麗なる演出です。
これだけ強く変身していくのも、やはり地球を守るためであるところが観る者に共感を与えてくれますね。
──3部作についてざっと語りましたが、本シリーズの1作目が公開される前年まで製作されていたVSゴジラシリーズと比べても内容は低年齢向けになるでしょう。
ましてや同年代に公開されていた平成ガメラ3部作のマッシブな世界観に見慣れてしまうと、『モスラ』シリーズが子どもっぽく感じられてしまいます。
しかし大人になってから思う、こういったファンタジー映画やジュブナイル映画の良さってありますね。

モスラに関しては『ゴジラvsビオランテ』を無理に真似ることなく描くからこそモスラなのかもしれません。
もちろん先ほども述べた通り、本多猪四郎監督による大人の人間ドラマで描いた1961年の『モスラ』もすばらしいです。
また『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』で機龍と共闘したモスラもカッコいいんですよね!
『ゴジラ FINAL WARS』では、ゴジラ以外の怪獣でX星人に操られることなく戦ったのはそう!ミニラ!
あ~いやいや!
確かにそれもそうかもしれませんが、やっぱりモスラ!
モスラなんです!
もういろんな意味でカッコよくて美しくて強い怪獣。
だから私がゴジラと同じか、それ以上に好きな怪獣がモスラなんです。
【おすすめ記事↓】
→☆それでも平成ゴジラVSシリーズが好き!⑤──『ゴジラvsモスラ』★
→☆モスラ3部作トリロジーボックスBlu-ray購入!★
ツイッターもよろしく!↓
https://twitter.com/ongaku_eiga
- テーマ:特撮・SF・ファンタジー映画
- ジャンル:映画
- カテゴリ:映画
- CM:0
- TB:0