『エクストラ テレストリアル』──怖いけどロマンもあるUFO事件

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前回記事であげたようなAIを描いたSF作品だけでなく、よく取り扱われている映画のネタと言えばエイリアンがあります。

そしてそのエイリアンやUFOの造形も様々な描かれ方がされてきています。

その中で昔から語られているエイリアンに関連する事件の、典型的なイメージを真っ向から表現したがゆえにシンプルでわかりやすい(ある意味美しさを感じる)こちらのSFホラー作品はいかがでしょうか。

『エクストラ テレストリアル』(2014年 監督:コリン・ミニハン 出演:ブリタニー・アレン、フレディ・ストローマ 他)


エクストラ テレストリアル(字幕版)[→Prime Video]

【あらすじ】──友人たちと5人で休暇を過ごすために別荘にやってきたエイプリル(ブリタニー・アレン)とカイル(フレディ・ストローマ)は、炎上しながら墜落する飛行物体を目撃する。

この周辺では、何者かに連れ去られ行方不明になる者が続出していた。

墜落現場に向かった5人は、恐るべき生命体と遭遇する。──

エクストラ テレストリアル 画像1

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☆描きようではホラーなエイリアン・アブダクションにまつわる話

昔は胡散臭いような本物っぽいような、エイリアンの謎を追うテレビ番組がよく放送されていました。

だいたいそこで刷り込まれるエイリアンのイメージと言えば、何かを調べるかのように地球人の居住地に忍び込み、人を連れ去るというのがありました。

わけのわからない人体実験が行われるといった誰かの体験がよく語られてきました。

そういうイメージでテレビで取りあげられていたのを見ていた影響で、当時はエイリアンは怖いものと思わされていました。

今にして思えば、そういう特集番組なんてのは胡散臭いのが7に対して本物っぽいのが3というところですが…

とにかくエイリアンは幽霊に匹敵するホラーのネタという一面があります。

地球外に我々と同じかそれ以上の知的生命体がいるかもしれないのはロマンですが、やはり得体の知れない者たちに連れ去られるのは怖いですよね。

本作はそんな昔からある「エイリアン・アブダクション」にまつわる話を、潔いくらいにストレートに描写した、近年では稀な作品かもしれませんが、その分エイリアンをホラー路線で描いている作品でもあります。

そのエイリアンの造形が笑ってしまうくらいに古風なテンプレートですが、実際に夜の闇にこんなものが現れたら幽霊に負けない怖さがあるだろなというわかりやすさが意外と悪くない気がします。

ぶん殴ったらすぐやられそうな細い体つきなんですけどね…


★細部の造形が美しいVFXと適度に派手な演出

大作じゃないSF映画となると、例え洋画であってもCGが安っぽいものが多かったりしますが、本作はそういったチープなCGではありません。

わかりやすいシンプルな円盤形のUFOにしても、細部の描き方に手抜きがなく、その美しさにワクワクさせられます。

曲線的なシルバーの物体というのはやっぱりエイリアンSFのお決まりですね。

わかっちゃいるけど、好きなものは好きなんですよ!

その円盤から放たれる赤色や青色の光。

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なんだ、普通にカッコいいではないか!

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そして人間がその円盤へと吸い込まれる様は実に強引で容赦のないこと。

だいたい翼も回転翼もジェット噴射らしき物もない円盤が宙に浮いて飛ぶだけでなく、人間を浮き上がらせることができる不思議さは昔から疑問です。

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その人間を連れ去る古典的な場面を現代風にアレンジして演出しているところにはまた好感が持てます。

冒頭の電話ボックスごと吸い上げられる演出や、あまりの力強さに腕がもがれるシーンも!

更には連れ去られて入ったUFOのいい感じに不気味なインテリア。

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やはり地球人とはまともなコミュニケーションなど取れない相手であることが感じられる場面です。


☆懐かしさを感じる照明のコントラスト

本作を観ていてなぜか懐かしい気持ちになる要素として、暗いシーンと強い光が放たれるシーンのコントラストにあります。

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監督やらそのほかのスタッフからして本作となんら関係ないのですが、私は『ロズウェル 星の恋人たち』を思い出しました。

アメリカで1999年から2002年にかけて放送され、日本でもNHKで放送されていたエイリアンSFドラマです。

あのドラマはとにかく照明のあて方が印象に残っていて、そこがエイリアンを扱った話としてのロマンを感じさせられる作品でした。

埃っぽい片田舎を舞台に、人物や家屋の室内に強い光があてられ、影との明暗の差がくっきりと現れるカットの数々。

映画やドラマというのはストーリーだけでなく、こういう場面ごとの明暗やアングルで全く印象が違ってきて、なんてことないシーンでも魅力的に映ります。

地球人の姿を借りたエイリアンたちが学校で恋愛したり、FBIに追われたりという世界観を見事に彩った演出で、自分もまた高校生だった頃に放送されていました。

よって私にとってはエイリアンSFの中でも、一際懐かしいという感覚があのドラマにはあり、そこが妙にワクワクさせられるんですね。

本作『エクストラ テレストリアル』は、エイリアンの恐怖を描いているにもかかわらず、決して重く暗くならない感覚が、高校生の青春や恋愛も描いていたあのドラマを思い出させてくれます。

そう、この学生の男女が並んでいる所など。

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…と言ってもこちらは主人公のカップルがケンカしてしまうシーンが目立ってます。


★様々なエイリアン(宇宙人)の描かれ方

エイリアン…宇宙人と呼び方は複数ありますが、その描かれ方は様々ですね。

地球人とあまり変わらない姿もあれば、今回取りあげた作品のような、いわゆる「グレイ」と言う頭が大きい種類もあります。

もっと地球人とかけはなれた姿であれば、リドリー・スコット監督『エイリアン』に登場する、H・R・ギーガーがデザインしたゼノモーフが当時は相当斬新であったと思われます。

頭から下は何気に人間ぽいところがむしろ可愛くない!

様々なエイリアンの中でも一際地球人とのコミュニケーションが不可能な類いで、まず出くわしたくないですね。

『インデペンデンス・デイ』のエイリアンは見た目もさることながら、まさに侵略者という設定により、アメリカの独立記念日になぞらえてカタルシスを観客に与える描写です。

そうですね…私が実在してほしいエイリアンと言えば、やはりスーパーマンですね。

え?!

あれをエイリアンと称する?

そうです!

クリプトン星からやってきた、超人的能力を持ちながらそれでいて純真な心を持つヒューマノイド・エイリアンですよ!

もう1つ私が好きなエイリアンと言えばゴジラ映画に登場するX星人です。

地球人と変わらぬ姿ですが不思議な格好です。

地球人の味方であるか否かは別にして、地球人とコミュニケーションが取れて、しかも地球人以上のテクノロジーと文明を持つエイリアンというのはやはりロマンを感じます。

話を『エクストラ テレストリアル』に戻しますが、本作は先にも述べたように昔からあるエイリアン絡みの話をモチーフにしているだけに、ラストも「ああ、そういうオチか」となります。

エイリアンの恐怖から結局そうなるか、という皮肉なラストです。

つまりは地球人の敵として描かれてはいるのですが、そこにやはり昔からある陰謀論が絡んでくるのですね。

その点も含めて実はあの『ロズウェル 星の恋人たち』に近いものがあります。

ところで本作のタイトルは略語で「E/T」と表記されています。

"Extra Terrestrial"とは「地球外」を意味するのですが、あのスピルバーグの『E.T.』はその略語だったんですね。


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