似ているタイトル3作品を観くらべてみた
- 2021/08/15
- 21:16
なんとなくSF作品を漁っていると、たまたま目にした3つの作品。
それぞれ似た邦題が付けられた作品が並んであって妙におかしかったのだが、何かの縁かもと思いつき、観くらべることにしました。
まず1つ目はこちら──
『地球が静止する日』(2008年 監督:スコット・デリクソン 出演:キアヌ・リーブス、ジェニファー・コネリー、キャシー・ベイツ 他)


地球が静止する日 (字幕版)[→Prime Video]
──地球に舞い降りた地球人の姿をした生命体。1951年の作品をキアヌ・リーブス主演でリメイク!──
何も知識がない状態から、まずはキアヌ・リーブスという有名俳優が主演の本作から観たのですが、後述する1951年の『地球の静止する日』のリメイク版ということを後で知りました。
ここまで似たタイトルだけに、何か関連はありそうだとは思っていました。
しかし「が」と「の」の違いというのがあまりにわかりやすいが、それでいてまぎらわしいです!
どっちがオリジナルでどっちがリメイクか、文字だけ読んだら見分けつけにくそうです。
内容はというと、地球に降りてきた謎の物体から巨大なロボットらしきものと、人間の姿をしたクラトゥと名乗る生命体が現れるところから始まります。
地球外生命体を描いた映画はたくさんありますが、ゴートというあのロボットは初見でなんじゃこりゃってなります。
なんとシンプルなルックス!
しかもあまり動かないです。
そしてキアヌ・リーブスが演じる、地球人と変わらぬ姿をした宇宙人・クラトゥはというと地球人に何か伝えたいことがあるのですが、これがなかなか理解されないもどかしい展開なんです。
地球人に敵意があるわけではなく、あくまで警告をしに来た宇宙人ですが、地球人には地球人の面倒な事情があります。
そのもどかしいやり取りを見ているうちに寝落ちしそうになりました…
物語の観点は興味深いのですが、起伏が物足りなくてちょっと退屈でもあります。
では本作のオリジナルはどうでしょうか──
『地球の静止する日』(1951年 監督:ロバート・ワイズ 出演:マイケル・レニー、パトリシア・ニール、ヒュー・マーロウ 他)


地球の静止する日(字幕版)[→Prime Video]
──冷戦と核開発の時代。地球人たちの前に現れた宇宙人を通して見る平和維持の尊さが描かれたSF作品。──
観る前からある程度予想はしていましたが、オリジナルの方が脚本には味わいがあります。
世界の対立は現代にもありますが、オリジナルは冷戦や核開発競争というはっきりした背景があり、賢い宇宙人が地球人に宇宙の平和を訴えたところで、それどころじゃないと言わんばかりの構図がシンプルに描かれています。
更にマイケル・レニーが演じる宇宙人・クラトゥの眼差しが良く、それだけで知的さが伝わってきます。
その彼があのリンカーンの有名な言葉を褒め称えるシーンに何とも言えない切なさと感動を覚えます。
しかし、一向に地球人からの理解が得られないままのもどかしさはリメイク版と同様で、途中で起伏に物足りなさを感じます。
このもどかしさも作品のコンセプトであるのでしょう。
だからこそ名作として語られているんだとも思えます。
おもしろいかどうかは別にして、現実における国家間の複雑さがよく表現された良作なんだということはわかります。
因みにBlu-rayという現代の高画質ソフトで観られる有り難みも、リメイク版よりモノクロのオリジナル版の方が大きいですね。
中に人が入っているのがまるわかりなオリジナルのゴートですが、一方でリメイク版はというとCG感出まくりで思うほど現代のVFX技術の恩恵が感じられません。
では3つ目にいきます。
『地球が静止した日』(2008年 監督:C・トーマス・ハウエル 出演:C・トーマス・ハウエル、ジャド・ネルソン、ダレン・ダルトン、シニード・マキャファティ、バグ・ホール 他)


地球が静止した日 (字幕版)[→Prime Video]※
──巨大ロボットとともに現れた宇宙人が警告する地球人の進みすぎた軍事力。地球人の真価とは何か?──
今度こそタイトルが似ているだけの、全く別の作品であることを予想していたのですが、裏切られました!
大まかなコンセプトは上の2作品と同じで、宇宙人が地球人に何かを警告しにやってくるという内容です。
しかもこの過去形を使ったなんちゃって感満載のタイトルと、ビデオ映画であるというところからくるB級という先入観も裏切られます。
確かに劇場公開の大作に比べれば低予算な内容ですが、表現の一つひとつは真面目で、ましてやパロディ路線なところもありません。
さらには登場するロボットもなぜかカッコいい!
(あまり動かないのは変わらずですが…)
VFXの面ではキアヌ・リーブス主演作品に遜色ない気がするのですが、ストーリーそのものがだいぶシンプルなところがチープではあります。
その分アクションで見せるので、ロボットのデザインも相まって上の2作品より娯楽性重視で観られます。
何よりも強い印象にあるのは、女性の宇宙人・スカイを演じているシニード・マキャファティの見事な裸体です。
(こういうエロ描写で見せるのが結局のところB級ですが…)
──助詞の違いや未来形と過去形の使い分けで似ているタイトル3作品を、何の予備知識なく比較してみたら、3つとも同じコンセプトの作品だったという発見をしました。
一番の良作はやはりロバート・ワイズ監督による1951年の作品だと思います。
派手な演出ではなく詩的なメッセージ重視のストーリーが本作の見所でしょう。


地球が静止する日 [Blu-ray][→Amazon]


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それぞれ似た邦題が付けられた作品が並んであって妙におかしかったのだが、何かの縁かもと思いつき、観くらべることにしました。
まず1つ目はこちら──
『地球が静止する日』(2008年 監督:スコット・デリクソン 出演:キアヌ・リーブス、ジェニファー・コネリー、キャシー・ベイツ 他)

──地球に舞い降りた地球人の姿をした生命体。1951年の作品をキアヌ・リーブス主演でリメイク!──
何も知識がない状態から、まずはキアヌ・リーブスという有名俳優が主演の本作から観たのですが、後述する1951年の『地球の静止する日』のリメイク版ということを後で知りました。
ここまで似たタイトルだけに、何か関連はありそうだとは思っていました。
しかし「が」と「の」の違いというのがあまりにわかりやすいが、それでいてまぎらわしいです!
どっちがオリジナルでどっちがリメイクか、文字だけ読んだら見分けつけにくそうです。
内容はというと、地球に降りてきた謎の物体から巨大なロボットらしきものと、人間の姿をしたクラトゥと名乗る生命体が現れるところから始まります。
地球外生命体を描いた映画はたくさんありますが、ゴートというあのロボットは初見でなんじゃこりゃってなります。
なんとシンプルなルックス!
しかもあまり動かないです。
そしてキアヌ・リーブスが演じる、地球人と変わらぬ姿をした宇宙人・クラトゥはというと地球人に何か伝えたいことがあるのですが、これがなかなか理解されないもどかしい展開なんです。
地球人に敵意があるわけではなく、あくまで警告をしに来た宇宙人ですが、地球人には地球人の面倒な事情があります。
そのもどかしいやり取りを見ているうちに寝落ちしそうになりました…
物語の観点は興味深いのですが、起伏が物足りなくてちょっと退屈でもあります。
では本作のオリジナルはどうでしょうか──
『地球の静止する日』(1951年 監督:ロバート・ワイズ 出演:マイケル・レニー、パトリシア・ニール、ヒュー・マーロウ 他)

──冷戦と核開発の時代。地球人たちの前に現れた宇宙人を通して見る平和維持の尊さが描かれたSF作品。──
観る前からある程度予想はしていましたが、オリジナルの方が脚本には味わいがあります。
世界の対立は現代にもありますが、オリジナルは冷戦や核開発競争というはっきりした背景があり、賢い宇宙人が地球人に宇宙の平和を訴えたところで、それどころじゃないと言わんばかりの構図がシンプルに描かれています。
更にマイケル・レニーが演じる宇宙人・クラトゥの眼差しが良く、それだけで知的さが伝わってきます。
その彼があのリンカーンの有名な言葉を褒め称えるシーンに何とも言えない切なさと感動を覚えます。
しかし、一向に地球人からの理解が得られないままのもどかしさはリメイク版と同様で、途中で起伏に物足りなさを感じます。
このもどかしさも作品のコンセプトであるのでしょう。
だからこそ名作として語られているんだとも思えます。
おもしろいかどうかは別にして、現実における国家間の複雑さがよく表現された良作なんだということはわかります。
因みにBlu-rayという現代の高画質ソフトで観られる有り難みも、リメイク版よりモノクロのオリジナル版の方が大きいですね。
中に人が入っているのがまるわかりなオリジナルのゴートですが、一方でリメイク版はというとCG感出まくりで思うほど現代のVFX技術の恩恵が感じられません。
では3つ目にいきます。
『地球が静止した日』(2008年 監督:C・トーマス・ハウエル 出演:C・トーマス・ハウエル、ジャド・ネルソン、ダレン・ダルトン、シニード・マキャファティ、バグ・ホール 他)

──巨大ロボットとともに現れた宇宙人が警告する地球人の進みすぎた軍事力。地球人の真価とは何か?──
今度こそタイトルが似ているだけの、全く別の作品であることを予想していたのですが、裏切られました!
大まかなコンセプトは上の2作品と同じで、宇宙人が地球人に何かを警告しにやってくるという内容です。
しかもこの過去形を使ったなんちゃって感満載のタイトルと、ビデオ映画であるというところからくるB級という先入観も裏切られます。
確かに劇場公開の大作に比べれば低予算な内容ですが、表現の一つひとつは真面目で、ましてやパロディ路線なところもありません。
さらには登場するロボットもなぜかカッコいい!
(あまり動かないのは変わらずですが…)
VFXの面ではキアヌ・リーブス主演作品に遜色ない気がするのですが、ストーリーそのものがだいぶシンプルなところがチープではあります。
その分アクションで見せるので、ロボットのデザインも相まって上の2作品より娯楽性重視で観られます。
何よりも強い印象にあるのは、女性の宇宙人・スカイを演じているシニード・マキャファティの見事な裸体です。
(こういうエロ描写で見せるのが結局のところB級ですが…)
──助詞の違いや未来形と過去形の使い分けで似ているタイトル3作品を、何の予備知識なく比較してみたら、3つとも同じコンセプトの作品だったという発見をしました。
一番の良作はやはりロバート・ワイズ監督による1951年の作品だと思います。
派手な演出ではなく詩的なメッセージ重視のストーリーが本作の見所でしょう。


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※『地球が静止した日』はこの記事をアップした現在のところ、Prime Videoで観られないのが残念です!
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