秘密を握られている恐怖を描いた『ラストサマー』シリーズ
- 2023/01/27
- 16:37
随分前に記事にした作品で『ラストサマー』シリーズがありますが、最近になって改めてあの作品が殺人鬼ホラーの古典的傑作の1つだなとふと思えてきます。
もともと思い入れのある作品ですが、何せ脚本が良いですね。
本作に登場する殺人鬼・フィッシャーマンは同時代の『スクリーム』シリーズに登場するゴーストフェイスほどのインパクトはないですが、まず襲われるはめになる主人公たちの経緯がおもしろいのです。
今回はそんな『ラストサマー』シリーズの魅力について、改めて再び語りたいと思います。
『ラストサマー』(1997年 監督:ジム・ギレスピー 脚本:ケヴィン・ウィリアムソン 出演:ジェニファー・ラブ・ヒューイット、サラ・ミシェル・ゲラー、ライアン・フィリップ、フレディ・プリンゼ・ジュニア 他)


ラストサマー[→Prime Video]
【あらすじ】──高校生活最後の夏の夜、ジュリーたち4人は車で男を轢いてしまう。
卒業後の将来を危ぶんだ4人は男の死体を海に投げて隠蔽する。
1年後の夏、大学に進学したジュリーに「去年の夏のことを知っている」と書かれた手紙が届く。──
☆後ろめたい過去を持つ主人公視点の恐怖
本作に登場する殺人鬼は前述したように、決してインパクトはありません。
見た目はコートを着て鉤爪を持った漁師です。
本作の恐怖を感じさせる要素は主人公のジュリーをはじめとした襲われる側の境遇です。
卒業を目前に控えた高校生たちがパーティーで羽目をはずしてしまうというシチュエーションはありがちですが、そこで彼らは車で男を轢いてしまいます。
そしてそれを隠すために死体を海に投げ捨てます。
その1年後の夏に「去年の夏のことを知っている」という手紙がジュリーに届きます。
殺人鬼に襲われる恐怖と同時に、知られたくない秘密を握られている恐怖がつきまとうところが他にない本作の見所です。
そもそもあんな秘密を抱えている者たちは、いい顔していません!
そういう様が、後味悪い卒業後の道を進んでいる憂鬱さを物語っています。
ジュリー自身は正直に通報しようと言っている立場だったのですが、仲間の1人がホラー映画あるあるのうざキャラで、その男が死体を海に投げて隠蔽する言い出しっぺなもんだから、ジュリーはちょっとかわいそうなんです。
しかし、この知られたくない過去を持ちながら襲われるというせっかくの恐怖感を薄めてしまう原因として、あの鉤爪の男ときたら関係ない者まで殺してしまいます。
自分を海に投げた者たちだけでなく、罪のない者まで殺す意味で普通にヤバい殺人鬼なので、そいつと戦うジュリーたち4人が完全に被害者として成立してしまう皮肉です。
以降、主人公たちが普通に善人の立場として殺人鬼と戦うストレートな展開に解決させているのが良いのか悪いのか。
まあ、ひと安心とは言えます。
そしてその続編がこちら──
『ラストサマー2』(1998年 監督:ダニー・キャノン 脚本:トレイ・キャラウェイ、スティーヴン・ギャガン 出演:ジェニファー・ラブ・ヒューイット、ブランディ、フレディ・プリンゼ・ジュニア、メキ・ファイファー 他)


ラストサマー2[→Prime Video]
【あらすじ】──フィッシャーマンによる殺人事件から1年。
ジュリーはルームメイトたちとバハマへ旅行に行くことになる。
しかし、嵐が近づく島のホテルの部屋で、ジュリーはスタッフの死体を目撃する。
フィッシャーマンが再びジュリーに襲いかかろうとしていた。──
★フィッシャーマンの過去があきらかになる続編
本作はフィッシャーマンが無関係な者まで殺していく展開に前作からの新しさはありませんが、再び主要人物として登場するジュリーとボーイフレンドのレイがさらに魅力ある人物に描かれています。
まず前作に続いてジェニファー・ラブ・ヒューイットが演じるジュリーが可愛い!
事件から1年たっても恐怖に苦しめられて疲れきっている感じが余計に魅力です。
ホラーに登場する美人あるあるな映え方です。
そしてフレディ・プリンゼ・ジュニアが続役で演じているレイがカッコいいんです。
前作ではあの男を轢いた車を運転していた人物で、その後は殺人鬼フィッシャーマンではないかと疑われたりとあまり輝かしいポジションではなかったのですが、2作目ではジュリーを守るための英雄ぶりを発揮します。
バハマの島まで船を出せと頼んでも嵐のせいで拒否された彼は自ら船を操縦して行きます。
職業が漁師であるという設定をムダ遣いしていない!
で、本題はここからで、本作は旅行先のバハマの島でなんとフィッシャーマンことベン・ウィリスのルーツがあきらかにされます。
海に投げ捨てられた哀れさを通り越す異常な殺人鬼ぶりを前作から見せてくれていましたが、続編ではやはりもとからヤバい奴であることを実感させられる描写。
そして意外な共犯者、というよりその共犯者のフィッシャーマンとの関係が意外というところで捻りのあるストーリーです。
・・・え?3作目ですか?
そうなんですよ!
このシリーズは3作目まであります。
ただ、劇場公開はされずビデオ映画としてリリースされた作品で、キャストも一新されているという点で前2作とは扱われ方が違う作品です。
では──
『ラストサマー3』(2006年 監督:シルヴァン・ホワイト 脚本:マイケル・D・ウェイス 出演:ブルック・ネヴィン、デヴィッド・パートコー、トーレイ・デヴィート、ベン・イースター 他)


ラストサマー3[→Prime Video]
【あらすじ】──遊園地でフィッシャーマンの仮装をしたイタズラをしたことにより、仲間の1人が死亡する事故が起きる。
仲間たちはイタズラのことを秘密にする約束をするが、1年後にアンバーの携帯電話に『去年の夏のことを知っている』というメールが届く。
同じメールは皆にも送られ、次々と仲間が殺されていく。──
☆秘密を隠すのは苦しいと改めて思う原点回帰
前2作とは一応ストーリーのつながりはある本作は、フィッシャーマンの存在を完全な化け物にしてしまい、不評なところもあります。
そりゃ何でもありになってしまいますね。
死してなおも、はしゃぐ若者が憎いか?フィッシャーマン!
ストーリーだけで見て本作の良いところは、自分たちの過失を秘密にして1年後に強迫のメッセージが届くところから恐怖が始まるという1作目の持ち味を再び活かしているところにあります。
しかしながら1作目の焼き増しにならないようにするためには、あとは殺人鬼を化け物にしなければ新しさが生まれないわけですね。
無理して作る必要のある3作目だったのかという疑問が沸きますが、原点回帰しつつ新しい要素も入れているところは良いです。
しかも前2作にはない安っぽさが映像から伝わるため、皮肉にも普通のB級殺人鬼ホラーとして観れてしまう意味では、そのような作品が好きな人にはそれなりに楽しめてしまいます。
ネームバリュー抜きに観れば、私にとっては割りと好きな部類です。
たぶん本作だけブルーレイが発売されていないという意味でも、やはり後づけの蛇足感ある作品という扱われ方をされているように思えます。
少なくとも3部作の3作目という構えで観る作品ではありません。
前作から数年が経過し、フィッシャーマンが都市伝説的な話として語り継がれる世界を舞台にした単体作品として観たほうがおもしろいです。


ラストサマー [Blu-ray][→Amazon]


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もともと思い入れのある作品ですが、何せ脚本が良いですね。
本作に登場する殺人鬼・フィッシャーマンは同時代の『スクリーム』シリーズに登場するゴーストフェイスほどのインパクトはないですが、まず襲われるはめになる主人公たちの経緯がおもしろいのです。
今回はそんな『ラストサマー』シリーズの魅力について、改めて再び語りたいと思います。
『ラストサマー』(1997年 監督:ジム・ギレスピー 脚本:ケヴィン・ウィリアムソン 出演:ジェニファー・ラブ・ヒューイット、サラ・ミシェル・ゲラー、ライアン・フィリップ、フレディ・プリンゼ・ジュニア 他)

【あらすじ】──高校生活最後の夏の夜、ジュリーたち4人は車で男を轢いてしまう。
卒業後の将来を危ぶんだ4人は男の死体を海に投げて隠蔽する。
1年後の夏、大学に進学したジュリーに「去年の夏のことを知っている」と書かれた手紙が届く。──
☆後ろめたい過去を持つ主人公視点の恐怖
本作に登場する殺人鬼は前述したように、決してインパクトはありません。
見た目はコートを着て鉤爪を持った漁師です。
本作の恐怖を感じさせる要素は主人公のジュリーをはじめとした襲われる側の境遇です。
卒業を目前に控えた高校生たちがパーティーで羽目をはずしてしまうというシチュエーションはありがちですが、そこで彼らは車で男を轢いてしまいます。
そしてそれを隠すために死体を海に投げ捨てます。
その1年後の夏に「去年の夏のことを知っている」という手紙がジュリーに届きます。
殺人鬼に襲われる恐怖と同時に、知られたくない秘密を握られている恐怖がつきまとうところが他にない本作の見所です。
そもそもあんな秘密を抱えている者たちは、いい顔していません!
そういう様が、後味悪い卒業後の道を進んでいる憂鬱さを物語っています。
ジュリー自身は正直に通報しようと言っている立場だったのですが、仲間の1人がホラー映画あるあるのうざキャラで、その男が死体を海に投げて隠蔽する言い出しっぺなもんだから、ジュリーはちょっとかわいそうなんです。
しかし、この知られたくない過去を持ちながら襲われるというせっかくの恐怖感を薄めてしまう原因として、あの鉤爪の男ときたら関係ない者まで殺してしまいます。
自分を海に投げた者たちだけでなく、罪のない者まで殺す意味で普通にヤバい殺人鬼なので、そいつと戦うジュリーたち4人が完全に被害者として成立してしまう皮肉です。
以降、主人公たちが普通に善人の立場として殺人鬼と戦うストレートな展開に解決させているのが良いのか悪いのか。
まあ、ひと安心とは言えます。
そしてその続編がこちら──
『ラストサマー2』(1998年 監督:ダニー・キャノン 脚本:トレイ・キャラウェイ、スティーヴン・ギャガン 出演:ジェニファー・ラブ・ヒューイット、ブランディ、フレディ・プリンゼ・ジュニア、メキ・ファイファー 他)

【あらすじ】──フィッシャーマンによる殺人事件から1年。
ジュリーはルームメイトたちとバハマへ旅行に行くことになる。
しかし、嵐が近づく島のホテルの部屋で、ジュリーはスタッフの死体を目撃する。
フィッシャーマンが再びジュリーに襲いかかろうとしていた。──
★フィッシャーマンの過去があきらかになる続編
本作はフィッシャーマンが無関係な者まで殺していく展開に前作からの新しさはありませんが、再び主要人物として登場するジュリーとボーイフレンドのレイがさらに魅力ある人物に描かれています。
まず前作に続いてジェニファー・ラブ・ヒューイットが演じるジュリーが可愛い!
事件から1年たっても恐怖に苦しめられて疲れきっている感じが余計に魅力です。
ホラーに登場する美人あるあるな映え方です。
そしてフレディ・プリンゼ・ジュニアが続役で演じているレイがカッコいいんです。
前作ではあの男を轢いた車を運転していた人物で、その後は殺人鬼フィッシャーマンではないかと疑われたりとあまり輝かしいポジションではなかったのですが、2作目ではジュリーを守るための英雄ぶりを発揮します。
バハマの島まで船を出せと頼んでも嵐のせいで拒否された彼は自ら船を操縦して行きます。
職業が漁師であるという設定をムダ遣いしていない!
で、本題はここからで、本作は旅行先のバハマの島でなんとフィッシャーマンことベン・ウィリスのルーツがあきらかにされます。
海に投げ捨てられた哀れさを通り越す異常な殺人鬼ぶりを前作から見せてくれていましたが、続編ではやはりもとからヤバい奴であることを実感させられる描写。
そして意外な共犯者、というよりその共犯者のフィッシャーマンとの関係が意外というところで捻りのあるストーリーです。
・・・え?3作目ですか?
そうなんですよ!
このシリーズは3作目まであります。
ただ、劇場公開はされずビデオ映画としてリリースされた作品で、キャストも一新されているという点で前2作とは扱われ方が違う作品です。
では──
『ラストサマー3』(2006年 監督:シルヴァン・ホワイト 脚本:マイケル・D・ウェイス 出演:ブルック・ネヴィン、デヴィッド・パートコー、トーレイ・デヴィート、ベン・イースター 他)

【あらすじ】──遊園地でフィッシャーマンの仮装をしたイタズラをしたことにより、仲間の1人が死亡する事故が起きる。
仲間たちはイタズラのことを秘密にする約束をするが、1年後にアンバーの携帯電話に『去年の夏のことを知っている』というメールが届く。
同じメールは皆にも送られ、次々と仲間が殺されていく。──
☆秘密を隠すのは苦しいと改めて思う原点回帰
前2作とは一応ストーリーのつながりはある本作は、フィッシャーマンの存在を完全な化け物にしてしまい、不評なところもあります。
そりゃ何でもありになってしまいますね。
死してなおも、はしゃぐ若者が憎いか?フィッシャーマン!
ストーリーだけで見て本作の良いところは、自分たちの過失を秘密にして1年後に強迫のメッセージが届くところから恐怖が始まるという1作目の持ち味を再び活かしているところにあります。
しかしながら1作目の焼き増しにならないようにするためには、あとは殺人鬼を化け物にしなければ新しさが生まれないわけですね。
無理して作る必要のある3作目だったのかという疑問が沸きますが、原点回帰しつつ新しい要素も入れているところは良いです。
しかも前2作にはない安っぽさが映像から伝わるため、皮肉にも普通のB級殺人鬼ホラーとして観れてしまう意味では、そのような作品が好きな人にはそれなりに楽しめてしまいます。
ネームバリュー抜きに観れば、私にとっては割りと好きな部類です。
たぶん本作だけブルーレイが発売されていないという意味でも、やはり後づけの蛇足感ある作品という扱われ方をされているように思えます。
少なくとも3部作の3作目という構えで観る作品ではありません。
前作から数年が経過し、フィッシャーマンが都市伝説的な話として語り継がれる世界を舞台にした単体作品として観たほうがおもしろいです。



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- テーマ:映画感想
- ジャンル:映画
- カテゴリ:ホラー映画
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