『コングレス未来学会議』──映画で役者がいなくなる?!
- 2016/12/11
- 03:13
人工知能(A.I.)や遺伝子操作に関する問題は、ニュースなどにも取り上げられ、昔も今もどこか現実からの地続き感のあるSFというジャンルで映画にされています。
このイスラエル・フランス合作の映画も、ざっくりとジャンルで言い表すなら近未来SFになるでしょう。
『コングレス未来学会議』(2013年 脚本・監督:アリ・フォルマン 出演:ロビン・ライト、ハーベイ・カイテル、ポール・ジアマッティ 他)


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しかし、そこには人工知能や遺伝子操作とはまた違った発展の姿を背景に、観る者を考えさせ、悲しくもさせるような憂鬱感があります。
そしてこれはある意味、より現実味のあるテーマともとれる内容ではないでしょうか?
【あらすじ】──俳優の絶頂期の姿をスキャンし、そのデジタルデータで映画を制作するビジネスが開発されたハリウッド。
難病の息子を抱えるシングルマザーで女優のロビン(ロビン・ライト)にもそのビジネスの声がかかる。
始めは拒否し続けていた彼女。
しかし、40歳を過ぎて女優の仕事が減っていく彼女は悩んだすえ、息子を養い続けるために巨額のギャラと引き換えにミラマウント社と契約を結ぶことを決める。
20年後、さらなる文明が加速した世界。
ミラマウント社はグループ会社のミラマウント=ナガサキが開発した薬物により、誰でも彼女になれるという契約をロビンに結ばせようとする。──
すでに映画は、必ずしもロケ地があって演じる役者がいて、そして撮影されて制作される物ではなく、コンピュータ上で作られる作品もたくさんある現在。
たとえ実写であっても、観ている側にはわからないレベルで必要に応じて加工された映像を、私たちは観ているということもあるでしょう。
あの『タイタニック』だって、当時の技術にして、実写と見分けがつかないようなCGを全部において駆使したシーンがありました。
そんな現実にある技術にさらなる拍車をかけたような「生身の役者が演じていない実写映画」
キアヌ・リーブスがすでにこのビジネスと契約を結んでいるという設定…、ここでキアヌ・リーブスの名前を使う制作者の考えはちょっとわかりません。
さらにはロビンとの古くからの仕事仲間であるのだろう男との会話。
「優秀な撮影監督だったじゃない」
「職があるだけマシさ」
そう、映画は撮影する必要がなくなり、その男は撮影監督の職を失っていたのです。
そして彼の今の仕事は、役者の姿をスキャンすること──。
主人公ロビンのあらゆる表情をスキャンするシーン。
彼女の役者としての実力が垣間見られると同時に、なんとも悲しいシーンでもあります。
そして場面はかわり、20年後へ。
この作品の注目すべきところは、ここからほぼ全てのシーンがアニメーションで描かれていることです。
ミラマウント=ナガサキの開発した薬物により、アニメの幻覚の中を車で走っていくロビン。
実写のシーンとアニメのシーンが両方使われてると聞いて『ラン・ローラ・ラン』のようなスタイリッシュな作品を思い浮かべたいかもしれないけど、そんないいものではない。
観ている私たちも同じくアニメで観ることにより、主人公の気持ちを疑似体験させられます。
それは決して気持ちのいいものではなく、むしろ憂鬱な感覚に陥るのは私だけでしょうか?
「頼む、いいかげん実写の映像に戻ってくれ」
そんなことを思いながらもアニメの幻覚の中を進んでいく彼女の姿、成り行きを見届けていくことになります。
誰がこう望んだのか、否応なしに一企業の意向により作り出された技術と変わりゆく世界。
この内容を一度観ただけでは、正直なところ展開をうまく呑み込めないかもしれません。
どう解釈したらよいのだろう…。
「自由選択の時代」
つまりは目の前に起こること、自分の生きる世界を自分で選ぶことができるということか!?
そしてこれだけの異彩を放った近未来SF描写の中にも、ラストは親子の愛を切なく描いた作品でもあるということを感じます。
ロビンが選択した世界──。
それではあなたもロビン・ライトになった気持ちでこの世界に呑み込まれてみてください。


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このイスラエル・フランス合作の映画も、ざっくりとジャンルで言い表すなら近未来SFになるでしょう。
『コングレス未来学会議』(2013年 脚本・監督:アリ・フォルマン 出演:ロビン・ライト、ハーベイ・カイテル、ポール・ジアマッティ 他)

しかし、そこには人工知能や遺伝子操作とはまた違った発展の姿を背景に、観る者を考えさせ、悲しくもさせるような憂鬱感があります。
そしてこれはある意味、より現実味のあるテーマともとれる内容ではないでしょうか?
【あらすじ】──俳優の絶頂期の姿をスキャンし、そのデジタルデータで映画を制作するビジネスが開発されたハリウッド。
難病の息子を抱えるシングルマザーで女優のロビン(ロビン・ライト)にもそのビジネスの声がかかる。
始めは拒否し続けていた彼女。
しかし、40歳を過ぎて女優の仕事が減っていく彼女は悩んだすえ、息子を養い続けるために巨額のギャラと引き換えにミラマウント社と契約を結ぶことを決める。
20年後、さらなる文明が加速した世界。
ミラマウント社はグループ会社のミラマウント=ナガサキが開発した薬物により、誰でも彼女になれるという契約をロビンに結ばせようとする。──
すでに映画は、必ずしもロケ地があって演じる役者がいて、そして撮影されて制作される物ではなく、コンピュータ上で作られる作品もたくさんある現在。
たとえ実写であっても、観ている側にはわからないレベルで必要に応じて加工された映像を、私たちは観ているということもあるでしょう。
あの『タイタニック』だって、当時の技術にして、実写と見分けがつかないようなCGを全部において駆使したシーンがありました。
そんな現実にある技術にさらなる拍車をかけたような「生身の役者が演じていない実写映画」
キアヌ・リーブスがすでにこのビジネスと契約を結んでいるという設定…、ここでキアヌ・リーブスの名前を使う制作者の考えはちょっとわかりません。
さらにはロビンとの古くからの仕事仲間であるのだろう男との会話。
「優秀な撮影監督だったじゃない」
「職があるだけマシさ」
そう、映画は撮影する必要がなくなり、その男は撮影監督の職を失っていたのです。
そして彼の今の仕事は、役者の姿をスキャンすること──。
主人公ロビンのあらゆる表情をスキャンするシーン。
彼女の役者としての実力が垣間見られると同時に、なんとも悲しいシーンでもあります。
そして場面はかわり、20年後へ。
この作品の注目すべきところは、ここからほぼ全てのシーンがアニメーションで描かれていることです。
ミラマウント=ナガサキの開発した薬物により、アニメの幻覚の中を車で走っていくロビン。
実写のシーンとアニメのシーンが両方使われてると聞いて『ラン・ローラ・ラン』のようなスタイリッシュな作品を思い浮かべたいかもしれないけど、そんないいものではない。
観ている私たちも同じくアニメで観ることにより、主人公の気持ちを疑似体験させられます。
それは決して気持ちのいいものではなく、むしろ憂鬱な感覚に陥るのは私だけでしょうか?
「頼む、いいかげん実写の映像に戻ってくれ」
そんなことを思いながらもアニメの幻覚の中を進んでいく彼女の姿、成り行きを見届けていくことになります。
誰がこう望んだのか、否応なしに一企業の意向により作り出された技術と変わりゆく世界。
この内容を一度観ただけでは、正直なところ展開をうまく呑み込めないかもしれません。
どう解釈したらよいのだろう…。
「自由選択の時代」
つまりは目の前に起こること、自分の生きる世界を自分で選ぶことができるということか!?
そしてこれだけの異彩を放った近未来SF描写の中にも、ラストは親子の愛を切なく描いた作品でもあるということを感じます。
ロビンが選択した世界──。
それではあなたもロビン・ライトになった気持ちでこの世界に呑み込まれてみてください。
