それでも平成ゴジラVSシリーズが好き!──全てはここから始まった!初代『ゴジラ』
★日本映画界を震撼させた『シン・ゴジラ』
2016年は庵野秀明監督『シン・ゴジラ』が予想以上に大ヒットし、日本映画界を賑わせました。
ただの怪獣映画ではなく、有事や災害が起きたときの日本政府の対応や選択などをゴジラという怪獣を使って顕在化し、虚構の中でのリアリティが追求された作品でした。
ところでこの『シン・ゴジラ』以前のゴジラシリーズは1954年の第1作目から2004年の『ゴジラ FINAL WARS』まで28作品が製作されてきました。
これらのシリーズは時期によって大きく3つの区切りがつけられています。
1つ目は昭和ゴジラシリーズ、2つ目は平成ゴジラVSシリーズ、3つ目はミレニアムシリーズ(と呼べばよいでしょうか?)です。
これらに関しては世代によって、それぞれリアルタイムで知ってるシリーズや古くて知らないシリーズ、まだ手をつけていないシリーズなんていうのもあると思います。
そしてその中でまた人それぞれ、強い思い入れがある作品というのがゴジラファンにはあるのではないでしょうか。
それこそ世代問わず『シン・ゴジラ』が初めてのゴジラだという人もいるでしょう。
現代的な視点でのリアリティや現代の技術を駆使したVFXで、最高と呼べる形で作られたのが、この2016年の新しいゴジラではないでしょうか。
私もこの庵野秀明監督の独自の発想も盛り込んだ作品を劇場で観ておいて本当に良かったと思えます。
☆90年代を駆け抜けた平成ゴジラVSシリーズ!
しかし私にとって、「それでもやっぱり未だに捨てきれない、強い思い入れのある作品たち」が過去のゴジラ映画シリーズにあります。
それは80年代の終わりから90年代前半を駆け抜けた"平成ゴジラVSシリーズ"です。
この当時、私は小学生時代の真っただ中でした。
とりわけ1991年から1995年までは、毎年12月には新しいゴジラが公開された、平成におけるゴジラ全盛時代でした。
新作公開に合わせて前作がテレビで放送されたり、深夜に昭和のゴジラシリーズが放送されていたりしていました。
この平成ゴジラVSシリーズは、今の進んだVFX技術や、近年のリアリティ重視な感覚からすれば、どこかチープでツッコミどころも多い表現があったりします(それでもこの当時はすごかった!)。
しかし、昭和のシリーズから受け継ぐミニチュアを駆使した特撮がまだ主流だった頃で、今のCGとはまた違った創造性を感じさせる作品です。
重量感がありつつ激しく暴れ、当たり前のように熱戦を吐くゴジラ。
そこに立ちはだかる個性的な敵怪獣たち。
現実の兵器に、架空の兵器も取り入れたSF色の強い演出。
風刺的なメッセージ性は残しつつも、テンポ良いストーリーの娯楽作品たち──。
『シン・ゴジラ』の興奮に触発されて、思い出したように20年以上も前の作品たちを改めて観なおした中で気づいたことは──"やっぱり私は平成ゴジラVSシリーズが好き"ということです。
というわけで、この当時をリアルタイムで過ごした者として、その作品たちの魅力をこれから8回に渡って述べていきたいと思います。
★全てはここから始まった!水爆実験で目覚めた怪獣
『ゴジラ』(1954年 監督:本多猪四郎 特撮:円谷英二 出演:宝田明、河内桃子、平田昭彦、志村喬 他)


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さて、いきなりで申し訳ないのですが、今回と次回の記事は平成ゴジラではありません。
ただ、その後の平成ゴジラにつながる作品として是非とも取り上げたいところです。
1954年と1984年の作品がそれぞれ、平成シリーズにどのようにつながっていくか。
ゴジラがいかにして誕生し、発展していったか。
まずはこの1954年に公開された記念すべき第1作目の話しから入ります。
【あらすじ】──太平洋の小笠原諸島近海で貨物船が沈没。
大戸島の漁船が生存者を救助し、大戸島に連れ帰ろうとするが、彼らも消息を絶ってしまう。
そしてある夜、何者かが足音を響かせながら島に上陸し、家屋を破壊する。
調査団として島に派遣された古生物学者の山根恭平(志村喬)と娘の恵美子(河内桃子)、そして南海サルベージ所員の尾形秀人(宝田明)
そこで彼らは巨大な生物と遭遇。
それは水爆実験により安住の地を追われた太古の怪獣ゴジラだった。
爆撃や高圧電流も物ともせず、東京に上陸し、街を破壊していくゴジラ。
そんな中、恵美子の元婚約者である芹沢大助(平田昭彦)はとある化学物質の研究を行っていた。──
☆戦後わずか9年に製作された風刺映画
1945年、広島と長崎に投下された原爆により、日本は敗戦しました。
その後、1946年から1958年の間、アメリカはビキニ環礁で23回にわたる核実験を行います。
1954年に行われた水爆実験では日本のマグロ漁船が被曝、船長が犠牲になる事件が発生。
またビキニ環礁から約240km離れたロンゲラップ環礁の島民も被曝し、避難しました。
そんな核実験による平和への脅威を、怪獣という存在に置き換えて描写されているのが『ゴジラ』です。
日本が敗戦し、戦勝国側の正義感で作られる世界──。
その戦勝国であるアメリカが行った核実験は正義どころか、罪のない犠牲者を出し、そんな罪のない人々の島を住めない土地へと変えました。
平和とは何か──
この『ゴジラ』という作品は、敗戦からわずか9年に、日本が世にメッセージをたたきつけた挑戦的な風刺映画と言えます。
★新たな平和への脅威を危惧する芹沢博士の苦悩
白衣姿に黒い眼帯──。
ゴジラを倒すうえで、物語のキーパーソンとなる芹沢大助。
彼は酸素の研究をしている際に、あらゆる生物を死滅させ液状化してしまう化学物質を発見します。
それが劇中に登場する架空の兵器「オキシジェン・デストロイヤー」です。
尾形と恵美子は、ゴジラを殺すために、このオキシジェン・デストロイヤーを使わせてほしいと必死に懇願します。
しかしオキシジェン・デストロイヤーは原水爆に匹敵する大量破壊兵器。
芹沢博士はこの存在と製造方法が知れわたれば、為政者たちは必ずや戦争の道具に利用するだろうと、拒否します。
それでも尾形と恵美子の熱意、そしてテレビから流れる「平和への祈り」に心を動かされ、「今回一回かぎり」の条件でオキシジェン・デストロイヤーの使用を認め、すべての資料を焼却します。
このシーンでの芹沢博士の言葉に、作品の最も重要なメッセージが込められています。
最後には、何もアメリカの核実験だけを名指しで批判するのではない。
オキシジェン・デストロイヤーという架空の、新たな兵器を登場させることによって、人類による「科学の暴走」全般への風刺的メッセージを、この映画は示したかったのではないかと私は思います。
─この第1作目の『ゴジラ』は、その後の多くの作品と違って、まず鳴き声が重く低い響きとなっています。
悲しみにも似た、人間への怒りが込められたような鳴き声です。
そしてゴジラにより殺されていく人々の姿、ゴジラの放射能で被曝した子供がガイガーカウンターで汚染を測定されるシーン、負傷した母親を見て泣く子供の声など、恐ろしいほどリアルな描写が見受けられます。
では次回はこの30年後に登場し、その後のVSシリーズ1作目『ゴジラvsビオランテ』の直接の前作となる1984年の『ゴジラ』のお話しをしたいと思います。


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2016年は庵野秀明監督『シン・ゴジラ』が予想以上に大ヒットし、日本映画界を賑わせました。
ただの怪獣映画ではなく、有事や災害が起きたときの日本政府の対応や選択などをゴジラという怪獣を使って顕在化し、虚構の中でのリアリティが追求された作品でした。
ところでこの『シン・ゴジラ』以前のゴジラシリーズは1954年の第1作目から2004年の『ゴジラ FINAL WARS』まで28作品が製作されてきました。
これらのシリーズは時期によって大きく3つの区切りがつけられています。
1つ目は昭和ゴジラシリーズ、2つ目は平成ゴジラVSシリーズ、3つ目はミレニアムシリーズ(と呼べばよいでしょうか?)です。
これらに関しては世代によって、それぞれリアルタイムで知ってるシリーズや古くて知らないシリーズ、まだ手をつけていないシリーズなんていうのもあると思います。
そしてその中でまた人それぞれ、強い思い入れがある作品というのがゴジラファンにはあるのではないでしょうか。
それこそ世代問わず『シン・ゴジラ』が初めてのゴジラだという人もいるでしょう。
現代的な視点でのリアリティや現代の技術を駆使したVFXで、最高と呼べる形で作られたのが、この2016年の新しいゴジラではないでしょうか。
私もこの庵野秀明監督の独自の発想も盛り込んだ作品を劇場で観ておいて本当に良かったと思えます。
☆90年代を駆け抜けた平成ゴジラVSシリーズ!
しかし私にとって、「それでもやっぱり未だに捨てきれない、強い思い入れのある作品たち」が過去のゴジラ映画シリーズにあります。
それは80年代の終わりから90年代前半を駆け抜けた"平成ゴジラVSシリーズ"です。
この当時、私は小学生時代の真っただ中でした。
とりわけ1991年から1995年までは、毎年12月には新しいゴジラが公開された、平成におけるゴジラ全盛時代でした。
新作公開に合わせて前作がテレビで放送されたり、深夜に昭和のゴジラシリーズが放送されていたりしていました。
この平成ゴジラVSシリーズは、今の進んだVFX技術や、近年のリアリティ重視な感覚からすれば、どこかチープでツッコミどころも多い表現があったりします(それでもこの当時はすごかった!)。
しかし、昭和のシリーズから受け継ぐミニチュアを駆使した特撮がまだ主流だった頃で、今のCGとはまた違った創造性を感じさせる作品です。
重量感がありつつ激しく暴れ、当たり前のように熱戦を吐くゴジラ。
そこに立ちはだかる個性的な敵怪獣たち。
現実の兵器に、架空の兵器も取り入れたSF色の強い演出。
風刺的なメッセージ性は残しつつも、テンポ良いストーリーの娯楽作品たち──。
『シン・ゴジラ』の興奮に触発されて、思い出したように20年以上も前の作品たちを改めて観なおした中で気づいたことは──"やっぱり私は平成ゴジラVSシリーズが好き"ということです。
というわけで、この当時をリアルタイムで過ごした者として、その作品たちの魅力をこれから8回に渡って述べていきたいと思います。
★全てはここから始まった!水爆実験で目覚めた怪獣
『ゴジラ』(1954年 監督:本多猪四郎 特撮:円谷英二 出演:宝田明、河内桃子、平田昭彦、志村喬 他)

さて、いきなりで申し訳ないのですが、今回と次回の記事は平成ゴジラではありません。
ただ、その後の平成ゴジラにつながる作品として是非とも取り上げたいところです。
1954年と1984年の作品がそれぞれ、平成シリーズにどのようにつながっていくか。
ゴジラがいかにして誕生し、発展していったか。
まずはこの1954年に公開された記念すべき第1作目の話しから入ります。
【あらすじ】──太平洋の小笠原諸島近海で貨物船が沈没。
大戸島の漁船が生存者を救助し、大戸島に連れ帰ろうとするが、彼らも消息を絶ってしまう。
そしてある夜、何者かが足音を響かせながら島に上陸し、家屋を破壊する。
調査団として島に派遣された古生物学者の山根恭平(志村喬)と娘の恵美子(河内桃子)、そして南海サルベージ所員の尾形秀人(宝田明)
そこで彼らは巨大な生物と遭遇。
それは水爆実験により安住の地を追われた太古の怪獣ゴジラだった。
爆撃や高圧電流も物ともせず、東京に上陸し、街を破壊していくゴジラ。
そんな中、恵美子の元婚約者である芹沢大助(平田昭彦)はとある化学物質の研究を行っていた。──
☆戦後わずか9年に製作された風刺映画
1945年、広島と長崎に投下された原爆により、日本は敗戦しました。
その後、1946年から1958年の間、アメリカはビキニ環礁で23回にわたる核実験を行います。
1954年に行われた水爆実験では日本のマグロ漁船が被曝、船長が犠牲になる事件が発生。
またビキニ環礁から約240km離れたロンゲラップ環礁の島民も被曝し、避難しました。
そんな核実験による平和への脅威を、怪獣という存在に置き換えて描写されているのが『ゴジラ』です。
日本が敗戦し、戦勝国側の正義感で作られる世界──。
その戦勝国であるアメリカが行った核実験は正義どころか、罪のない犠牲者を出し、そんな罪のない人々の島を住めない土地へと変えました。
平和とは何か──
この『ゴジラ』という作品は、敗戦からわずか9年に、日本が世にメッセージをたたきつけた挑戦的な風刺映画と言えます。
★新たな平和への脅威を危惧する芹沢博士の苦悩
白衣姿に黒い眼帯──。
ゴジラを倒すうえで、物語のキーパーソンとなる芹沢大助。
彼は酸素の研究をしている際に、あらゆる生物を死滅させ液状化してしまう化学物質を発見します。
それが劇中に登場する架空の兵器「オキシジェン・デストロイヤー」です。
尾形と恵美子は、ゴジラを殺すために、このオキシジェン・デストロイヤーを使わせてほしいと必死に懇願します。
しかしオキシジェン・デストロイヤーは原水爆に匹敵する大量破壊兵器。
芹沢博士はこの存在と製造方法が知れわたれば、為政者たちは必ずや戦争の道具に利用するだろうと、拒否します。
それでも尾形と恵美子の熱意、そしてテレビから流れる「平和への祈り」に心を動かされ、「今回一回かぎり」の条件でオキシジェン・デストロイヤーの使用を認め、すべての資料を焼却します。
このシーンでの芹沢博士の言葉に、作品の最も重要なメッセージが込められています。
最後には、何もアメリカの核実験だけを名指しで批判するのではない。
オキシジェン・デストロイヤーという架空の、新たな兵器を登場させることによって、人類による「科学の暴走」全般への風刺的メッセージを、この映画は示したかったのではないかと私は思います。
─この第1作目の『ゴジラ』は、その後の多くの作品と違って、まず鳴き声が重く低い響きとなっています。
悲しみにも似た、人間への怒りが込められたような鳴き声です。
そしてゴジラにより殺されていく人々の姿、ゴジラの放射能で被曝した子供がガイガーカウンターで汚染を測定されるシーン、負傷した母親を見て泣く子供の声など、恐ろしいほどリアルな描写が見受けられます。
では次回はこの30年後に登場し、その後のVSシリーズ1作目『ゴジラvsビオランテ』の直接の前作となる1984年の『ゴジラ』のお話しをしたいと思います。

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