☆昔はもっとおもしろかった映画番組たちこれだけ映画配信サービスが充実している今となっては、仕方ないとはいえ、テレビから映画番組が消えていくのは確かに寂しい気はします。
といいながら、自身も最近はあまりテレビで映画を観なくなりました。
間にコマーシャルが流れるし、その分でカットされてるシーンがあるのも、どうも気になってしまいます。
映画をこよなく愛する者としては、作品を余すことなく楽しむためにやはり自分で多少のお金を払っての映画試聴が基本になりますね。
そして何よりも、テレビの映画放送は昔の方が圧倒的に夢中にさせる力があったようにも思えます。
高島忠夫が司会をしていた頃の
ゴールデン洋画劇場や、
淀川長治が司会をしていた頃の
日曜洋画劇場は正に代表と言えます。
その他にも映画番組がいくつかありましたが、当時は司会者による解説があり、映画愛を感じさせるものがありました。
(
金曜ロードショーは坂上みきによるナビゲーションも好きでしたけどね!)
ところで昔の映画番組というと、当時から見ても古いと思われる名作がよく放送されていましたね。
最近では劇場最新作のテレビタイアップ的に前作を放送したり、そうでなくとも比較的新しい作品ばかり放送されている気がします。
それと引き換え、──少なくともゴールデンタイムでは──めっぽう放送されなくなった古い名作映画がたくさんあります。
「
日曜洋画劇場」の放送終了を機会に今回とりあげる、この番組における私の最も印象深い作品──それはこちらです!
『ロボコップ』(1987年 監督:
ポール・バーホーベン 出演:
ピーター・ウェラー、
ナンシー・アレン 他)


ロボコップ/ディレクターズ・カット [Blu-ray][→Amazon]【あらすじ】──巨大コングロマリット企業「オムニ・コンシューマ・プロダクツ」(オムニ社)によって、警察も含む街全体が支配された近未来の
デトロイト。
企業は新たな都市「デルタシティ」の建設にあたり、犯罪の撲滅のために警官にとって代わるロボットの開発を進めていた。
副社長のジョーンズらによって開発が進められていたロボット「ED-209」はプレゼンテーションの途中で誤作動を起こし、死人を出してしまう。
ジョーンズのライバルであるモートンは、ジョーンズらとは別にロボットを開発していたが、それは生身の人間の体を必要としていた警官ロボットだった。
そんな中、
デトロイト市警に配属されたばかりのアレックス・マーフィは相棒のルイスと共に、一連の警官殺しの犯人「クラレンス・ボディッカー一味」を追っていた。
クラレンスらの隠れ家を押さえたマーフィであったが、彼らに捕らわれ、銃器で惨殺される。
オムニ社は、モートンの「警官ロボット開発」の企画に基づき、搬送された後に死亡診断を下されたマーフィの生体部分を部品として使用し、彼を「ロボコップ」として蘇らせる。──
★バーホーベン節炸裂の残虐描写!この作品はテレビで何度も観たし、ビデオテープなんぞが主流だった当時は録画してテープが擦りきれそうなくらい観ていました。
そのとき観ていた媒体となる番組は、たぶんほぼ全てが
日曜洋画劇場でした。
古い映画があまり放送されなくなった詳しい理由はここではふれません。
ただ『ロボコップ』に関しては、他にどういう理由があるにせよ、まずは残虐シーンが1つの障壁となっていると思われます。
観たことある人たちの間ではトラウマになっている人もいるようですが、ここはさすが昔の
ポール・バーホーベン監督!
以前に同監督の『スターシップ・トゥルーパーズ』についてブログを書きましたが(
→記事参照)、彼の作品といえば
エロと
バイオレンスが前面に出ている印象があります。
とりわけ残虐描写に関しては、いきすぎてややコミカルとさえ思えてきます。
主人公の警官がマフィアのアジトに潜入したところを取り囲まれ、ショットガンで手首を吹っ飛ばされてからの"めった撃ち"は当時、衝撃的でした。
また、とあるシーンでは廃工場の有毒廃液を浴びたマフィアの1人がドロドロの体になって「助けてくれ~」と言っているところを仲間の車が轢いて、胴体が真っ二つにされるという、なんともお粗末なシーンも見られます。
あまりにマンガっぽい演出に、私はあえてあの部分をスロー再生させてみたりした記憶があります(笑)
発展した新市街地とは違う、荒廃した旧市街地を背景に、そこに潜む悪党たちの情け容赦ない残虐さが映し出された演出です。
余談ですが、バーホーベン監督の作品における
エロ描写といえば『
氷の微笑』と『
ショーガール』が印象にあります。
前者は何気にテレビで放送してるのを親と一緒に観たときに、いきなりのベッドシーンで気まずかった記憶しかありません。
後者は「下品な映画」としてゴールデンラズベリー賞を受賞しましたが、思春期まっさかりの頃に深夜に放送されたのを、こっそり録画して観ていました。
しかしこれらを越えるインパクトといえばやはり『スターシップ・トゥルーパーズ』の男女混合全裸シャワーシーン!
それでいて人体破壊の残虐シーンあり、そして『ロボコップ』にも通じるニュース映像シーンの演出が見受けられます。
☆悲劇のヒーロー!ロボコップ誕生誰が観てもこれは死んだだろうという状況から、ロボット警官として見事に復活し、街の治安維持に活躍する主人公アレックス・マーフィ。
機械的なプログラム故に(それでもマーフィ本人の意思らしい)、純粋とさえ思える正義感のもとで職務を遂行していく姿がなんとも華々しくもあり、哀しくもあります。
生前、息子が大好きだというヒーローを真似て、銃をしまう際にガンスピンをする仕草が残っており、それを見た相棒のルイスによる──
「マーフィ、あなたなんでしょ?」
という台詞に泣かされます。
極めつけはあの麻薬組織、即ち自分を惨殺したクラレンス・ボディッカー一味を捜査するために目にする祭壇。
それは紛れもなく自分自身のものであり、自分がクラレンス一味に殺された警官アレックス・マーフィであることを知ります。
これぞ悲劇のヒーロー!子どもの頃に観ていたときより、今観たほうが胸に刺さるシーンです!
あのややぎこちない歩き方。
そして消されたはずの記憶が時々フラッシュバックし、苦悩する場面──。
ただの強靭な機械の体を得たサイボーグ警官というだけではなく、瀕死の重症による後遺症を負った一人の人間ととらえることもできます。




ロボコップ ディレクターズ・カット <日本語吹替完全版> コレクターズ・ブルーレイBOX (初回生産限定) [Blu-ray][→Amazon]★登場するメカニックと武器ロボコップが使用する銃が、バースト射撃を可能とする「オート9」
射撃訓練用の的を、穴をあけるどころか粉砕していく威力です。
かなりの反動があるであろうこの特殊な銃を片手で軽々と撃つ様から、ロボコップの怪力がうかがえます。
そしてクラレンス一味がおもちゃのように撃ちまくったあとに、ロボコップやルイスによって奪われ、逆にそいつで仲間の1人が殺される羽目になる武器。
その見た目は大型のライフルで、的を爆破してしまうあの武器の名前は「コブラ・アサルト・キャノン」と呼ぶのだそうです。
あちらもすごいインパクトありましたね!
車でもショーウィンドウでもあちこち破壊しまくります。
もはや軍用の武器じゃないか!!──ロボコップに先駆けて犯罪防止策として開発されたロボット「ED-209」
両腕にガトリング砲を搭載し、プログラムされた通りに犯罪者を警告し、必要に応じて攻撃します。
カクカクした二足歩行で、階段で転ぶ姿が実にマヌケです…
挙げ句のはてにロボコップによってあのコブラ・アサルト・キャノンで撃破されますが、ロボコップに負けず劣らずの存在感です。
そして地味ながら個人的に強い印象として記憶にあるのが、ロボコップやほかの警官が乗るパトカーです。
フォードの「マスタング」※をベースにしているようですが、ロボコップがこれに乗って出動する際に、駐車場の出口の坂でいつもバンパーを擦っています。
彼の運転が荒いのか、それとも彼がサイボーグであるために体重が重く、フロントサスペンションが下がってしまうのか?
いずれにしてもあの演出が私は好きだったりします。
☆警察経営権まで所有する巨大企業オムニ社劇中で登場するコングロマリット企業「オムニ社」──
街の開発とともに、警察経営権まで持つこの巨大企業による計画により、ロボコップは造られます。
しかしその企業の上層にとんでもない悪がいて、街の資金源としてあのクラレンス・ボディッカー率いる麻薬組織と実は繋がっていたという設定が皮肉です。
単にロボット警官がヒーローとして活躍するだけではない。
主旨として描かれているのが、こんな未来都市計画を進める巨大企業の陰謀や汚職であるところに、作品としての厚みがあります。
民間企業が警察経営権など持ってしまったら、少なからずこうなる可能性があるということを示唆する社会派な近未来SF作品──。
当時として秀逸な風刺描写が、この『ロボコップ』という映画の魅力です。
そして一度は散々な殺され方をした殉職警官がサイボーグとして甦り、憎き悪党どもをジリジリと痛めつけ追いつめていく姿にスカッとします!
バックに流れるあの高揚感に満ちたテーマ曲もすばらしいですね!
──さて、私が
日曜洋画劇場で特に個人的に印象深い作品として『ロボコップ』をあげましたが、こんな残虐シーン満載の映画を普通にゴールデンタイムに放送していたのは、今ではありえないことでしょう。
本作がテレビでまた放送されるとしたら、深夜にひっそりと──、ということになりそうです。
私はまた観るとしたらDVDなりBlu-rayなりAmazonビデオになりそうです。
映画番組に限らず、最近はあまりテレビを観ないのですが、なんとなくテレビをつけたら、そのとき放送されていた映画に惹きつけられ、それが思わぬ作品との出逢いとなったこともあります。
とりわけ古くからの名作は、そのほとんどが子どもの頃にテレビで観て知った作品たちであることも否めません。
今後はテレビで出逢う作品といえば深夜にひっそりと放送している映画を観るか、WOWOWやスカパーなどと契約している人はそちらで観るしかなさそうです。
地上波を何気なくつけて、パッと何か映画やっているなんてシチュエーションは、ゴールデンタイムでは少なくなるのでしょう。
私の場合は、今は自ら選んでDVDやBlu-rayやAmazonビデオでレンタルしたり、必要に応じて購入した作品を観るスタイルが主なので、特に問題はありませんが。
今はNetflixやU-NEXT、Huluなどのサービスがありますし、いずれにせよ変わらぬ"映画愛"で、皆がそれぞれのスタイルで映画を楽しめたらと思います。


ロボコップ (字幕版) [→Prime Video]
[→吹替版はこちら]ツイッターもよろしく!↓https://twitter.com/ongaku_eiga ※【追記】──コメントにてご指摘いただきましたが、「マスタング」というのは誤りでした。
正確にはフォード・トーラスが劇中で使用されていました。
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