やはり『イノセンス』あっての"攻殻機動隊"

攻殻機動隊をハリウッドが実写化した映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』
私も観ました!
個人的には良い作品だと思います。
劇場アニメとテレビアニメシリーズの両方に対するオマージュを散りばめているところにニヤリとさせられました。
そしてそれらの要素をわかりやすいストーリーにうまくまとめているところが高く評価できます。
(それゆえに往年のハリウッド映画にあるような、今さら新しさを感じないストーリーでもありますが…)
賛否の分かれ目となったスカーレット・ヨハンソンによる「少佐」の役も、これまたうまく辻褄が合うような、本作独自の設定にしています。
「いや、東洋人女優を使えば、その独自の設定もいらないじゃないか」
と言えば確かにそうだけど、この期におよんで、もはやそんなのはどうでもいいのではと思います。
なんてったって我々には押井守の劇場版アニメがあるんだから!↓

そのようなことを前回では述べていました。
(→前回記事参照)
☆至高の映像世界と台詞と音楽による続編
基をたどればもちろん原作者・士郎正宗の功績が大きいわけですが、──
映画作品としては、この押井守監督『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の世界観が断然すばらしいわけです!
と同時に、是非とも合わせて取り上げておきたいのが続編であるこちらです↓
『イノセンス』(2004年 監督・脚本:押井守 声の出演:田中敦子、大塚明夫、山寺宏一、大木民夫、仲野裕 他)

【あらすじ】──草薙素子が失踪してから4年後の西暦2032年。
ロクス・ソルス社製の愛玩用ガイノイド(女性型アンドロイド)が原因不明の暴走を起こし、所有者を殺害する事件が相次いで発生。
被害者のなかには政治家や元公安関係者がいたことから、公安9課が捜査を担当することになる。
回収された一体のガイノイドに残されたメッセージの謎とともに、バトーとトグサは捜査に向かう。──
まず目を惹くのは、本作より9年前に公開された前作より進化した映像表現です。
それでも今から十数年も前の作品なので決して新しくはないでしょうけど、セル画とCGの両方を駆使したアニメーションはやはり芸術的です。
そして前作にはないハードボイルド感。
ブレードランナーのような東洋情緒と近未来的な風景を合わせた世界は前作同様ながら、全編に漂うクールな雰囲気。
バトーやトグサをはじめとした、人物たちの台詞がやたら渋いですね!
いろいろな"箴言"を引用し台詞に取り入れ、その言葉自体が人物なみに存在感を放ちながら飛び交うこの作品。
"孤独に歩め 悪をなさず 求めるところは少なく 林の中の象のように"
荒巻課長が言う、釈迦の言葉を引用したこの台詞が私の中に妙に印象に残っています。
しかし、ほとんどがバトーとトグサによる、もう覚えきれないほどの引用を含めた台詞合戦なわけですが、大塚明夫と山寺宏一による声でやるわけですからたまりませんね!
もちろんバトーがイシカワと車の中で話す、オッサンどうしの会話もシブくて見所ですよ!
さて、前作は草薙素子が全身義体である自分のアイデンティティーに悩む姿がありました。
あれから4年たち、素子が失踪してからの公安9課において、こちらはバトーの孤独が描かれています。
近未来SFの中にも人間らしい情感と、もの哀しさが画面から伝わります。
そこに更なる浮遊感や幻想的世界観を与えている主題歌『Follow Me』
そして川井憲次による前作のメインテーマの流れを組む曲も劇中で聞け、音楽の使い方もやはり完璧です。
★再開の合言葉"2501"
敵のアジトで迷宮に迷いこまされるバトーとトグサ。
初めて観た人なら、何が起きているのか、わけがわからなくなるシーンです。
完全に敵の思うつぼかと思われる中、バトーからはどこか余裕を感じさせられる台詞。
"俺たちには守護天使がついているんだよ"
あの屋敷に入ったところで目にする"2501"の文字。
そして前作のラストで登場した少女型義体の草薙素子の姿。
私は初めて『イノセンス』という作品を観たとき、もうこのシーンの段階で心が震えました!
"精霊は現れたまえり"
映画の終盤にて、少佐との再開です。
「感慨にふけってる場合じゃない」
なんて言われても感慨にふけってしまいますよ、前作を知っている者としては!
私は前作も本作もDVDで初めて観ましたが、両作品をそれぞれ劇場公開当時に観たファンならなおさら感慨深いシーンではないでしょうか。
この両作品の公開年には9年の隔たりがあったわけですから。
この『イノセンス』という作品は、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を先に観た人なら、それだけの感動があります。
そして『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を初めて観た人なら、この『イノセンス』も是非とも観ていただきたいと思います。
前作あっての『イノセンス』ですが、私の中では『イノセンス』あっての攻殻機動隊とも言えます。
あ、それから!
やはり1回観ただけでは全てを理解しきれない内容なところ。
そういったところも含めて、何度も観たくなる深みのある作品なんです。

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